樹木が秋につける赤い小さな実は、鳥に食べてもらうことを期待して、
実ってすぐのころはわずかな毒性を持っていますが、
年が明けて寒さがピークとなる2月にはそれも消え、
食料の少ない時期の鳥たちの貴重な食糧となります。
クロガネモチ、ピラカンサ、ナンテンと取り上げてきましたが、このような樹木は他にもたくさんあり、
鳥たちが好んで食べる果実は、黒いものも多いそうです。
ただ、わたしたち人間から見ると赤の方が関心を惹く、目立つ色であるところから、
赤い実をつけるものが庭木や公園、街路樹などに、植えられるのです。
あらためて国道や公園などの木を観察してみて、小さな実をたくさんつけたクロガネモチが多いことに気が付きました。
以前にも書きましたが、クロガネモチの果実は人間にとって、苦くて食べられたものではありません。
ですが美しい樹形と常緑で手がかからないこと、そして小さな果実が美しいことで好まれ、
街路樹などに植えられることで、人間との共存をみごとに果たしていますね。
樹木たちが生きるために持っている心理術、賢さを思い知らされます。
同じように、美しい果実で人間に好まれている庭木のひとつに、万両(マンリョウ)というのがあります。
お正月の飾りとしてよく目にするこの樹木は、
日陰に強く育てやすいので、和風のお宅の玄関先などによく植えられています。
秋になると葉の下にぶら下がるように実る果実は、年を越して冬まで残るので、
これもやはり鳥たちの貴重な食料です。
ですが丈が低く葉の下に隠れた実の付き方で、冬でも目立ちません。
鳥たちの目にもなかなか入らず、春になっても残っていることがよくあるそうです。
そんなマンリョウの実を、鳥たちから一枝「おすそ分け」してもらって、
人間たちは、お正月の飾りにするのです。
たくさんあるマンリョウの品種の中で、「宝船」というのが有名です。
ふちがぎざぎざで、真ん中に折れ目が入っている葉を船に見立てているわけですが、
鳥たちにとっても冬のマンリョウは、宝(赤い実)をたくさん乗せてやって来た緑色の船に見えていることでしょう。
人間から見ても、なんとなくいいことを運んできてくれそうに見えます。
お正月の飾りにするわけが、わかりますね。
