2018年8月28日(火)午前10時23分 徳島県海部郡海陽町・海部駅

 徳島方向にある構造体はトンネルの形をしながら、その上に山がなくなっている。このような高架駅ならば、周辺に線路から直接上がれるものは設けにくい。後に調べたところ、かつて貫かれていた山が開発により崩されたという。それにより現在まで、構造体だけが残っていたのだ。


 そんな高架橋の上にありながら、構内踏切型という構造が特徴の海部(かいふ)。これならば上下移動も少なく、誰でもエレベーターなく楽に乗り換えられることだろう。
なな「いいけど、下からどうやって上がってくの?」
めぐ「…どうなんだろうね?」



73.海部10:27発→甲浦10:38着 普通5545D/甲浦行き ASA-301
 乗るのはかつて高千穂鉄道で活躍した車両。車内は第3セクターらしいボックスシートで、団体用の設備も搭載。加えて天井などに夏らしい装飾がなされている。
さく「なんていうかな…?」
もも「アンタまでまとまんないのがうつっちゃってるし。」


 駅名標のフォーマットは別々に用意されており、駅番号(JR四国:M28)も徳島から通しではあるものの別々(阿佐海岸鉄道:AK28)に用意。この点は概ね、土佐くろしお鉄道と共通だ。
めぐ「手作りっぽくってなんか…。」
ユン「いいと思いますよ、味があるっていうか。」

 発車すると…?
なぎ「うゎ、光った!」


 車内の照明器具を用いず、天井のイルミネーションがきらびやかに点灯し始めた。これはトンネルが多い路線だからこそ可能なものだろう。
もも「何これ…、電車じゃないよ。電車じゃないけど。」
なな「天の川みたいな…?わかんないけど。」


 海の眺めをここでも1つ入れておこう。この路線は土佐くろしお鉄道(宿毛線)と同じく、全て高架橋とトンネルで貫いている。
ユン「本当、いいとこ選びましたよね。」
さく「こういう夏休み送りたかったっていうか…。」


 徳島県最南端の駅、宍喰に停車。阿佐海岸鉄道で唯一の途中駅であり、本社もここに構えている。駅名標も海部とはデザインが異なっていた。
なぎ「…夕日だよな。」
なな「見てみたいよね。」


 高松を出て3時間33分。特急2本と普通2本を乗り継ぎ、甲浦に到着した。少しだけ高知県に入っており、ここが終着駅となる。
もも「何、昨日のちょっと徳島入ったって?」
めぐ「それもあるけど…。」
さく「いいじゃん、せっかくここまで来たんだよ。」


 ホーム1本と待合室だけの無人駅を、反対側からも収めよう。この折り返しは宍喰までとなるため、しばらく滞在する前提で予定を組んでいた。
なな「ここは予定が変わってとかは?」
めぐ「ここは最初から決めてまして。」


 単線で続いてきた高架橋もここで途切れている。古来の計画(阿佐東線)では室戸岬を経て、現在のごめん・なはり線(阿佐西線、土佐くろしお鉄道)へつながるものだったらしい。そんな甲浦は、高架ホームからそのまま階段で出られる方式。
もも「ほとんど乗ってなかったじゃないのよ。」
さく「まあ今日、平日だからね。」


 現状(2018年8月下旬)はこの先、室戸岬へはバスに乗り換えとなる。DMV(軌道と道路双方を走行することができる車両)やBRT(バス高速輸送システム)であれば、高架橋から地上に出る"通路"を設けた上で直通できるだろう。エレベーターはないので、上り下りには気を付けよう。
なぎ「つなげられはできるんなら、楽だよな。」
なな「いやいや、ここからあんなの建ち上げるの大変よ?」


 地上には駅舎があり、観光案内所や待合室として存在する。
さく「いいね、夏休みに来たって感じ。」
めぐ「いいでしょ。」


 高知県安芸郡東洋町、甲浦駅周辺のマップに目を通しておきたい。比較的近い位置に海水浴場があり、今日のように人が少なければ静かにゆっくりと過ごせることだろう。散策にはレンタサイクルもあり、1日200円に加えて預り金が1000円となる。
なぎ「…どうするか。」
もも「いいけど、次って何分?」
さく「11時45分だから、30分ぐらいに戻れりゃいいと思うよ。」


 木のぬくもりを感じさせる駅舎で過ごそう。畳敷の区画があり、本も自由に読むことができる。ノートが置かれていたので、今回ここまでの行程を記しておいた。
ユン「先輩もずいぶん乗り気ですよね…。」
めぐ「いつもはあっても、あんまり書かないんだけどね。こういうの。」



(現)い・ろ・は・す(コカ・コーラ) 130円
(現)い・ろ・は・すスパークリング・メロンクリームソーダ(コカ・コーラ) 150円
 ここで水分を仕入れたい。単なる水と、気になった味付き炭酸水。飲んでみれば、確かにクリームソーダの味はした。
なな「…せっかくだから、昨日言ってた松山の話。聞かせてほしいな。」
めぐ「じゃあ…、時間あるし。」

 

 時は2010年3月。高知から高松へ戻ってきた旅行班一行は、その夜に時間をつぶしつつフェリーの深夜便で宇野へ。夜も明けきらない始発で宇野から茶町、さらに夜明けの瀬戸大橋で坂出。そこから予讃線を乗り継ぎ、松山にたどり着く。
ユン「そこから道後温泉ですか?」
めぐ「道後温泉行って、本館入ったよ。」

 

 道後温泉本館でひと風呂の後は松山駅へ戻るが、名物たる『坊っちゃん列車』を選ぶ余裕まではなかった旅行班一行。松山から普通のみで岡山へは向かえず、伊予西条から観音寺までは特急を利用。坂出まで普通に乗った後、マリンライナーで岡山へ渡ったのだ。
(つづく)

 


「中途半端なところでごめんなさいね~。松山の思い出話もそうでしょうけど、四国旅行は甲浦で一旦区切らせていただきます。この続きはまた後にして…、宿題終わってないのに余計なことしちゃったんですよね。では、バーイ!」

 


高松駅へ戻る。

 

甲浦から北上する。