2022年12月28日(水)午後4時6分 広島市安芸区/スカイレールみどり中央駅


 曲がりなりにも"交通機関"として、完全密閉式のホームドアが設けられている。1両の1ドアであることから、配置は他に類を見ないほど分かりやすい。乗車券は降りたところにある回収箱へ入れよう。
めぐ「…じゃあ、外を。」
もも「待ちなさい。何か言いたげにして。」


 改めて、麓にあるJRの駅からここまで上がってきた。スカイレールでの標高差や、この地点の標高はどれほどだろうかと。遠目の山々と共に周囲を眺めながら考えたくなる。
さく「本当、よく下からこんなの通したよ。この辺も山開いたんだし。」


 駅の階段を下りて、正面の出入口からも住宅とともに並木道が伸びている。見た目は美しくも階段や勾配は長くきつく、体力が弱ればなかなか苦しいだろう。
もも「そうすると、アンタのあま市なんかはさ…。」
めぐ「あま市はあま市で、大きい地震とかあったら下のほうがちょっと。」


 住宅地のメインになろう、対面通行の車道と歩道。下り急勾配から上りに転じており、正面に入る山々と合わせてなかなかダイナミックな光景となる。
さく「坂に合わせて加速して、上がったらブレーキみたいな。」
なぎ「やんなよ、危なっかしい。」
さく「やるわけないじゃん。」


 そんな『みどり中央』駅の出入口もまた急勾配に面している。正面から見る限りでは完全にロープウェイの乗り場らしく、都市型の交通機関とはとても思えない。
さく「実質ロープウェイだったじゃん。間違いじゃない。」
もも「そう?じゃあ…、次か何かロープウェイね。決まり。」


 周辺の地図があったので見ておこう。住宅地の名称も『スカイレールタウンみどり坂』となっている。路線が廃止された際、名称はどうなるだろうか?
めぐ「それもだけど、トイレ…。」
なぎ「トイレ…、駅じゃないな。公園。」


 スカイレールの駅にトイレはなく、通り抜けた先の公園にある公衆トイレを使うこととなる。階段を下ってまた階段を下ると、確かに眺めは良さそうだ。


 公園の公衆トイレは小さく、使い勝手はあまりよろしくない。あくまでも住民が使うもので、来訪者も住民や住宅地に関係する方しか想定していないのがわかる。
めぐ「まあ一応…、大丈夫は大丈夫だったんだけどね。」
もも「そもそも他に用もないのに、こんなとこ来るのがどうかしてるっての。」


 公園からの眺めは確かに素晴らしかった。これから日も暮れて暗くなり、家々の明かりが灯ってくる。美しく温かな風景となって、心にも落ち着きを与えてくれそうだ。
さく「じゃあ、また時間来たら乗って下る…。」
なぎ「わかったから落ち着け。」


 傾斜ある山間を開発した住宅地と、地域住民が遊ぶ公園。周囲に店などは全く見られず、観光要素など皆無。もう少し休んだら余所者は去るだけ。
めぐ「…なんでここまで来たんだっけ?」
もも「それをアンタに小一時間問い詰めたい。」


 さあ、そろそろ帰ろうか。それはそうとスカイレールの車両が来るたびに"機軸"から音を発するようで、下からでも結構伝わってくる。
なぎ「これは来る…!」
さく「結構来たって!」

(現)スカイレールサービス片道乗車券:均一 170円
 ICカードは定期券や回数券のみ対応するため、現金で乗車券を購入しなければならない。往路と同様運賃は全2区間で均一となり、乗車券に印字されたQRコードを改札にかざして入場する仕組み。


7.みどり中央16:30発→みどり口16:35着 みどり口行き スカイレールサービス204
 …と。乗り場へ上がると、麓に下る車両が入っていた。結局は往路と同様にゆっくり観察することなく、飛び乗ることとなった。乗客は明らかに地元住民と思われる子供と、往路で見かけた見物人ぐらいか。
もも「なんだ、他にもいたの…。」
さく「そりゃ他にないわけだし、1回ぐらいってのあるでしょうよ。」


 下りも同じく重心が偏って揺れ、しかも落ちようものならさらに転げ落ちそうなスリルがある。もっとも1998年の開業から2022年末現在まで、営業中に大事故を起こすことなく稼働してきたスカイレールだ。
なぎ「本当、これ。結構来るな。」
もも「なんか逆に、癖になっちゃってる。」


 丘陵地に整然と街路が整備され、住宅が並ぶ。美しく仕上がったようだがやはり傾斜はきつくも見え、自転車で上がるのは苦しいかもしれない。
さく「やっぱ平坦なあま市とか、正解。毎日登れる?」
めぐ「…原付でもちょっと苦しいかな?」


 反対側の住宅も見下ろしてみる。スカイレールと崖らしき傾斜によって隔てられ、雰囲気を異なるものとしているようだ。住宅もハウスメーカーによって外観など、イメージが変わってくるのだろう。
さく「あるかもね。結構、工法?違うだろうし。」
もも「あ、だからさっき屋根がどうとか。」


 みどり中街からも丘陵を下っていく。カーブもなかなかきついので、それもまた慣れない者にとってはスリルというもの…。
もも「こうまで来るとさ、なんか巨大なスライダー?みたいなの、なかったっけ?」
さく「あったらあったで、絶対ものすごいアレになるよ。」


 スカイレールの"高架下"を階段とし、街路樹や植え込みを合わせることで景観として成立させている。そんな住宅地の風景が何とも愛おしい。
なぎ「これ消えたら一気に寂しくなるな…。」
めぐ「…その前にこれ、外せるのかな?」
(つづく)