2014年8月9日(土)午後5時16分 さいたま市大宮区・大宮駅に到着
 2年5か月前の東北旅行で黒磯から乗って降りたときはその場で『むさしの号』へ飛び乗ったが、今回はもちろん違う。
ももか「むさしのごう?」
なぎさ「…忘れたのか?」
ももか「別に?アンタら立てた計画その場で曲げたところで私は…、ね?」
さくら「計画の時いなかったじゃん。」
なぎさ「それは…」



 埼京線は地下ホームから出る。
さくら「こんな大空間、よく造ったもんだよ…。」
ももか「地下鉄は?」
さくら「地下鉄もだけど。」
なぎさ「上って…」
ももか「線路じゃないの?」
なぎさ「さあどうだか…」
ももか「それ…、使えない?」
めぐみ「電池あんまりない。」

 地上がどうなってるかはさておき、狙いはもちろんE233系。予定より1本早く出られそうだ。
ももか「ああそうだった。」
さくら「もう隣いるから、りんかい線のだったら乗らないよ。」
ももか「快速は?」
さくら「前乗った時通勤快速でほとんどすっ飛ばしたし、普通乗ろうかなって。」
ももか「まあそんな昔のこと…」

37.大宮17:27発→池袋18:05着 普通1728K/新宿行き モハE233-7228
ももか「乗れたじゃん。」

 これで今回、E233で車両番号の4桁目が奇数となる4車種への乗車を果たした。この7000番台は最初からLED照明を採用しているため、車内は白く明るい。
ももか「乗れてないのは2000番台だけってことでいいのね?」
さくら「一応6000番台もまだだけど。」
ももか「それどこよ?」
さくら「横浜線だけど、今日は乗らないよ。」
ももか「…別に今日乗れなんて言ってない。」

 ところでこの埼京線だが、正式な路線名ではない。
ももか「…また一応聞くけど、どうしてよ?」
さくら「東北本線の支線ってなってるんだよ。横、新幹線通ってるでしょ。」

 新幹線もこの区間は騒音対策として最高速度が110km/hに抑えられている。
さくら「そりゃこんな住宅街で飛ばされちゃ文句言うに決まってるよ。」

 "在来線"の普通は、武蔵浦和で快速を待つ。新幹線はそれだけでなく、東北,上越,北陸の3路線が共有状態にあるため過密ダイヤとなっている。そのためE5やE7など、様々な車種が行きかう様子を車内から見ることができるのだ。
さくら「…E5だからってはやぶさとは限らないよ。」
ももか「…さっきから誰に向かって言ってんのよ?」

 快速は、引退したはずだった205系。
めぐみ「まだあったの…。」
ももか「…さあ?」

 後に調べたところ、保安装置の工事によりE233系が1本不足するためであった。工事が完了する2017年を持って正式に、埼京線の205系は引退する。もうすぐ夕方6時、日が暮れる赤羽からは『赤羽線』となる。旅行班にとっても重大な決断の時が迫っていた…。
ももか「…何、また調べもの?」
めぐみ「…これ浜松まで乗り継げれて、そこから最終の新幹線で今日中に帰れるのよ。」
ももか「…最初の計画ってどうなの?」

 大前から新幹線を使わずして当日中に名古屋まで帰ることは不可能である。そのために趣味を兼ねて東静岡のネットカフェで一泊し、静岡駅からバスで名古屋に帰るという計画を立てていた。
ももか「…で、池袋で2時間近くも?」
めぐみ「一応最終で組んだんだけどね。」

 しかしながら羽田空港で欠航便が出る可能性があったように、台風が接近していた。その最接近こそ、予定している帰宅時間とほぼ合致してしまう。
ももか「そりゃ…、下手なことして動けないよりいいんじゃない?」

 加えて、予定を繰り上げる際にもう1つ問題があった。
めぐみ「…まだあのお菓子から何1つ食べてないのよ。」
なぎさ「そうだったな。」
めぐみ「繰り上げたら食事する時間なんかないの。」

 考えてる間に池袋に着いてしまった。新宿から乗り込む客が多いと考え、ここから湘南新宿ラインに乗り込む。


38.池袋18:13発→戸塚19:06着 普通1240Y/逗子行き モハE231-1115
 まあここまでくればオールロングでも仕方ない。繰り上げるルートでまとまった時間が取れるのは、最終の新幹線に乗り換える浜松が最初で最後となっている。その時刻は23時と、店が開いているかどうかすら怪しい。
さくら「どうする?」
めぐみ「もう台風とかあるし…。」
なぎさ「帰った方がいいか。」
ももか「動けなくなるよりはね。」
めぐみ「…立ちっぱなしはやだよ。」
ももか「ちょっとぐらい我慢したら?」

 とりあえず熱海まで乗り継ぎ、熱海で長時間乗車できそうならば浜松まで乗車。浜松まで耐えられれば最終の新幹線で当日帰宅、1本でも耐えられなければ東静岡でキャンプ。だがここで…
めぐみ「しまった…。」
ももか「何?もういい加減…」
めぐみ「買っとけばよかった。」
なぎさ「池袋のホームにコンビニあったな。」
さくら「もう次時間ないよ。」

 戸塚での乗り継ぎ時間は8分。コンビニ売店は改札の外。
ももか「急いでよ!?」

 とりあえず適当に買い込み、同じホームへ急ぐ。


39.戸塚19:14発→熱海20:25着 普通881M/熱海行き モハE233-3201
 E233系が来た。最初の2本は国府津区生え抜きの編成で、6号車にトイレがない。
さくら「とりあえず間に合ってよかった。」
なぎさ「ボックス空くまで…。」
さくら「ま、平塚過ぎれば大丈夫でしょ。」
ももか「長いこと乗る人なんてそういないでしょうに。」

 ボックスが空いたら勝ったも同然。


 今日1日を、決して多くないコンビニ物だけで過ごすしかない。おまけに浜松まで給水もない…。
なぎさ「焦るな、逃げ道はまだある。」
ももか「誰だっけ?新橋で逃げずに長時間居座る羽目になったのは?」
なぎさ「それは…。」


 結果として、その時の判断が旅行記録としては永遠に残ってしまう。それが正しいか、悔やむべきか。後のいい経験につながるのかもしれないのだから―
(つづく)