昨今ではJリーグの諸問題があり、おそらくは札幌ドーム(大和ハウスプレミストドーム)を皮切りに。2024年は特に大きくなったと思う。今回はその中からスタジアムについて、そこそこ長々と雑多に述べていきたい。
Jリーグ施設基準(引用)
スタジアムの入場可能人員がリーグの規定(J1は15000人、J2は10000人)を上回っていること(A等級)。特にいす席をJ1で10000席以上、J2で8000席以上設置することを義務付ける。いずれも芝生席は入場可能人員数にカウントはしない。J3については5000人以上とし、メインスタンドが椅子席であればいい。
なお2024年から一部緩和され、上記の入場可能人数の下限は原則として維持しつつ…。
Jリーグ規約第34条に定める『理想のスタジアム』の要件を満たしたうえで、ホームタウンの人口などの状況や観客席の増席の可能性(特に敷地条件)。入場収入のための施策など、特に理事会が総合的に判断した場合。全て個別席で5000人以上収容であることで、基準を満たすものとする。
とした緩和要件が設けられた。これは「地域の実情に応じた、柔軟な対応を可能とするため」としている。またスタジアムの形状についても原則としてメインスタンドは西側に配置することとしたものを、"新設のスタジアムについては"になった。また新設のスタジアムについては、原則としてメインスタンドを西側に配置することが求められる。
スタジアムの観客数1000名あたり、洋式トイレ5台以上、男性用小便器8台以上を備えていること(B等級)。トイレの数については本来の規定数を充足していなくても、収容人員数の60%を実態の観客動員数と見なし、これを母数とした場合に基準を満たしていれば制裁の対象外とする(トイレ60%ルール)。
スタジアムに観客席の3分の1以上(B等級)、または観客席すべて(C等級)を覆う屋根を備えること。一方で新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原則として屋根はすべての観客席を覆うことと記載がある。J3についてはトイレ、屋根の記載がない。
以下、今回の件とは外れるため割愛する。
Jリーグ規約第34条に定める『理想のスタジアム』の要件
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/regulation/jleague/jleague_stadium_standards.pdf
1.アクセス
次の条件のいずれかを満たしていること。
1-1.ホームタウンの中心市街地より概ね20分以内で、スタジアムから徒歩圏内にある電車の駅,バス(臨時運行を除く)の停留所,大型駐車場のいずれかに到達可能であること。または近い将来に到達可能となる具体的計画があること。
1-2.交流人口の多い施設(大型商業施設等)に隣接していること。
1-3.上記のほか、観客の観点からアクセス性に優れていると認められること。
2.屋根
上記したようにスタジアムに観客席の3分の1以上(B等級)、または観客席すべて(C等級)を覆う屋根を備えること。一方で新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原則として屋根はすべての観客席を覆うことと記載がある。
3.ビジネスラウンジ・スカイボックス・大容量高速通信設備
おそらくこれはメインスタンドが主な事項なので、全体で考えるならばあまり関係しないだろう。一方で大容量高速通信設備という設備で役立ったのは2021年、豊田スタジアムでのテレワーク企画がある。これでスタンド席(テーブル付き記者席)も有効活用された。
4.フットボールスタジアム
これらの要件を満たしていた場合、全て個別席で5000人以上収容ならばJ1基準を満たすものとされる。逆に見ればJ1で15000人(椅子10000席)以上収容ならば、必ずしも要件を全て満たす必要はないのかもしれない。
パロマ瑞穂運動場の場合
名古屋市内にあり、地下鉄の2駅から徒歩圏内にある。アジア大会に向けた大改修があるため、屋根はすべて覆われることとなろう。陸上競技場だが大会期間後に減築しても、25000席は確保されるという。よってアジア大会後も、本拠地としては使用可能とみた。
着工前の陸上競技場は20000席を満たしつつも、トイレは充足せず屋根も足りず。老朽化が顕著だったうえ、大改修の名目もJリーグよりアジア大会が優先。まあ豊田市に出向けば40000席を有するフットボール専用施設があり、そちらはトイレも屋根もすべて充足済み。…そういうこと。
長良川球技メドウの場合
メインとなる競技場から離れているが、岐阜駅からバスで乗車時間もさほどかからないはず。現状ではメインスタンドを除いて芝生席となり、収容数も5000人に満たない。新設には当たらないとされるため、メインスタンドが西側にないものの問題ないかもしれないか。フットボール専用なので大改造できればよさそうだが、バックスタンド後方に住宅があるなど苦しい。
まあ、メインの長良川競技場がJ1基準を満たしていてよかったかと。これ以上のモノは求めなくていいだろうし、強いて言うならば芝生席のコンクリート段差舗装ぐらいだ。
で、何が問題なのか?
これらの"フットボールスタジアム"を整備する際、財源が少なからず必要となる。現状民間企業完結でそれを満たすのは柏(日立),磐田(ヤマハ),長崎(ジャパネット:2024年完成)ぐらいしか思い当たらない。
加えて球技専用の場合、天然芝を養生させる間は使用できなくなる。陸上競技場の場合は陸上トラックを使用でき、スポーツ以外の大規模イベントでスペースを使用できるのが大きいという。そして天然芝を養生させる費用が…、サッカー単体で捻出できていないらしい。
民間以外は全て"公的"、要するに税金ということ。現にこれを嫌うように平塚(湘南)と秋田、続くように鹿児島の各自治体が新スタジアムに否定的となった。
個人的には…
ひとまず現状で十分な"ハコ"があるならば、それを有効活用するのが先だと思う。屋根はあるに越したことないだろうが、設けられないなら仕方ない。球技専用でなくとも、その"ハコ"が十分な大きさならばそちらでいいはずだ。適正な大きさというものは個体差がある。
そして稼働しない養生日でも会議室のみならず、せめてスタンド席は開放してほしい。何かと集客できるイベントはあるだろうし、何ならイベントもなしで"ハコ"だけが目的という人もいると思う。スタンド席が解放されれば、場内外の飲食など売り上げも少なからず見込まれる。
アクセスはとりあえず、バスを大量動員させれば何とかなるだろう。ただ需要に供給が追い付かなくなっている現状もあり、今後の検討材料といえる。
有力者や建設業界との関係性やらとなれば、まずはそれらをすべて包み隠さず公表すること。忖度というならば、既存設備の更新でも利益が得られればいいのだろう。関係性のためにわざわざ新規で建設することもない。
豊田スタジアムの場合
先述したようにスタンド席と大容量高速通信設備が、2021年のテレワーク企画で活用された。2024年現在は行われていないというが、ぜひ恒常的に行ってほしいかもしれない。
2022年からは世界ラリーの大会におけるメイン会場となり、スタジアム内がスタートとゴール。外周が"整備拠点"とされ、期間中はスタンドがチケット制で解放される。さらに2023年からはとうとう天然芝を外し、ラリーコースの一部として特設コースにもなってしまった。
長良川競技場の場合
FC岐阜がJリーグに参戦して以降、現状で十分な"ハコ"として陸上競技場が使われている。かつては芝生席の割合が多いためにJ2ライセンスとなっていたところ、J1ライセンスを得るためにバックスタンドの芝生席が椅子席となった。
名古屋グランパスは先述した世界ラリーで豊田スタジアムが使用できなくなり、パロマ瑞穂運動場も工事で使用できない。このため当該期間中は長良川競技場で主催試合を行っており、J1ライセンスを得るために整備したのが生かされた形だ。
さらにFC岐阜自体も経営危機に陥ったことがあるため、これ以上の整備を求めるのは酷といえる。J3ならば近隣の球技メドウでも試合開催は可能だろう。よって2025年までFC岐阜がJ3という限り、現状維持で変わらないと見た。
今回はここまでとしておこう。Jリーグのチーム数や構成については、気が向いたときに…。
(スタジアムの要件が必要かを少し考えよう おわり)