セミナー『中国茶のこころ』と茶家十職の世界 に不易流行を想う | 俳茶居

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       義仲寺や秋立つ空に塚二つ (呑亀〉

セミナー『中国茶のこころ』と茶家十職の世界 に不易流行を想う

 

安藤雅信氏の茶席(2018年10月5日 銀座蔦屋にて)

2018年9月29日、30日(土・日)東京・浅草の東京都立産業貿易センター台東館にて「第14回 地球にやさしい中国茶交流会」が開催された。小生ワンコイン茶席の淹れ手スタッフとして、今年も参加が叶った。台風の接近で催事の開催、お客様の安全など、主催関係者のご心配は大変なものだったと推察する。無事開催が出来た事を、森崎様はじめスタッフ各位の皆様にお疲れ様と伝えたい。時が経てば「あの時のエコ茶会ね」と思い出話になれば良い。

 

今年は、「新刊『中国茶のこころ』と茶家十職の世界」と銘打ったちょしさん、うらりんさん、ゆいさんのセミナーとお茶席が、現代茶芸に一石を投じ大きな話題となった。お三方は4年の歳月をかけ茶人李曙韻さんの翻訳本「中国茶のこころ 茶味的麁相」を、陶芸家でありこの本の監修人でもある安藤雅信さんと先月出版されたところであった。その出版に合わせた絶妙のタイミングでのセミナーとお茶会は、瞬時に予約でうまり小生も届かなかった。

著者の李曙韻さんが描く茶人のイメージは、装飾的な事を遠ざけ、静かに茶と向き合う真摯な生き方を問うている。その考えから出来上がる茶席は、より虚飾を排するスタイルとなる。陶芸家安藤雅信氏との30年の交友から、彼の作品は彼女の茶器への想いを具現化することとなった。

茶文化とは、お茶の製造方法の歴史とお茶の飲み方の変遷が核となる。中国明代に発展した散茶製法が、現代のお茶への道を開いたと言える。そしてお茶を美味しく淹れるための茶器・茶道具が新たに登場することとなる。お茶は単なる飲料ではなく、飲む場所や作法が考案され深い精神性を持つ哲学に昇華していく。日本の茶道はその大きな例である。

今回エコ茶会で彼女たちが発表した茶芸は、茶人李曙韻氏が中国からアジア各地に伝播発展した茶文化に長い時間寄り添い、想いを込めた「現代茶藝の今」なのである。

日本の茶人達は、今回の本により心を揺さぶられることとなる。「李曙韻の茶のこころ」と言う新たな「流行」から次代の「不易」を見つける旅が始まっている。                                                                                                              俳茶居