2016年7月30日(土)午前8時33分 愛知県長久手市・長久手古戦場駅前

 バスロータリーのある側に出てみよう。駅の改札外にあたる通路を介して、交通量の多い道路を安全に横断することができる。この構造体はロータリーと共に、新しく設けられたもののようだ。
涼子「あそこにいるバス乗るってことよね?」
めぐ「あれでいいよ。」

 これから乗る新城行きのバス。わざわざ長久手古戦場まで来たのは、名古屋側の発着地によるものが大きい。ここを発着点とする理由は、付近に点在する大学へのアクセスとされている。


 長久手古戦場に設けられたロータリーにある停留所ポール。隣接する名鉄バスのそれは主要な箇所とあって造りのいいもの。対して豊鉄バスのそれは、この路線がコミュニティバスに近い性質でもあるのか簡素なもの。
涼子「ってか、よくそんなのまで調べたね?」
もも「そういうのだけはいっつも調べて、肝心なほう全然だもの。」


(前)山の湊号片道乗車券(豊橋鉄道バス) 1000円
 では乗り込もう。比較的短距離の路線にして、予約定員制をとっているこの路線。一応座席は指定になっている。専用のラッピングを纏ったエアロバスをよく見ると、うっすらと"練馬"の文字が見える。

4.長久手古戦場駅9:00発→亀姫通10:30着 高速バス山の湊号0101便/亀姫通行き 豊鉄バス555
 外装にうっすらあった"練馬"が夜行路線から転用であることを示しつつ、座席を見ればセンターアームレスト付ながら4列スタンダードシートのそれ。補助席はなく、後部に設けられているトイレは使用できない。
なぎ「これで夜はダメだろ。」
涼子「いいんじゃない?寝れないとか言うんなら寝ないで景色見て、眠くなったら寝ればいいんだし…。」
もも「本当、それよ。誰が真夜中だから景色見れないって、昼のばっかり調べるのよ?」
めぐ「はい、すいませんでした。」
さく「でも…、やっぱり3列だよね?寝るなら。」


 今回は一応予約していたものの、乗り込んだ客は他に1人だけ。駅前ロータリーを抜け、県道60号を進んでいく。
さく「…予約いらないよね?」
めぐ「…いらないよ。」
涼子「じゃあなんで予約してまで乗るの?」
なぎ「不安なんだろ。」


 名古屋市に入り、名鉄バスと異なる箇所で右折。藤が丘へのルートもやや異なっていることが、これで証明された。いかにもベッドタウンな景色は、側面の窓に施された装飾によって見づらくなってしまっている。
めぐ「これはこれで案外いいかも。」
もも「いいならいいけどさ、またこれで写真多くなっちゃうんじゃない?」


 藤が丘駅前に戻ってきた旅行班。ここで大人2人と子供2人が乗車し、他の乗客は合計5人となって発車する。ここから県道60号の交差点までは名鉄バスと同じルート。
さく「長久手古戦場はこちらの総意です。」
もも「アンタが言うことじゃないでしょうに。このちょっとを乗りたがった張本人が言わなきゃならないことよ、ね?」

 名鉄バスの一般路線ルートと分かれ、高速の入口で空港行き高速路線ルートと別れる豊橋鉄道のバス。高速道路においてシートベルトをしめなければ、罰則が課されることとなる。
涼子「それぐらいさ…。」
なぎ「わからんぞ?さっきだって、ベルトロックされてんのか回らなくってさ。」


 名古屋インターから東名高速に入った山の湊号。静岡・東京方面へ進み、高速走行がスタートする。高速道路上のバス停には停車せず、川路(三河東郷駅)まで停車しない。
もも「悪いけど、この前アンタら勝手に乗ったのってここよね?」
さく「ってか、逆だけど乗ってるじゃん。豊田からの。」
涼子「あ、そうなの?」


 とりあえず豊川まで45分と出ている東名高速。東名日進から1km歩くと東郷のパーキングとなる。あまり広くない駐車スペースは大型トラックの割合が多い。そしていつしか晴れてきている。
さく「何かいいのあった?」
めぐ「まあ…、色々。愛知牧場も近いよ。」

 もう11年前となろう、2005年愛知万博。当時は東名三好に駐車場が設けられ、会場(現:モリコロパーク)へはバスに乗り換えて向かうこととなっていた。その先、豊川までオレンジ色で40分と表記。浜松西は80分とある。
めぐ「…どこだっけ?」
もも「見えないんじゃない?」


 今回乗った目的としては、東名豊田からの1区間を通るというものもある。広大な面積を持つ豊田市において、市街地らしい市街地は旧市域の中心部ぐらいしかない。その先、新東名において島田金谷で渋滞2km5分と表記。


 上郷サービスエリアから遠くない位置にある豊田ジャンクション。御殿場ジャンクションへの所要時間は両ルートとも表記がなされている。これから通る新東名高速では140分、このまま従来の東名高速を進み続けると160分。
涼子「…で、もう本番なわけ?」
めぐ「新東名はまだだけど、一応。」

 この付近から最高速度に変化が生じ始めており、分岐手前で最高速度が60km/hとなる。この先で車線幅を狭めて片側3車線としているためであり、新東名高速開通までの暫定措置であった。

 ランプウェイに入り、順方向であれば最高速度が80km/hと表記。合流先の伊勢湾岸自動車道は、新東名高速開通後に片側4車線となった。周辺の田園風景とは対照的である。
涼子「ここからだっけ?」
めぐ「もうちょっと。」


 豊田東ジャンクションで東海環状が分かれ、いよいよ新東名へ。この高速路線が7月から設定されたのも開通がきっかけである。高架橋の壁は透明素材となっており、乗客として周囲の山めいた景色を眺められる。
めぐ「まあ、一応別件で通ってはいるんだけどね。」
もも「じゃあ、写真あるならそれ使い回しゃいいじゃないの。」


 3月に通った時点では、満車で列をなしていたネオパーサ岡崎。開通して混雑も落ち着き、7月末の今日は空車とある。山の湊号はそのまま、ここから片側2車線となる本線を進む。
めぐ「1回見てみたいかも。」
なぎ「1回な…、でもアレだろ?プロ系とは程遠かったとか。」
さく「それでさっきの東郷ってわけだね?」
もも「東郷行ったのって…、あ。私は上郷か。」

 この新東名高速は山沿いを直線状に、そして高低差も小さく設計されている。そのためトンネルが多くなっている。最新の道路らしく、照明はLEDが多く用いられている。
涼子「景色見れなくていいの?」
もも「いいんじゃないの?写真枚数少なくて済むって言うし。」


 岡崎東から眺められる景色も、どことなく田舎のそれ。次のインターとなる新城までは25kmあり、所要時間案内装置があるものの試験中とあって表示されていない。
めぐ「前も調整中ってなってたし。」
さく「あ、そうなの?」


 所要時間がわからない中、トンネルの合間に採掘場らしき景色が現れる。この辺りはトンネル連続区間となり、従来の東名高速に1本しかなかった2000m級のものも。右側の眺めが素晴らしいのに、バスの指定された座席が左側なのが惜しい。
もも「アンタの失敗ね。」
めぐ「いや…、これ予約で席選べないんだって。」


 長篠設楽原のパーキングを通過し、新城の出口まで1.3km。合戦をイメージしているため上下線で両軍の陣地としており、上り線が武田軍となっている。下り線は織田・徳川連合軍。


 高速走行は新城で終わることとなる。新東名高速にはバス停留所の設定がなく、新名神高速と合わせても土山サービスエリアの1箇所しかない。
もも「満足した?」
めぐ「まあ、通ったのは通ったけど。」
さく「あ、新清水から?」
なぎ「新清水関係ないだろ。」


 高速を降りて、国道151号との交差点にある道の駅『もっくる新城』。1年半前と比べて混雑も落ち着いた中、バイクの集団が目立っている。最寄となる川路バス停と三河東郷駅までは、もう少し距離があった。
涼子「行きたいんじゃなくって?」
めぐ「気にはなるけど遠いのかなって…、切符もあるし。」
涼子「切符ぐらい買えばいいじゃん。」


 川路では誰も降りず。その後は広いとは言えない一般道路を経て、途中の新城市役所は停車したものの降車客なし。長久手古戦場から、ほぼ時刻表どおりとなる90分のバス乗車であった。
涼子「はい、お疲れ…。」
もも「まだまだよ、こんなんで音なんか上げてちゃついてけない。」


 ここまで乗ってきた、ラッピングを纏ったエアロバス。元々は4列ながら夜行便として東京都内まで乗り入れ、くたびれてお役御免となったところに新規路線の設定…。
めぐ「…って感じ?」
なぎ「わからんなら無理するな。」

(2016年7月乗車分 おわり)


 今回乗ったのは長久手古戦場や藤が丘から、新城市へ向かう高速バスの新路線。新路線とあってまだ定着しておらず、大学利用を見越したとすれば"夏休みの土曜日"。空席は必然と多かったのか…。
めぐ「…いかがでした?」
ひろ「長久手古戦場から新城市向かうバスな…、今までわからんかった。」

 東名豊田から豊田ジャンクションの1区間だけ乗っていなかったという、単純にして意外な事実。これは豊田市から中部国際空港のバスが、当該区間を通らないためであった。
ひろ「…それだけのため?」
めぐ「あるよ、ルートもだし。ここから田原とか浜名湖。」

 東名高速というか、新東名高速のバス旅行列伝。少々"後続"もあるので、2017年以降分はまたの機会で。
(鉄旅リターンズプラス第5弾 つづく)