いまだけのあの子
芦沢央
2023/07/17
★ひとことまとめ★
いまこの時だけの、女友達。
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
その友情、いつまで?
物語は予想を裏切り、鮮やかに反転する!
「女の友情」に隠された5つの秘密
新婦とは一番の親友だと思っていたのに。大学の同じグループの女子で、どうして私だけ結婚式に招かれないの……(「届かない招待状」)。
環境が変わると友人関係も変化する。「あの子は私の友達?」心の裡にふと芽生えた嫉妬や違和感が積み重なり、友情は不信感へと変わった。「女の友情」に潜む秘密が明かされたとき、驚くべき真相と人間の素顔が浮かぶ、
傑作ミステリ短篇集全五篇。
収録作品
「届かない招待状」
「帰らない理由」
「答えない子ども」
「願わない少女」
「正しくない言葉」
【感想】
子育てで毎日てんやわんやしていたら、あっという間に7月も終わりに
産後はなかなか自分の時間は取れないだろうと思っていましたが、取ろうと思えば取れる(授乳中とか)ということがわかってからは、Switchでゼルダをやったり、本を読んだりしています
こちらの本は妊娠中のお散歩でブックオフに寄った際に、おすすめとして陳列されており購入
女の友情に関する短編が5話収録されています。
「届かない招待状」は、親友と思っていた友達から自分だけ結婚式の招待状が送られなかった主人公が、なぜ自分だけ招待状を送られなかったのかと悩むお話です。
あれやこれや邪推し、招待されていない結婚式に参列する主人公ですが、参加したことでなぜ親友が自分を呼ばなかったかという理由を知ります。
親友は優しさから主人公を呼ばなかったのですが、もし主人公が勝手に参列していなかったら、友情は本当にそこで終わっていたんじゃないかな~と思います。
いくら優しさからでも、みんな呼ばれていて自分だけ参加させてもらえなかったというのは、親友と主人公だけの友情関係にヒビが入るだけではなく下手したら他の友人とも気まずくなってしまいそう。
自分だったら親友の結婚式なら予定が入っていても絶対キャンセルするし、もし招待されず後日友人がみんなで撮影した結婚式の写真など投稿していたら、なんで自分だけって悲しい気持ちになるもんなぁ。。。
「帰らない理由」は、交通事故で亡くなった同級生宅に訪問した2人の、なかなか帰れない理由が書かれています。
亡くなった”くるみ”と恋人関係だったと主張する主人公の僕と、”くるみ”とは親友関係だったが事故の前には険悪になっていた桐子。
どちらも人には知られたくないくるみとの秘密を抱えていて、互いに「早く帰れ」合戦をします。
主人公の桐子への推察を読んでいると、自分にやましいことがあると相手にもきっとやましいことがあるんだろうと思ってしまう、ということが良くわかります。
私はこの話を読んで、2人よりもくるみのお母さんに感情移入してしまいました。子どもを産んでから本を読んで抱く感想も変わった気がします。
元気に送り出した子が事故で急に帰らぬ人となってしまう。親としてはこれほど辛いことはないですよね。
くるみのお母さんのその後は別のお話で出てくるのですが、まあそうなってもおかしくないよなと思いました。
「答えない子ども」は、主人公・直香の娘は絵画教室に通っており、絵画教室終わりにママ友宅に寄ったところ、娘は描いた絵が無くなったと言う。
いつも描いた絵を大切にしている娘が、絵を無くすはずがない。直香はママ友宅に絵があるのではと思い、ママ友を問いただす。
ママ友は直香からするとできれば付き合いを避けたいタイプで、この人の子供ならやりかねないと直香は結構失礼な物言いをします。
実は自分の娘への過度な期待が、娘にとってプレッシャーになっていたとは気づかずに…。
ママ友付き合いって大変そうですよね。
年齢も経歴も環境も違った親同士が、子供という共通点だけで付き合わないといけない。
どうしても第一印象だけで相手を判断してしまいがち。
直香みたいに、相手のことを上辺だけで判断してしまうこともよくありそうです。
「願わない少女」は、この本の中で1番女の友情ってこういうところあるよね…と思った作品でした。
中学の入学式に出なかった奈央は、同じく入学式をサボった悠子に声をかけ友達になる。
悠子は漫画家を目指していると言い、気づけば奈央は「自分も漫画家を目指している」と答えてしまっていた。
漫画家になるという共通点で中学、高校と悠子との仲を深めていく奈央だが、高3の受験の時期になったところで2人の関係は徐々に変化していく。
奈央の悠子に対する感情は、友情というよりも依存や執着に近いなと感じました。
漫画家を目指しているという嘘から始まった友情のため、悠子に嫌われないよう必死で漫画を描く練習に励むところはむしろ尊敬します。奈央の場合は、漫画家になるという共通点が無くなったときが友情の終わりになってしまいました。
嘘から始まった友情でなくとも、これに近いことって女同士だとよくあるなーと思いました。
○○ちゃんってなんか苦手〜って一緒になって悪口(というほどでもない愚痴)を言っていたのに、気づいたら友達は○○ちゃんと仲良くなっていて、自分から離れていってしまったとか。
奈央のように、自分が一人取り残されてしまったような気持ちになります。
なんで?なんかした?とか自問自答するけど、ただ自分といるよりも居心地がよかったってだけだったり心機一転したかったとか、特に自分が悪くない場合も往々にしてあるからなあ
「正しくない言葉」は、「帰らない理由」に出てきたくるみの祖母・澄江が主人公です。
夫に先立たれ、一人有料老人ホームで生活をしている澄江。友人と呼べる相手もおらず、子供も孫も頻繁には訪ねてこない日々に澄江は寂しさを感じていた。
ある日隣室の入居者・孝子の息子夫婦の不穏な会話を耳にした澄江。
孝子は入居者の中で唯一気が合い、お互いの部屋を行き来するような存在だ。
おせっかいと思いつつも、澄江は彼らに声をかける。
話を聞くと、孝子はお嫁さんの麻実子さんが差し入れたものを食べずに捨てており、そのため麻実子はもう孝子と会いたくないとのこと。
澄江は孝子が理由なくそのようなことをするとは思えず、なぜ彼女が差し入れを捨てているのか調べ始める。
なんで捨てているのかについては、まあなんとなく予想はついたというか驚くような内容ではなかったです。
どちらかというと澄江と朝子の関係、母娘関係の難しさを考えさせられるお話でした。
孫が亡くなってしまった時、娘にどう接してあげたらよかったのか。
自分が一番に娘のことを考えていたはずなのに、娘は自分ではなく夫に感謝していた。
自分の何がいけなかったの。澄江の苦悩がまざまざと伝わってきます。
お話の最後のほうで澄江も言っているように、親は子供に対して人生をかけてお手本を見せていくんだなぁと思いました。
親が人生つまらないと日々言っていたら、子供だって未来に希望は持てないだろうし、親が何歳になってもイキイキとしてて楽しそうだったら、子供も歳をとるのも悪くないなと思えると思います。
私も自分の子供に、生きてくのって楽しいな〜と思えるようなお手本を見せていきたいなぁと思いました
女の友情で言うと、私は高校時代を思い出します。
私の通っていた高校は2年生でクラス替えがありました(2、3年は同じクラス)。
1年生の時、少なくとも私は親友と呼べるくらい親しくしていた女友達がいました。
2人でディズニーに行ったり、その子の地元のメンバーとも遊んだり、一緒に他校の文化祭に行ったり…
クラスが変わってもずっと仲良しでいるんだろうなーと私は思っていたんです。
2年生になりその子とは別のクラスになってしまいましたが、隣の教室だったのでいつものように休み時間に声をかけに行くと、すでに新しいクラスの子と仲良くなっており、私の声など全く聞こえていませんでした
今考えると新しいクラスの子と仲良くなるのはどこもおかしくないんですが、私はそのとき、「あ、私はもういらないんだな」と感じてしまいました。
私は私で自分のクラスで友達ができ、その子のことも徐々に気にならなくなっていきましたが、あんなに毎日一緒にいたのにこんなにあっさり疎遠になっちゃうんだなぁと寂しくなりました。
今考えれば、学生時代って多感な時期だし、くっついたり離れたりってよくあることだと思うんですよね。
趣味でもなんでもコロコロと変わる時期だろうし、より自分に合う人と一緒にいようとするのは当然なこと。
けれど、こうやって余裕を持って考えられるのも、自分が大人になったからだと思うんですよね
学生の頃はそんな風に落ち着いては考えられなかったなあ。きっと私はその子に依存していたんだろうな。
大人になっても、環境やライフステージが変わって疎遠になってしまう友達もいるけど、もうあまり追わないようにしています。
お互い無理して付き合い続けるよりも、仲良かった楽しい思い出のままそっと距離を置くほうがいいんじゃないかな〜と。
またお互い環境が変わったときに連絡を取り合うこともあるかもしれないし
女の友情は儚いと言うけれど、そりゃ仕方ないよね!
だって大人になると、独身or既婚・子有りor無しとか、ライフステージの違いはどうしても出てきてしまう。
それでも仲良くいられる関係もあるけれど、結婚を機に遠方に引っ越すこともあるし、仮に距離は近くても子供が産まれたら昔のように頻繁に遊んだりはできないし、時間を合わせて会うのも難しくなっていくのは当たり前で。
男性のほうが子供いても独身時代のように遊ぶことはできるだろうし、友情も保ちやすいんじゃないかと思う。
どうしても男性(父親)より女性(母親)のほうが子供の面倒を見る機会が多いわけだし。
お互い環境も住んでるところも違っていても、定期的に会ったりお祝いしたりしている今の友達との関係は、これからもずっと大切にしていきたいな〜と思います