2016年9月17日(土)午後2時20分 三重県桑名市・西桑名駅
北勢線は内部・八王子線(現:四日市あすなろう鉄道)と同じく、レール間762mmという特殊狭軌線。いずれも近鉄から切り離された路線である。単式のホームから見ても、レール幅が狭いとわかる。阿下喜行きの発車は35分。
これから乗るのは線路幅と同じ小型の車両。西桑名が単線行き止まり式であることから、そのまま折り返す形となる。
1.西桑名14:35発→阿下喜15:28着 阿下喜行き 274
4両のうち、阿下喜側の先頭車両に乗る。両開きドアを採用しており、比較的新しい車両だと思われる。しかしながら、その実態は非冷房というもの。狭い車内の座席はオールロングシートで、この車両へは他に4人ほど乗車。
もも「…アンタが選んだのよ。」
めぐ「わかってるけど?」
もも「それで暑がってさ…。」
なぎ「いいだろ、何もないってわけじゃないだろうし。上見ろ。」
さく「これだけど、北海道のキハ40にあったよね?」
出発してしばらくは市街地に近いことから、住宅など建物が多い。ナローゲージと呼ばれる特殊狭軌線は技術上の限界からか、総じて吊りかけ駆動となっていて低音が響く。線路規格は元々低く、床下からの振動も伝わってよく揺れる。
762mmの北勢線が、1067mmのJR関西本線と1435mmの近鉄名古屋線をまたぐ。近鉄は全線が標準軌ということでなく、南大阪・吉野線系統は狭軌となる。このため内部・八王子線が転換される前は、3軌間の線路を近鉄が有していたこととなる。
さく「…景色こっちでいいの?」
めぐ「…わかんないけど、帰り反対だしいいのかなって。」
次第に建物が少なくなっていき、郊外らしい風景となっていく。駅間距離はさほど長くないながらも、運転速度が低いために時間を要する北勢線。
もも「…これもうちょっといい場所とかなかったわけ?」
なぎ「風ちょっとでも当たったほうがいいだろ。」
もも「いや、そういうことじゃなくってさ。」
東員町に入ると、田畑がより目立ってくる。家々はそれらがないところに固まっており、対比がいい画になったりならなかったり。内陸側に進んだこともあって傾斜が見られるように…。
めぐ「…ごめん、見るだけで終わっちゃいけないからって変に。」
なぎ「無理するな。」
穴太と書いて"あのう"と読む駅。近隣住民以外で事前に調べることなく、この駅名を読めた方はどれぐらいだろうか?
もも「私もう、1回往復しちゃってるもんね。」
なぎ「だからそれを言うな。」
北勢線で最大規模の駅にして、拠点となる東員に着く。名鉄の駅集中管理システムと同様、ここから無人駅を遠隔管理。備え付けのインターホンはここにつながるようになっている。駅前からはバスも発着する。
停車時間があるので、ここで一旦ホームに出てみよう。島式1面2線というシンプルな構造であり、列車交換だけでなく折り返し運転も可能となっている。乗っている阿下喜行きが4両なのに対し、隣にいる西桑名行きは3両。
さく「そう、この時間大事だよね。」
めぐ「まあね…。」
なぎ「あんまり変な事するなよ。」
いつしか他の乗客がいなくなり、発車した東員から程近い位置に信号場と車両基地がある。ここがかつての北大社駅であり、東員駅開業前は拠点機能と担っただけあって2面3線式と立派な設備を有していた。
もも「…人の家撮ってどうすんのよ?」
めぐ「…タイミング合わなかったってことで。」
そして駅間距離が長くなる。三岐鉄道となってからは需要などに応じて駅の統廃合が進み、特に利用客の少ない東員から先で駅も少なくなった。この畑は何だろうか…?
もも「だから帰ってから調べ直しなさいっての。それで後で調べたとか、入れればそれでよし。」
いなべ市に入り、次第に山らしい方向へと進んでいく北勢線。カーブがきつく造られており、小型車両でなければ苦しいところ。所々視界が開けるので、見られるうちに景色を見ておきたい。
さく「…これ窓開けっ放しだから、山とか森入った匂いとか。」
めぐ「なんかやっぱり…、原付とかで嗅ぎたくなったり?」
西桑名から阿下喜まで20.4km、53分と長い道のりであった。駅の近くでは昔の車両が保存されているが、正面がどこか違和感を感じるような…。
ということで、ここがまさしく終着駅。ホームは1面2線式となっているが、かつては西桑名と同じ単線折り返し式であった。駅員はいるので、改札から出る際はフリー切符を見せればよいこととなる。
なぎ「出るんだよな?」
阿下喜でもいつものように、駅の写真を1つ。この駅舎も最近になって建て替えられたものであり、待合室も備えた立派な造りをしている。外観も昔の木造らしい風合いで、趣きがある。
めぐ「今日時間ないからね。」
もも「わざわざ言わなくたって…。」
駅前にはロータリーが設けられ、タクシーが常駐しているほかバスの発着もある。
さく「もうちょっとあるけど。」
なぎ「あんま遅れるなよ。」
駅の近くにある軽便鉄道博物館。保存されている車両は昭和6年製造のモニ226であり、調べたところ現在も修復作業が行われているという。手前側の転車台も、以前実際に使われたもの。
めぐ「終わり!」
駅前散策を5分で手短に終わらせ、来た編成で折り返す旅行班。阿下喜は日本最西端のナローゲージ駅とあり、北勢線は内部・八王子線と比べて距離も長い。ついでにこの2路線だけが通年乗車可能な"ナローゲージ"であり、他は夏季限定観光路線たる黒部峡谷鉄道である。
(つづく)