夜明けのすべて
瀬尾まいこ
2023/12/05
★ひとことまとめ★
優しいおせっかい
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
知ってる?
夜明けの直前が、一番暗いって。
「今の自分にできることなど何もないと思っていたけど、可能なことが一つある」
職場の人たちの理解に助けられながらも、月に一度のPMS(月経前症候群)でイライラが抑えられない美紗は、やる気がないように見える、転職してきたばかりの山添君に当たってしまう。
山添君は、パニック障害になり、生きがいも気力も失っていた。
互いに友情も恋も感じていないけれど、おせっかいな者同士の二人は、自分の病気は治せなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになるーー。
人生は思っていたより厳しいけれど、救いだってそこら中にある。
生きるのが少し楽になる、心に優しい物語。
本屋大賞受賞後第一作。水鈴社創立初の単行本、渾身の書き下ろし。
『夜明けのすべて』刊行にあたって
いつもは楽しい楽しいと小説を書いていた私が、立ち止まってはゆっくり書きました。
そのぶんいつまでも登場人物を見守っていたくなるかわいい作品になりました。
人生は想像より厳しくて、暗闇はそこら中に転がっていて、するりと舞い込んできたりします。でも、夜明けの向こうにある光を引っ張ってきてくれるものも、そこら中にきっとあるはずだと思いたいです。
いつも本が完成して思うことは、「楽しく読んでもらえることが一番だ」です。その思いは今回も変わりませんが、『夜明けのすべて』を読んでくださった方が、ほっとできる一瞬を味わってくださるのなら、明日を待ち遠しいと思っていただけるなら、幸いです。
瀬尾まいこ
【著者プロフィール】
1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒。2001年、「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年単行本『卵の緒』で作家デビュー。2005年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞、2019年『そして、バトンは渡された』で本屋大賞を受賞。他の作品に『図書館の神様』『強運の持ち主』『優しい音楽』『あと少し、もう少し』『傑作はまだ』など多数。
【感想】
瀬尾さんの作品はどの作品も心がホッとして、本当に好きなんです。好きなんですが…
評判もいいみたいですが、私はあまり好きになれなかったです
度を超えたおせっかい同士の話に感じてしまいました。
PMSに悩まされる藤沢美紗28歳、パニック障害に悩まされる山添孝俊25歳。
同じ会社で働く2人が、お互いの世話を焼きつつ病気と向き合い、少しずつ前向きになっていくお話です。
パニック障害は自分自身なったことがないので語れませんが、問題はPMSです。
私は自己判断でPMDDと思っていたら鬱だったパターンですが、なんというか、彼女の場合もPMSだけじゃない気がします
もとの性格もあるのかもしれませんが、山添君にお世話焼いてるときは躁状態みたいに感じます。
同じ会社に入社1ヶ月のパニック障害の後輩がいたとして、
「彼、髪が伸びてボサボサだな。
そうだ、私が切ってあげよう!(←NOT美容師)
ハサミとケープ買ってこれから彼の家に行こう!なんだかワクワクしてきた!」
「そうだ!彼の病気のことをみんなに知ってもらおう!彼は隠したがっているけれど、知ってもらったほうが彼もきっと助かるよね!
明日会社行ったら社長に言おう♪」
って…、やばいですよね
世話好き通り越しておせっかいも通り越して無神経ノンデリ…。
これ、彼は大丈夫だったからいいけれど、人によっては追い打ちかける行為ですよね。
これを本気で"良かれと思って"やっているところに恐ろしさを感じます
ただ、この作品の登場人物はみんな良い人なので恐ろしく感じる人なんていません。良かったね…
未沙の生理前〜生理中の抑えられないイライラは自分も同じなのでわかります。
私の場合は、生理が近づくと夢の中でめちゃくちゃ人に切れているのですぐわかります。
(現実ではイライラより、憂鬱、無気力になります。)
彼女の、自覚しつつも他人に当たり散らし続けている、というところに疑問を持ってしまいます
相手のことを追い込まないと気が済まない、ひどい言葉や嫌味を言ってやりたい気持ちになる、と思うのはわかりますが、自覚しつつ実際に口に出す(我慢ができない)のは重度だと思います。
もはやヨガとかハーブティーでなんとかなる次元は超えている…。
薬を飲むと眠気がひどくなったので飲んでいない、とありましたが、薬を変えてもらうなりしたほうが良いと思います。
他にも共感できないポイントはあって、
PMSで他人に攻撃的になってしまうことをものすごく気にしてる&普段も自分がどう見られているかをかなり気にしているのに、自分の生理がいつ頃来るのかすら把握していないところ
山添君に生理周期把握されて指摘されるってちょっと現実だと気持ち悪い…。。
人からの評価を気にしている割に、普段からも結構他人に失礼な物言いをしているところも気になります。
PMSだから。自分でもコントロールできないから。だから当たり散らすのも仕方ないの。
謝ったら許してくれるよね?
みたいな態度にちょっと共感ができない
いくら友達でも毎度毎度こんな感じだったらさすがに距離置くかもしれない。
みんな理解してくれているかもしれないけれど、流石に毎月毎月当たり散らされる身にもなったほうが良い…。
薬で落ち着けることができないなら、うまく付き合っていくしかないし、PMSだから仕方ないで済まさないでほしい
登場人物はみんな優しいからいいけれど、現実はそうはいきませんよね。
なんというか、周りに配慮しているようで配慮していない強引さや、彼女の言葉の薄っぺらさを感じてしまった
天然なのか?
入院中に「欲しいものあるか?」と聞かれたら普通入院中に欲しいものとわかるだろうに、
「掃除機を買い替えたくてコードレス掃除機かな」なんて言うくらいですからね…。
山添君も山添君で強引…
美紗が虫垂炎で入院して、会社代表としてお見舞いにくるのはまあわかるとして、退院時にも来てテレビカードを用意して、他の患者にあげたらどうかとか言い出すし、
私が美紗なら術後なんだからちょっと一人でゆっくりさせてくれ、と言いそうです。
美紗の友達も地獄です。女友達とは思えない発言のオンパレード。
学生時代の友人ではなく、出会いが元バイト先だからかなのか、なんか友情に深さを感じない。
なんで友達続けてるんだ?というような関係性。
「もう28歳でしょう」
PMSに対して 「そんなの、大丈夫だよ。」
「一人で年取っていくのも、さみしいよ」
からの自分の結婚生活の話。
自分がPMSで悩み続けているときにこんな発言されたら、私ならもう二度と会わないかなあ…。。
いくらどんな病気なのかわからないからとはいえ、友達にそんなこと言うか…?
主人公たちの周囲の人達の心の広さが海レベルなので穏やかに話が進みますが、非現実的ですよね
ただ、この作品がいろんな人に読まれることで、外見からではわからない病気があるということが広まるのは良いことだと思いました。
こういう病気があることを知らなければ、
(見た目は健康そうだから)ただやる気がないだけ、って思っていたかもしれない。
けれど、知ることで、決してやる気だけの問題じゃないということがわかると思います。
PMSも、私が学生だった頃よりは世の中に浸透してきたと思いますが、それでもまだ知らない人や、産婦人科や心療内科に行くことに抵抗がある人もいるんじゃないかな〜。
毎月イライラしたり憂鬱になるのを我慢して過ごしている人も多いんじゃないかなと思います。
そういう人が、あれ、私ももしかしてPMSなのかも?って気付くきっかけになればいいよなあーと思いました。
うーん、昔ならほっこり思えたのかなあ?
瀬尾さんのコメントにもあるように、これまでの作品とはちょっと違った感じで書いたんだろうけれど…。
ほっこりできる心を失ってしまったのか私は…?
それとも私の心が狭いだけなのか…