2012年3月16日(金)午前6時40分 宮城県宮城郡松島町・松島海岸駅

 戻ったところでまだ時間がある。
ももか「変に興奮してんじゃないの。」
めぐみ「だってさ…、あんなバスだよ?」
なぎさ「…今のうちにトイレ入っとけよ。」


 しばらくして観光用のバスが到着。これがどうも先導車らしい。
さくら「でもさ…、元々っていうか、さっきもロングだったじゃん。」
めぐみ「ロングでちょっと寝れたよ。」

 青みがかった窓ガラスが古めかしさを感じさせる、みちのく観光の貸切車両。乗ったところ、座席も正直古めかしいもの。それにしても、比較的距離の短い区間でありながらリクライニングシートを備えた観光バスを使う理由は気になるところ。
ももか「…さてはアンタ、JRと裏で何かしたでしょ?」
めぐみ「してないよ!」
なぎさ「ないだろどう考えても…。」



43.松島海岸7:02発→矢本7:49着 代行バス103/矢本行き みちのく観光バス
 前の位置にスタンバイした、見たところ新しいバスと合わせて3台体制。結局、最初に来たみちのく観光の車両が先導する。朝のこの時間とあってか座席はそれなりに埋まっている。
さくら「まさかあっちが先に出るのかって…。」
ももか「いいんじゃないの?」

 以前にも線路支障が長期化した際に運行される代行バスに乗ったことはある。高山本線で不通区間が生じたときの代行バスは観光バスと小型路線バスであり、前者の直行便に乗車している。

 津山線絡みでは2度とも代行バスを利用している。津山線での土砂災害では各種入り混じった中で観光バス車両に乗車し、これは岡山から金川まで直行便であった。姫新線での大雨災害では通常の路線バス車両に乗車し、美作江見から佐用の間を各駅に停車する形で結んでいた。

 

 今回は各駅停車に相当しながらも、用いられているのは観光バス車両。このため、全乗客が着席して移動することになる。車窓のこれは…、単なる田んぼ?
ももか「だってまだ海遠いじゃん?」
めぐみ「見えないけど…」


 やがて線路共々、海岸線に沿うようになる。今は美しく、穏やかな海。あの日はどうだったか…。


 架線柱が所々傾いており、地震そのものによる被害も見受けられる。


 陸前大塚に着く。ここだけを見た限りではそこまでの被害はない様子。


 東名とその次の野蒜の間で列車が流されたのはご存知の通り。テレビでもその様子が流れていた。東名駅もホームしか残っていない。周囲もすっかり更地となっている。


 奥松島パークラインは線路に沿っているため、代行バスもこのルートで進んでいく。積み上げられた土嚢が物々しい。


 全壊を免れた建物も無事なのは屋根だけという状態。もちろん住むことはできないが、そもそも人家かどうかすら怪しい。


 さらに整然と並ぶ消波ブロック。いつ、どのように使うのだろう…?


 コンビニの奥に仮設住宅が見られる。他は真新しい住宅やら見られるものの、更地が多い、


 矢本駅が近づき、この時間とあって道路も混む。ただ、これでは困る理由がある。
めぐみ「次、ディーゼルなの。」
ももか「座りたいんでしょ?」
めぐみ「それもだけど、遅れても待たないとかって…。」
ももか「そういえば5分しかないんだっけ?」

 5分しかないので、遅れは許されないのだ。
ももか「言っとくけど大荷物なこと…」
めぐみ「わかってます。」
ももか「一昨日のアレあるからね…」

 結局遅れることもなく、バスは矢本に着いた。ここからは線路が通じているので、列車移動だ。



44.矢本7:54発→石巻8:09着 普通7723Y/石巻行き キハ110-239
 電化設備の復旧がままならないため、気動車による運行となっている区間。いたのは最上川ラインの装いをまとった、キハ110の堂々たる4連。座れない心配をする必要などなかった。
ももか「とんだ思い違いよ。何両だと思ってたのよ?」
めぐみ「2両ぐらい?」

 そしてまたもボックスシート。念のため言うと、本来仙石線を走るのはオールロングシートの205系。
ももか「…かえってグレード上がってるのよ。どういうこと?」
なぎさ「知らない。」
ももか「やっぱアンタよ。JRにいいの使えって…。」
さくら「それはないよね?」
めぐみ「ないない。」


 さて、沿線にある石巻工業高校が選抜高校野球大会に出場。"被災地から代表して"出場とあってか、地域共々応援ムードが特に高いように感じられた。


 矢本から暫定非電化区間を15分、仙石線の終点である石巻に到着。あれは205系…?
さくら「こんなとこにぽつんと…。」
めぐみ「直ったら使うのかな?」
なぎさ「ダメになったヤツとか?」

 後で調べたところ、やはり留置していた205系は浸水被害を受けた編成だったという。(そして結局復帰することなく、廃車となったらしい。)


 もはや流行りものとなった緑の濃い電光案内と、仮面ライダーらがお出迎え。では石巻市内を見て回りましょうか。
ももか「…こんな大荷物で見るっての?」
めぐみ「だって置き場所ないし…」
さくら「お金使いたくないだけ?」
なぎさ「一昨日のまだ引きずってるとか?」


 駅前を出て商店街があるものの、朝8時過ぎという時間どの店も開いていない。コンビニはない。
さくら「ここもアレだったんだよね…。」

 石巻市は津波だけでなく、震度6強の地震も大きかった。そのため被害も相当なものらしく、震災から1年後でもまだ段差が残っていた。

(つづく)

※現在は一部区間のルート変更を伴う形で復旧しています。