穴
小山田浩子
2022/04/20
★ひとことまとめ★
落ちた穴から出てきた後の世界は…
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ夏。見たことのない黒い獣の後を追ううちに、私は得体の知れない穴に落ちる。
夫の家族や隣人たちも、何かがおかしい。平凡な日常の中にときおり顔を覗かせる異界。
『工場』で新潮新人賞・織田作之助賞をダブル受賞した著者による待望の第二作品集。芥川賞を受賞した表題作ほか二篇を収録。
【あらすじ & 感想】
先日読んだ益田ミリさんの「今日の人生2」に、小山田浩子さんの「穴」について書かれている一文があり、どんな作品なのだろうと気になったのが読んだきっかけです
正直…一度読んだだけでは「どういうこと…?」と意味が全然わかりませんでした…
Amazonのレビュー等を読んでなんとなくわかってきました。。。
夫の実家の隣の家に引っ越すことになったあさひ。
ある日、犬でも猫でもいのししでもない見たこともない黒い獣に遭遇し、後をついて行ったところ穴に落ちてしまう。
穴から引き上げられた後の世界は異様なものなんですが、穴に入る前から黒い獣が見えたり子供の歓声が聞こえたりしていたようなので、”呼ばれた”ような感じなのでしょうか。
穴から引き上げられた後の世界では、高齢化で地域にはいないはずの子供たちがいたり、子供たちから「センセイ」と呼ばれる義兄が登場したり、義祖父は雨の日でも庭に水をまき続けるし、相変わらず黒い獣もいる。
とにかく、なんだか気味の悪い世界なんですよね。そして、1人の女性である「あさひ」ではなく「〇〇のお嫁さん」として、田舎コミュニティーの一員となる。
最終的には義兄や黒い獣も見えなくなりますが、結局彼らはなんだったんでしょう。
あさひの心の中の不安が見せた幻想だったんでしょうか?
無職で時間が有り余る単調な毎日、義両親・義祖父との付き合い、ご近所づきあい、四六時中携帯を離さない夫。
その中で、本当は実在しない義兄とのやり取りや黒い獣は、あさひにとって”刺激”になっていたんじゃないでしょうか。
他に収録されている、「いたちなく」「ゆきの宿」もやっぱり解釈が難しい。
「いたちなく」でみんなが食べていたのはイノシシじゃなくていたちだったのでは?とか、洋子さんがいたちの化身とかではないかとか色々考えを巡らせましたが、いまいちピンとこない。
主人公の妻は本当に妊娠してたのか…?不妊治療中なので有り得るかもしれないけれど、次の話の「ゆきの宿」までに特にそういった治療はしていなかったのであれば、不倫…?
私は、「いたちなく」ではいたちの母親が鳴いた話や、知らない間に打ち解けていた妻や洋子をどこか遠くから見ている夫から、女の強かさみたいなものを感じ、
「ゆきの宿」では母になった女性の母性と、子を持つことができた女性を前にしたときの、心から望んでいるのに子を持つことができない女性の心の暗い部分のようなものを感じました。
妻の心情は、子供が欲しくて欲しくてたまらないのに出来ない。友人の赤ちゃんの誕生を祝う気持ちはもちろんあるけれど、一晩彼らと過ごすのはキツイってことなんでしょうか?
(最後のおばあさんの言葉があっているなら、妻も母になれているわけだけど気づいていない?泣いていたのは精神的不安定から?)
私なら嫌だなあ…。嫉妬してしまいそうだし、自分が惨めになってしまいそう。
そして相変わらず蚊帳の外状態の夫。妻とは長年いるが、妻の気持ちは全然わからない様子…。
どれだけ子供を欲しがっているか、どれだけ母親になりたいかなんて、男性にはわからないのでしょうか。
男性は妊娠も出産もしないので、子供が生まれて初めて父性が備わるのかなあ…
う~ん、難しかったです
3作ともどう読み解いたらいいのだろうと考えながら読んだので、ボリュームの割に脳みそを使った気がします…