いつも買い物に行く駅ビルに、赤い実をつけた常緑樹の生け垣があります。
ビルの陰にあって風あたりが少ないせいか、秋に実った実が冬になり、年を越してもそのままです。
調べたところ、櫟(イチイ)という木であると知りました。
背が低く刈り込まれていますが大木になる木で、日本には御神木もたくさん存在するそうです。
成長が比較的ゆっくりなので、年輪が詰まった質のいい木材となり、
彫刻や弓、箱材として優れているそうです。
イチイという個性的な名前は、
古代日本で、高官の用いる笏(シャク)を造るのに使われたことから来ています。
神主さんなどが右手に持っている、靴ベラのようなものが笏(シャク)です。
当時の身分制度は30位階に分けられていたので、
イチイ(一位)という名前が如何に高尚なものであったかわかりますね。
イチイの木の優れた材質で作った笏(シャク)は、一級品として崇められます。
岐阜県にある霊山・位山(くらいやま)にはイチイの原生林があり、
歴代天皇のご即位に際して位山のイチイの笏が献上されるのが慣例となっていて、
最近では平成元年の今上天皇即位のときにも献上されたそうです。
笏(しゃく)は日本において束帯(天皇以下公家の正装)の着用のさい右手に持つものです。
起源は中国で、日本には奈良時代に入ってきました。
何のために持つものかははっきりしませんが、一説によると威儀を整えるためだそうです。
古代中国・周の時代、武王が殺伐とした気風を改めるため臣下の帯剣を廃し、
そのかわりに笏を持たせたのが起源であると云われています。
剣を持たずに笏を持つ、ということは、
調和のもとに生きていきます
と誓っていることの、意思表示であると思います。


