外国のものばかり取り上げてきましたが、蘭は日本にも自生しています。
お写真は、日本特産の蘭です。
風蘭または富貴蘭(ふうきらん)といって、日本で古くから親しまれてきた古典園芸植物のひとつです。
着生植物・バンダの一種で、
日本の本州中部以南から琉球列島にわたる地域に自生していたそうですが、
年々姿を消し、絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)に載せられました。
初夏に咲く個性的で美しい花と、甘いバニラのような香りがたいへん魅力的で、
日本人に愛され、現代では園芸品種がたくさん出回っています。
江戸時代の中ごろにブームがあったそうで、徳川十一代将軍家斉も愛好したと伝えられています。
丸めたミズゴケに植えられているものをよく見かけますが、
南の暖かい地域のお宅で、庭の柿の木に着生させて育てているのを you tube で見ました。
白い花が満開を迎えた初夏、風が吹くと甘いバニラの香りが漂ってくるそうで、
この香りに魅せられて、我々人間だけでなく昆虫たちもふらふらと吸い寄せられるように集まって来るのが見えるようです。
花じたいは白く小さく楚々とした感じですが、たいへん個性的な形をしているのでよく見ると、
長い花茎からはさらに長い子房がのび、花はその先につくので、葉よりもかなり上の方で花が咲く、
というように、風を受けることを意識した花の作りになっていることがうかがえます。
また、一つの株では往々にして、ほとんどの花が同じ方向を向くという、非常に印象的な咲き方をします。
この富貴蘭にとっては、香りを運んでくれる「風向き」が非常に重要で、
根、茎、葉、そして花というように、
花だけでなく、株全体が
風の流れる方向を意識した作りになっているのではないかと思います。
富貴蘭の「貴」の字は、貴社・貴殿・貴兄というような使われ方をすることからわかるように、
「相手を尊敬・尊重に値することを表す」という意味があります。
「風」という自分の周囲の空気の流れが大事であることを生まれながらに知っていて、
敬意をこめて接し、自分をそれに合わせて成長してきた結果、
このような魅力的な蘭となり、
日本人に大事にされて、今も生きているのです。
