出ました! | 防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

「防浪提に抱かれて磯の香りも生き生きと」
田老一小校歌の歌い出しです
津波が来ても二重の防浪提が守ってくれると思っていました
津波はその防浪提までも破壊して、ふるさとを壊滅さた
それでも、やっぱり海は麗しいし、川は清い

 海水温が尋常じゃなく上昇しているので、養殖コンブの種苗生産は年々困難さを増しています

 

 水温が上昇するとなぜ種苗生産が難しくなるのかといいますと

 

 以前は天然コンブに「子嚢斑」(しのうはん:コンブが種を出す部分です)が出たらコンブを刈ってきて

 洗浄して種付けすれば良かったんです

 もし失敗しても海からコンブを採ってくるだけなので何度でもやり直しがききました

 

 近年、海水温が急上昇しているためにそもそもコンブが少ない

 それも、絶望的に少ないのが一つ目の要因

 

 僅かに繁茂してるコンブも25℃などというコンブの生存限界を超えた水温のため、生きてるのがやっとという感じで、ちょっとしたシケで岩から離れて流れてしまいます

 

 以前は9月の下旬になればコンブに子嚢斑が出て種をとれたんですけれども、水温の上昇に伴って天然コンブに子嚢斑が出るのは10月の中旬以降

 

 子嚢斑が出る時期はどんどん遅くなり、コンブの流失時期はどんどん早くなっているので、天然を当てにしてると欲しいときにコンブがないという状況になります

 これが2つめの要因

 

 コンブ養殖の方からすると

 以前なら9月近くまで収穫できたのが、近年、海水温が上昇する時期が早くて先端の方からどんどん腐ってしまうため7月中に収穫を終わらせなくてはなりませんから、一日でも早く種苗を受け取って海に入れて成長させて、できるだけ早くから収穫を始めたい

 コンブの成熟する時期がどんどん遅くなっているのに、漁業者が種苗を受け取りたい時期はどんどん早まっている

 この無理難題が3つめの要因

 

 そんなのムリ

 絶望的な状況

 

 ではありますけど

 対策を考えてます

 人間だもの(笑)

 

 早い時期に子嚢斑が出ていない天然コンブを採ってきて

 水温を下げた陸上水槽に入れて

 光周期を操作して

 強引に子嚢斑を出させます

 

 そんなことできるの?

 って思うかも知れませんが、それほど難しいことではなく、農業分野ではずっと昔からやってることですよね

 

 説明するとたいていの人は

 「そんなことできるの?」

 って訝しがりますが

 実家が農家である仙台の義姉に話したら

 「あー、イチゴでやってるようなものだっちゃね」

 ってすぐ理解しましたっけ

 

 

 今年は8月6日に海からコンブを採ってきて陸上水槽で管理してきましたが

 今朝見たら

 出てました!

 黒っぽいのがコンブです

 その表面に色が違う模様が出てるのが解るでしょうか?

 この部分が子嚢斑

 

 今のところは順調ですかね

 

 ただ、すぐに種を付けてしまうと

 種苗が海に出したい大きさに成長しても海の水温が高すぎで出せない

 という状況になってしまうので

 1ヶ月半ほど先の海水温を予想しながら、逆算して種付けしなくてはなりません

 

 いやはや、コンブ種苗担当者泣かせの海になったものです

 

 

 私が種苗生産を担当したのは平成8年のことですが

 平成8年の時の私が今コンブ種苗生産を担当させられたら・・・・

 ムリです

 絶対にできません

 

 

 私もいいかげん年なので、次の世代に技術を継承していかなくてはならないんですけど

 コンブの種苗生産技術ばかりでなく、成熟誘導の技術も伝えなくてはなりません

 理屈が解らなくても、必要なことを一生懸命にやればできるとは思いますが

 問題は絶対に失敗できないということ

 

 絶対に失敗できないプレッシャーの中、数ヶ月間必要なことをやり続けられるか?

 毎日眠れない日が続く

 

 誰もやりたくないよなあ

 

 


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