できない理由を考えなければ | 防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

防浪堤は壊れても ~たろうの海から~

「防浪提に抱かれて磯の香りも生き生きと」
田老一小校歌の歌い出しです
津波が来ても二重の防浪提が守ってくれると思っていました
津波はその防浪提までも破壊して、ふるさとを壊滅さた
それでも、やっぱり海は麗しいし、川は清い

 先日、無謀にも大学に行ってお話しさせていただいたんですが

 そのことについて、大学生から感想みたいなものが届きました

 見るのがコワい・・・

 

 「できない理由を考えるな」という言葉は、教育者の立場になったときに子供達に伝えたい言葉だと思いました。子供達は好奇心や想像力が優れていて様々なことを思いついたり、興味を持ったりします。そのような多様な可能性を伸ばすために、できない理由ではなく、どうすればできるかを考えさせる教育をしていきたいです。

 

 教育学部の学生さんなんですね。ぜひ、そのような教育を期待してますので

 

 「できない理由を考えるな」って私が言ったんじゃなくて、前組合長によく言われていたんです

 前組合長は色んなアイデアを考える方で、時に(そりゃ、いくらなんでも無理ですぜ)っていうことを思いつくんですね

 「それは無理ですよ」って言うと

 「できない理由を考えるな」

 ってよく言われたものです

 

 代表的なのは東日本大震災の直後、仮設住宅も準備できてない中で避難所を回った時です

 

 避難所にいる漁業者を集めて

 「船は漁協が準備します。養殖施設は年内に復旧します。来年の春にはワカメの加工場を稼働させて真崎ワカメの販売を再開します。ですから、皆さん漁業をやめないでください。また一緒に漁業をやりましょう」

 って宣言したんです

 被災した組合員に対しての言葉としてはものすごく立派だと思います

 けど、実務を担当する人間にとっては地獄の発言

 (え”ーーーーー!絶対無理でしょ。なに言ってくれちゃってんですか)体中から冷や汗が吹き出しました

 なにしろ、沖には養殖施設の残骸が団子になって絡まったまま。福島から青森の太平洋岸にある造船所は壊滅して熾烈な船の争奪戦が勃発してる。ロープも青森・岩手・宮城・福島の漁業者間で取り合いになってるし、コンクリートがない、トラックがない、事務所には電気も電話もない。そもそも住む所がないし、カッパもライフジャケットも刃物も長靴すらない。

 なんにもない なんにもない まったくなんにもない♪

 そんな状況で、半年かそこらで500台近い養殖施設を再建できるわけがない

 

 「組合長、なんぼしたって無理だでば」

 「やれるかやれないかなんて聞いてない。やるしかねえんだ。できない理由を考えんな」

 

 結果的には、大阪のロープ会社が24時間体勢でロープを製造してくれたり、工事会社が養殖施設のアンカーとなるコンクリートブロックを優先的に作ってくれたり、様々な方のご協力でなんとかなったんですけどね

 確かにあのとき前組合長が「無理だな」って言ってればできなかったでしょう

 

 でも、ホントしんどかったんですから(笑)

 組合員さんは海に出られないイライラが募って

 「漁協で船を準備するって言ったべ。どうなってんだ、早くしろ!」

 「なにやってんだ、全然進まねえがっか!」

 等々さんざん言われるんで、外を歩けなくなりました

 (オレはそんなこと言ってませんけど・・・・)

 

 嫁さんは私が過労と心労で死ぬと思ったらしいです

 

 

 

 先日、息子と話してるとき

 「人ってやっぱり限界があるよね。どうやっても無理なものがある」

 とか言うので

 「絶対に無理だと思うようなことでも毎日精一杯やってればそのうちどうにかなんだっけ。苦しいって思ってもそのうち慣れる。そりゃ限界ってどっかにあるんだろうけど、それは自分が思ってるところよりずっと上にある」

 って言ったら

 「普通の人が言ったら言い返すけど、津波を超えてきた人に言われると言い返せないなあ」

 って笑ってました

 

 

 

 できない理由を考えなければ、色んな可能性が出てくる

 が

 かなりしんどい(笑)

 

 


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