木製の船、震災までは何隻か現役で漁に出ていましたが、震災後は全てFRP船になってしまいました
先日のサッパ市で展示されてた木船です
かつて田老には何名かの船大工さんがいて、サッパと呼ばれる木製の船を作っていました
こうしてみると美しいなあと思います
大きい船。十数人が乗り組んで、櫂で漕いでいく自営定置網の船なんかも木製でした
FRPの船は白ですけど、木船は水がしみこまないようにペンキを塗るので、多彩なカラーリングがありまして
船体の色は黒・グレー・青・水色など
船縁の色は様々なので、船体と船縁の色の組み合わせで、地区とかまき(家系)のシンボルカラーみたいになってました
国の代表チームのユニフォームみたいなもんです
遠くから見ても、どこの地区とか○○まき(家系)ってのが解りました
昭和39年当時の写真。水の透明感、伝わりますか?
船大工さんによって船の形状や大きさも違って
摂待の船大工さんが作る船は田老の船より少し大きくて「摂待船」と呼ばれていました
親父が摂待出身なので、ウチのは摂待船でしたね
船大工のミツアキさんが作った船
たしか、グレーの船体に青の船縁だったかな
うちの船の色はうろ覚えですが
とても好きなカラーがありまして
「せいべいや」(屋号)さんの船は
青い船体に黄色の船縁でした
高校生の時に見て
「おお!ブラジルだ!」
オレもあれがいいって思いました
ブラジルナショナルチームのカナリア色
でも、好きだからって勝手にそのカラーリングにはできません
基本、親父の船と同じカラーリングじゃないと
出撃を待つ船。「さあ、行くぞ」みたいなエネルギーが伝わってきません?
船の形状が微妙に異なるのが解りますか?
木は水を吸うと腐るので、管理に手間がかかるという弱点がありましたけど
船底が平らなので、ごく浅場にも入って漁ができるという強みがありました
軽くて一人でも陸揚げできたし
また、FRP船は転覆したら沈んでいきますが、木船は木自体に浮力があるので転覆しても浮いている
転覆しても自分で元に戻して採り続けるツワモノもいましたね
軽くて小回りがきくので、船外機を外し、漕いで波の荒い極浅の漁場に入り込んでいくツワモノにとって
船のカラーリングは赤糸威の鎧みたいなものだったのかも知れません
管理が容易なので、時代と共にどんどんFRP船に変わっていきました
私が最後に木船に乗ったのは高校生の時
FRP船のようなキッチリ水が止まるスカッパーじゃなく、船底に空けた丸い排水口に木の栓を打ち込むので水がチョロチョロ入ってきたりして
「親父、水が入ってくるぞ」(汗)
「栓にタオル巻いでぶち込んでおげ」
船には木の栓を打ち込む専用の小石が積んでました
打ち込みが甘いと水圧に負けて栓が抜け、海水がドバドバ入ってきて焦ったり(笑)
栓を打ち込みすぎて抜けなくなったり
でも、船が軽いんで、櫂で漕いでもスッと進むし、ピタリと止まる。ビミョーなコントロールが可能でした
今は強力な電動モーターがあるので、重い船でも自由自在に動いてくれますが、どうしても動きにタイムラグがあります
櫂がマニュアル車なら、電動モーターはオートマ車みたいな
(止まれ)とモーターを逆回転させても実際に止まるのは1秒とか2秒後
その頃にはアワビの上を通り過ぎてる(ToT)
木船に櫂の組み合わせはピタリと止まりましたね。思えば
もうこれを作れる人がいないのはものすごーく残念です
津波で亡くなられた田老の船大工の棟梁さんは、震災前
「船釘がねえからもう船は作れねえ」
っていってました
「釘なんてどこでも作ってくれんじゃないですか?」
「今の釘は錆びねえ。錆びねえばダメなんだ。釘が錆びて木を止める」
ステンレスの釘だと、スポンと抜けてくるんだそうです
鉄が錆びてギザギザに膨張することで、木をがっちりと押さえ込むんだとか
船専用の鉄釘がないと船は作れない
その釘を作る人がいないので、もう船は作れないって
寂しそうでした
写真の木船は、もう二度と再現できない宝物のようなものです
これを粗末に扱っちゃイカン
海洋のプラスチック汚染が問題になってる昨今、船も自然素材に戻るべきなんじゃないですかね
FRP船は廃船にするとき大変なんです
廃船するのにけっこうお金もかかるんで、そのまま放置船になってしまったり
今の技術をもってすれば木に水を吸わせない加工とか、木を一体成型することもできそうなものですけど
木製モノコック構造のサッパとかどうでしょ?
推進機は電動モーターで