デートクレンジング
柚木 麻子
2021/05/24
★ひとことまとめ★
年を重ねて環境が変化し、友人との関係が徐々に変わってきてしまった全女性にオススメします
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
「私にはもう時間がないの」
女を焦らせる見えない時計を壊してしまえたらいいのに。
喫茶店で働く佐知子には、アイドルグループ「デートクレンジング」のマネージャーをする実花という親友がいる。
実花は自身もかつてアイドルを目指していた根っからのアイドルオタク。
何度も二人でライブを観に行ったけれど、佐知子は隣で踊る実花よりも眩しく輝く女の子を見つけることは出来なかった。
ある事件がきっかけで十年間、人生を捧げてきたグループが解散に追い込まれ、実花は突然何かに追い立てられるように“婚活"を始める。
初めて親友が曝け出した脆さを前に、佐知子は大切なことを告げられずにいて……。
自分らしく生きたいと願うあなたに最高のエールを贈る書下ろし長編小説。
【感想】
一言まとめに書いたように、年を重ねて環境が変わったことで、友人との関係も変わってきてしまった…という女性に強くお勧めします
周りの友達が結婚・妊娠・出産をしていって焦ってしまったり、親に「まだかな~」みたいな期待をされたり、そういった経験のある全女性におすすめしたいです
私自身が感じていたモヤモヤした気持ちが全て代弁されているような作品でした。読んでる間、何度も「そうなの…そうなの…」と心の底から同意をしながら読んでいました
家電メーカーの社員食堂で栄養士として働いていた佐知子は、社内恋愛ののち結婚。子どもが出来にくい体質と診断されたことで、妊活に取り組むため会社を退職し義母が営む喫茶店「ミツ」で働いている。
ある晩、夕食を食べに来ていた大学からの親友・実花が「本気で結婚したい」と言い出したことをきっかけに彼女との関係が少しずつ変わっていく。
男に評価されない女は無価値、好きじゃない相手とでも一人でいるよりはまし、そんな古いルールにNOを突きつける。女の人はデートをしない時期を意識的に作ろうというコンセプトの元結成されたアイドルグループ「デートクレンジング」。
もともとアイドル好きだった実花は、マネージャーとしてアイドルを育てる仕事をしていた。
男に媚びないスタイルを貫き、仕事命で結婚とはまるで無縁に思えた実花が、婚活沼にはまり小手先の婚活テクニックで男に取り入ろうともがいている。
そんな実花を見て佐知子は冷静になるようそれとなく諭すが、「結婚をし、安住の地を見つけた側の人間」と思われてしまい彼女との関係はギクシャクしてしまう。
結婚したら、世の中から認められるのか?
自分を押し殺してまで婚活をするべきなのか?
結婚に向いていない、結婚をしないという選択はしてはいけないのか?
結婚をしてしまったら、出産してしまったら、そうではない友人との仲はあきらめなくてはいけないのか?
昔に比べて多様な生き方が受け入れられている現代でも上記のような問題は残っていて、「適齢期」の女性たちはぶち当たることになる。
佐知子は実花と昔のような関係に戻れるのか?
幸せとはいったい何なのか?
そんな内容が書かれているお話です。
以下私が首もげるほど頷いた文です(多いです)
・私だって焦っている。きっと安住の地なんて、本当はどこにもないんだよ。仕事で成功しようが、結婚しようが、子供を産もうが。(P47)
・命短し恋セヨ乙女。誰が決めたの?女性は長寿と決まっているのに。(P53)
・努力しろ、焦れ、期限を忘れるな、の大合唱。でもさー、そうやって散々急かした人ほど、結婚する時、大して祝ってくれなかったし、バツイチになった時は腫れ物に触るみたいに目も合わせようとしないの(P57)
・ただ単にたまたま、お互いの今の環境が違うっていうだけです。既婚者になったら、問題全部解決だなんておかしくないですか(P72)
・実花を救いたいが、実花が求めるものは女の世界の外にあるものだった。それをやめろ、という権利は既婚者の自分にはない。これまで二人で過ごした日々が無意味だったのではないかという不安に押しつぶされそうだ。
わかるのは彼女を「無理しないで」と説得し、「ありのままのあなたでいい」と安心させるだけの力がまるでないということ(P80)
・独身の親友が差別されているのを見るのが嫌だし、既婚者の自分も差別されたくないし、する側に回りたくもないんだろ。そんなの関係なく実花ちゃんとずっと友達でいたいってことだろ(P82)
・自分が向き合っているのはよく世間では、くだらないとされている、スルーするのが常に正解、つまりスルー出来ない人間にすべて問題があるとされる、女同士のちょっとした行き違いやゴタゴタのはずだったのに。(P83)
・誰もが結婚や妊娠を境に、友情に隔たりが出来るのは、ごく当たり前の、避けられない仕方がない事態と捉えているようだった。腹の周りに時限爆弾かダイナマイトでも巻きつけているような気さえする。そんな風に感じるのは、良い母親にはなれない証拠なのだろうか。
そっとお腹を撫でてみても、育児エッセイに書いてあるような、揺るぎない熱い何かが湧き上がることは無い。(P90)
・問題は私の中にあるの。私、どうやっても、異性と上手く付き合えない。いいと思ってくれる人もいるにはいたけど、私の内面を知るとすぐにうんざりする。私自身、心から好かれたいとは思っていないのかもしれない。(P111)
・男と違って、女は環境が変わったら、これまでの友達はあきらめなきゃいけないんだよ。環境が似たもの同士じゃなきゃ、女は仲良くなれないようになっているんだから(P114)
・いつになったら、私たちはタイムリミットから解放されて手を取り合うことができるんだろう。(P116)
・みんないろいろある。何も考えないでボンヤリ暮らしている人って、意外といないのよ。(P125)
・もう、私たち、こんなレースからは降りるべきなのではないか――。世間の呈する規範に自分を寄り添わせる限り、一生焦り続け、常になんらかの活動中ということになる。(P150)
・婚活とか、保活とは、終活とか・・・。準備しないとひどい目に遭うぞってせっつかれている割には、全部数年先をゴールにしての、短期集中のレースでしかないよね。(P166)
・さっちゃんがお母さんになったら、もう今度こそ、私の出る幕なんかないと思って焦った。私がさっちゃんに出来ることなんて、なくなった気がしたんだよ。でも、私は私で、これまで身につけた何かを使えば、きっと力になれる部分もあるはずなんだよね。やってみる前から、なーんであきらめてたんだろう(P207)
・たとえ、離れる時期があっても、ああいう瞬間を一緒に過ごせたもの同士は、また必ず引き合うように出来てるの。保証する(P224)
この作品を読んで、私は社会人になってから、自分自身で勝手に既婚と未婚の差別を生み出していたのかもしれないなと思いました
彼氏がいないとダメだよね。結婚した友人とはこれまで通りの付き合いはできない。出産した友人はきっといままでの友情なんて忘れてしまって、新しい友人を作って楽しく過ごすんだろう。だって、そういう話、よく聞くしね。
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どれも、結婚した友人から直接言われたわけでもないし、自分がもし出産したらいままでの友情を忘れるか?捨てるか?って考えたらそんなことはないのに、本当に、勝手に、ずっと苦しんでいた気がします。。。
彼氏ができたとしても、結婚できてないからダメ、結婚できたとしても子どもがいないからダメ、というように、どんな自分にもダメ判定をしてばかり。。。
条件付きの、〇〇だから幸せ、なんて一時的なものでしかないし、そうでない場合のほうが多すぎてしんどい期間のほうが長いに決まってるのに。。。
先日、久しぶりに友人達に会いました
それぞれ環境はバラバラで、結婚はしているけど子どもはいない友人、出産して子どもがいる友人、仕事に力を入れていて彼氏もいまはいない友人。
けれど、会えばそんな環境の違いなんて忘れてしまうほど盛り上がり、話す内容は変わっても、本質はみんな学生時代から変わっていない。
なんか、本当、自分は何を勝手に悩んでいたんだろうかと思った瞬間でした
環境が変わったらその人自身も別人のように変わってしまうなんて、どうして思ったんだろうな~。
もちろん関係が変わってしまう人たちもいるだろうけれど、私の友人達はそうではなくて、改めて友人達に対して感謝の気持ちが湧き上がってきました
環境が変わったら友情が終わっちゃうなんて、そんな風に勝手に疑ってしまってごめんとも思いました
「適齢期」は、生物である以上仕方ないとは思うのですが、これこそが女性を苦しめている原因だと思うんですよね~。
〇〇歳を超えたら〇〇だ、って言ってくる人の裏付けのようで嫌なんですよね。
何歳で結婚しても良くて、何歳でも出産ができるようになれば、こんなにとやかく言われることもないのにな、って思います。
生物である以上仕方ないですけどね。ピークがあって、そこから下向していってしまうのは、寿命がある以上仕方がない。そこを色々と人間の手で変えてしまうことは、神(?)に反するような気がします。触れてはいけない領域のような気がする。
別に、こういう風潮を変えていこう!!!ってほど大きな目標ではないけれど、自分の中にいままであった差別心・固定観念を変えていこうと思いました。
結婚しててもしてなくても、子どもがいてもいなくても、みんな、ありのままでOK100点
えらい
って思えるようにしていこうと思いました
一度でもこういったことで悩んだことのある女性には本当におすすめの本なので、ぜひ読んでみてほしいです。