うるはしみにくしあなたのともだち
澤村伊智
2021/10/29
★ひとことまとめ★
学生時代流行ったおまじないを思い出しました
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
四ツ角高校三年二組で一番美しく人気もあった生徒・更紗が突如自殺する。
遺書もなくいじめがあったわけでもない。彼女の死をきっかけに、次々に女生徒が見えない力によって容姿を傷付けられていく。
互いを勘ぐり合う生徒たち、変化していくクラスカースト。
担任の小谷舞香は、この異変の真相を探るうちに、地域につたわる「ユアフレンド」というおまじないの存在を知り――。
【感想】
大好き澤村さん
澤村さんを読むと、やっぱりホラー小説好きだな~って思います。
今回の作品は、「小説推理2020」にも紹介が掲載されていますし、Amazonのジャンルも「ミステリー・サスペンス・ハードボイルド」なので、ミステリー小説なのですが、そこはやっぱり澤村さん。ミステリー×ホラーを上手く書いてくれてます
お話の舞台は、四ツ角高校。
四ツ角高校には、どの学校にもあるような噂…いわば学校の怪談のような言い伝えがある。
”ユアフレンドのおまじない”
31年前、四ツ角高校2年の女子生徒・姫崎麗美が屋上から飛び降り自殺で亡くなった。
いじめの事実は確認できなかったが、周囲の人間は彼女の自殺に納得をしている様子だった。
なぜなら、彼女がすごく”ブス”だったから。
あの容姿では、人生に悲観して自殺するのも無理はない。教師までもがそう話していた。
麗美の自殺から7年後、四ツ角高校の女子生徒がまた自殺した。
麗美の自殺と違う点は、その女子生徒は芸能事務所にスカウトされるほどの美人だったということ。
それから3ヵ月後、彼女と同じクラスの不美人の女子生徒が自殺した。
さらに7年後、またもや美人の女子生徒が亡くなった。そののち、彼女と同じグループに属していた可愛い女子生徒が不登校になり、退学した。
その一週間後、同じクラスの不美人な女子生徒が亡くなった。
美人な生徒が亡くなり、その後不美人な生徒が亡くなる…そんなことが繰り返し起こるうちに、ある噂が流れるようになる。
姫崎さんに選ばれた生徒には、昔流行った占い雑誌「ユアフレンド」の実在しない”昭和64年4月号”が鞄の中に入れられる。
そのユアフレンドには、容姿に悩み亡くなった姫崎さんが遺したおまじないが書かれているという。
「美しい人を醜く変えるおまじない。」
次は誰が選ばれるのかな?次は誰が醜くされるのかな?――
そんな、よくある学校の怪談だと思っていたユアフレンドのおまじないが実際に発動し、3年2組で一番美人な羽村更紗が自殺で亡くなった。
次に狙われたのは、更紗の次に美人だった野島夕菜。授業中、皆が見ているなか彼女の顔が醜く変わり、クラスは大騒ぎとなった。
担任の小谷舞香を含め、クラスの生徒はユアフレンドのおまじないの存在を認めざるを得なかった。
―――犯人は誰なのか?次は誰が標的にされるのか?
担任教師の舞香を含め、ユアフレンドを受け取った生徒の視点も含め複数人のパートで話は進んでいきます。
おまじないって、小中学生のころ流行りましたよね??私はよく、「ふみコミュ」ってサイトでおまじないのスレとか見ていましたwww
↓懐かしすぎわろた。。。(掲載元)
ただ、このお話のおまじないはそんな可愛いレベルのおまじないではなく…人の人生まで変えてしまうおまじないです。
読んでいて、ルッキズムについて考えさせられました。
ルッキズム…「外見にもとづく差別」であり、特に「身体的に魅力的でないと考えられる人々を差別的に扱うこと」を指す。外見至上主義という呼称もほぼ同義として扱われる。
身体的要素の中でも特に容姿がその対象の魅力を判断する唯一の材料となり、加えてそれが差別的な様相を持ち合わせたとき、それは一般的に「ルッキズム」として認識されている。(Wikipediaより)
ルッキズムって、誰にでも根づいてると思うんですよね…。というか、私には根づいています
表向きに人を差別的に扱ったことはないけれど、自分に対して特に思いますね~。自分がルッキズムに囚われてるからこそ、相手からも同じように思われてるのかもしれない…と思ってしまいます。
どんなにルッキズムは良くない!と言われたとしても、見た目が良い人が得をしている場面に遭遇した人は多いんじゃないかな…?
ブスだからいじめられたとか露骨な嫌がらせよりも、お店とかで、前の人には「可愛いからオマケしちゃう」なのに、自分の番になったら無言だったとか、そういう小さいけれど「あなたは可愛くない」と知らせてくる出来事ってたまに遭遇します。
自分でも、ふとしたとき自分の顔を見て「わ~横顔ブス~」「どんなに整形しても骨格が終わってるな…」とか思うので、ユアフレンドを受け取った彼女たちのように「普通(の骨格etc)にしてくれ…」って気持ちはよくわかります。
自分のブスポイントなんて自分が一番わかってるのに、それをわざわざお知らせしてくれる人も結構いるんですよね~。
最近はあまりないけれど、学生の時とかは可愛い友人は声をかけられて、横にいた私はまるで空気のように背を向けられたってこともあります
ややこしいのが、ルッキズムって共通の物差しではないから、個人的な好みに左右されるんですよね。
日本と海外のモテる要素が違うように、人によって好みって違う。もちろん、誰がどう見ても絶世の美女みたいな人もいると思いますが、芸能人の中でも好き嫌いってありますよね??それが好みとかタイプだと思うんですが。
だから、ユアフレンドを受け取った犯人のように、どんなに客観的に見て、「え?別にブスじゃないし普通じゃん!むしろ可愛いよ!なんでそんなに悩むの??」って見た目だとしても、環境によってはルッキズムによる差別を受けてしまう。
”あの子”と比べて可愛くないね、とか。
逆に、ブスだとしても、自分の属しているコミュニティの中で、自分の容姿を好みだと思っている人が多ければ、ルッキズムによる差別を受ける機会は少ないと思います。
私はルッキズムって仕方ないとあきらめて普通に近づくために整形を数回した結果、やっぱり見た目で得することって多いなと身をもって実感しています
けれどどんなに整形したって、あの時言われたこと、あの時取られた態度の記憶ってずっと消えないんですよね~。
もし、多感な時期に誰にも容姿に関する差別とかイジりを受けなかったら、整形とかしなかったのかな~とも思いますが、ファッション誌・美容雑誌では山ほど「〇〇こそ美しい!」「〇〇はNG!」みたいなルッキズム助長ワードが載っているので、結局は整形してただろうな~
そんなユアフレンドのおまじないの一番皮肉なところは、自分には効かないってところ…
人の容姿の操作はできるのに、自分にだけは効かない。。。。
ユアフレンドのおまじないを作った姫埼麗美は、どんな願いをこめておまじないを作ったんだろう…。願いというか、憎しみなのか…。
人の容姿の操作をして、美人を醜くしてざまあみろという気持ちにさせるためのおまじないなのか、もしくは自分よりも醜い人が現れることで相対的に自分の容姿が”普通”に繰り上がることを望んだのか、もしくは…(ネタバレになるので書きません)
学生時代なんて、一番ルッキズムが蔓延るし、避けて通ることって難しいですよね。自分だって、美しい・かっこいい=善!!って思っていたし、今だってなんだかんだ思っているし。
見た目?大事なのは中身じゃん、ってみんながみんな言う環境だったら、自分もそう思えたかもしれないな~。
と、ちょっと色々と真面目に考えてしまいましたが、クラスメイトの誰かが犯人で、次は誰がおまじないをかけられるのか、もしかしたら自分かも…とハラハラするストーリーで面白かったです。
それに、誰がどうやっておまじないをかけたのかというトリックや、最後に暴かれるおまじないの正体も、非現実的ですがなるほど…と納得してしまいました