前回の記事で述べた「オキザリプラチンによる末梢神経障害に対する支持療法としてのシスチン・テアニンの有用性の検討」についてですが、がん幹細胞をやっつけるという観点からは矛盾するかもしれません。矛盾というより利益の相反、あるいは皮肉ともいえます。
佐谷はがん幹細胞が活性酸素に強い耐性を持っていることを不思議に思っていた。がん細胞を殺すには強い毒性を持つ活性酸素が有効だが、がん細胞は死滅してもがん幹細胞は生き残っている。この原因がCD44にあった。「シスチン」というアミノ酸を細胞内に取り込み、抗酸化物質に変換することで、CD44ががん幹細胞を守っていた。
「再発」の元凶、幹細胞の弱点を攻める:がんは治せる(4)佐谷秀行・慶大教授:2016/1/14 12:00 日本経済新聞 (全文閲覧するためには会員登録が必要です。無料登録会員は月10本まで閲覧できます。)
つまり「シスチン」を摂取供給することは、化学療法の副作用対策などに効果があるとしても、「がん幹細胞」を守ることにもなってしまうという可能性があるということです。
シスチンは鶏肉などの肉類に多く含まれるようですが、「がん患者に肉類がタブー」という一説はこれと何か関係があるのかもしれません。前回の記事で述べた「アミノ酸シスチン700mg」の1日1回摂取とは、鶏肉(もも肉)400g相当のようです。
事実が証明されない現時点においては、念のために、この成分のサプリを避けることや肉類の過剰摂取を控える方が無難なのかもしれません。
さて、このシスチンの取り込みを阻害する機能があるという、既存のリウマチ薬「スルファサラジン」と抗がん剤を併用して、がん幹細胞の退縮を狙う治療については後日述べたいと思います。