月の砂漠をさばさばと
北村 薫
2022/03/26
★ひとことまとめ★
母親との懐かしい日々を思い出します。
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
9歳のさきちゃんと作家のお母さんは二人暮し。毎日を、とても大事に、楽しく積み重ねています。お母さんはふと思います。いつか大きくなった時、今日のことを思い出すかな――。どんな時もあなたの味方、といってくれる眼差しに見守られてすごす幸福。かつて自分が通った道をすこやかに歩いてくる娘と、共に生きる喜び、切なさ。やさしく美しいイラストで贈る、少女とお母さんの12の物語。
【あらすじ & 感想】
インスタグラムでおすすめされていたので読みました
普段、こういう作品は自分から読むことがないので新鮮でした
なかなかのほほんとした日常のようなお話読まないんですよね~。。(ブログ読んでくださってる方ならお分かりかと思いますが)
お母さんと、さきちゃんの2人の穏やかな日常が描かれています。
「ふわふわの綿菓子」のお話で少し触れられてはいますが、今はさきちゃんにはお父さんはいません。たぶん、離婚してしまったのかな。
さきちゃんの聞き間違いのお話や、台風で小学校の投稿時間が遅くなる話、学校の連絡帳のお話、猫が飼いたいけれど飼えない話など…
よくありそうな親子の日常のお話なのですが、ただほっこりのんびりではなく、切ない部分もあるんですよね
さきちゃんのやり取りを通して、かつての自分とさきちゃんを重ね合わせるお母さん。
さきちゃんは自分の子供だけど、自分とは違う感性や個性を持った1人の人間なのだとも感じています。
さきちゃんはさきちゃんで、子供らしさもありますが、お母さんを思いやる一面もあり優しい女の子だなと思いました。
私の周りでも母子家庭の母娘が何組かいますが、巻末で北村さんが書いているように、たしかに友達のような関係性に近いなと感じました
どちらかがどちらかに寄りかかる関係だと、どちらか(主に母)に限界が来てしまうので、友達のように持ちつ持たれつ協力し合う関係にならないと、生活が続けられないのかなとも思いました。
12個あるお話の中で、一番自分のなかで印象的だったのは、「さばのみそ煮」です。
本のタイトルである「月の砂漠をさばさばと」というフレーズはこのお話に登場します。
家事をしている時、お母さんがよくでたらめな歌を歌っているというお話なのですが、実はその理由がちょっと切ないんですよね
お母さんがさばのみそ煮の歌を歌っていた理由は、いつかさきちゃんが大きくなって「さばのみそ煮を作る時、今日のことを思い出すかな」と思ったから
お母さんがいつも歌うでたらめな歌は、実はお母さんが子供の頃に、今は亡きお母さんのお父さん(さきちゃんからするとおじいちゃん)が歌っていた歌だった。
こうやって親から子へ引き継がれていくんですね。
自分の子供の頃を振り返ってみると、私の母も良く歌を歌ってたんですよね~。
小学生のころとか、『朝だ元気で』という歌で起こされました
子供の頃は、のんびり寝てる所を母の大きな歌声で起こされるのが本当に嫌だったのですが、今となっては懐かしいな~。
子供の私より早起きして、朝食の準備をしたうえで、明るく歌って起こすというのを毎日毎日…大変だったろうな~と思います。
私だったら歌って起こすどころか、「はよ起きろや…」とイライラしてしまいそうです。。。。
私はさきちゃんと違って、子供の頃、母にも子供時代があったんだということがなかなか実感できませんでした。
おじいちゃんおばあちゃんが母のお父さんお母さんで、母は私の母でありながら、娘でもあるということをきちんと自覚できたのは、高校生くらいだったかもしれません。
祖父母の病気が進行して、お見舞いに一緒に行ったりしたときに、母が「お父さん」「お母さん」と呼び掛けているのを見て、「そうか、母も2人の前では子どもなんだよな」と思いました。
もっと早く私がいろんなことに気づいていたら、母や父を色々と支えられることもできたのかな、とか考えることは今でもあります
さきちゃんとお母さんのような、母親とのほほんとした日常は、もう思い出の中にしかないと思うと淋しいですね
いつか自分の子供ができたときに、子供時代に母親がしてくれたことを思い出しながら、自分がしてもらったことを今度は自分の子供にしてあげるのかな~