楽しい時間は、あっと言う間で
気付けば、
茜色へと、染まっていた。
『 そろそろ、帰ろっか。 』
そう口にしたら、
今の今まで笑ってた顔が急に翳って、
シュン、と俯いた。
くるくる変わるその表情は、
子供らしくて、
素直で、
本当に可愛いなぁ、なんて
柔らかな髪に触れようと手を伸ばしたら、
急に頭をあげるから、
慌てて手を引っ込めた。
その顔からは、
さっきの翳りはすっかり消えて
今日たくさん見せてくれた無邪気な笑顔を浮かべてるから、
ホッとしたのも束の間、
『 またあしたも、あそべる? 』
そう、訊かれて
『 うん、』
とは、
………… 返事、出来なかった。
夏が終わるまでここにいる、って言ってしまったけど、
本当は、
いつ発作が起きるか、分からない。
今日はたまたま調子が良かったけど、
明日は、どうなるかわからない。
今、ここで約束して、
もし夜に発作が起きてしまったら、
まさきくんとの約束を破る事になってしまう。
それだけは、
絶対、したくなかったから。
だからオレは、
『 じゃあ、ね。』
って、誤魔化した。
こんな返事、ずるいよね。
うん、とも、ううん、とも言えないオレ。
でもまさきくんは、
特に気にする素振りも見せないで、
『 うん、
またあしたねっ。 』って
とっても嬉しそうにニッコリと笑って、
小さな手を振ってくれたんだ。
その夜、
どうかこのまま発作が起きませんように、と
布団の中でずっと、
眠りに落ちるまで、必死にお祈りしたんだ。