42冊目:昨日の海は | 【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

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昨日の海は

近藤 史恵

2021/06/01

 

 

 

★ひとことまとめ★

祖父母の心中事件の真相を探る虫めがね

 

 

 

 

↓以下ネタバレ含みます↓

作品読みたい方は見ないほうがいいかも

 

 

 

【Amazon内容紹介】

いつも通りの夏のはずだった。その事件のことを知るまでは……。
海辺の小さな町で暮らす高校生・光介。夏休みに入ったある日、母の姉・芹とその娘の双葉がしばらく一緒に暮らすことになった。光介は芹から、心中と聞かされていた祖父母の死が、実は「どちらかがどちらかを殺した」無理心中事件であり、ここで生きていくために事実をはっきりさせたい、という決意を聞かされる。カメラマンであった祖父とそのモデルも務めていた祖母。二人の間にいったい何が起こったのか。


残された写真が語るもの、関係者たちの歪んだ記憶、小さな嘘……。そして真相を追う光介が辿り着いた、衝撃的な事実とは……。
『サクリファイス』『タルト・タタンの夢』などで話題の著者が、海辺の町を舞台に、青年のひと夏の冒険と成長を描く、切なくてさわやかな青春ミステリー。

 

 

【感想】

シャルロットの憂鬱が良かったので、また近藤さんですひらめき電球

 

海辺の田舎町で暮らす主人公の光介。光介の家の半分は、亡くなった祖父が営んでいたカメラ屋で、長いこと物置となっていた。

祖父母はともに海で溺れ、若くして亡くなっていた。母が言うには、ただ溺れたのではなく心中したのだと言う。

会ったこともなく遺影でしかその姿を見たことがない光介は、特に興味を持つこともなく日々を過ごしていた。

 

そんなある時、伯母・芹、その娘・双葉が東京からやってきて共に暮らすことになった。芹は祖父母が亡くなった後、母を学校に通わせるために東京に出て仕事をしていたが、双葉との時間を優先するために戻ってきたのだと言う。

 

光介は芹から、祖父母はただの心中ではなく、どちらかがどちらかを道連れにした、無理心中だったことを教えられる。一人が一人を担いで海に入るところが目撃されていたが、遠く且つ後ろ姿だったのでどちらかまではわからず、またどちらからも睡眠薬が検出されたため表向きは心中で片付けられたのだった。

祖父母が死んでしまったため、芹と母は親から捨てられてしまった。しかし、どちらか一方は死ぬ気がなかったのであれば、どちらかには捨てられたわけではないということになる。

どちらがどちらかを道連れにしたのか、なぜ殺さなければいけなかったのか。

芹とともに調べていくうちに、真相が少しずつ明らかになっていく…

 

 

 

もし自分が生まれる前に祖父母が亡くなっていて、写真でしか見たことがなければ、その人たちと血がつながっているというのも実感が沸かないですよね。

それに、自分の母親もあまり祖父母について話さなければ、もうほぼ他人ですよね。どんな人だったのかもわからない。

そんなほぼ他人状態から、祖父母を知る町の人の話や祖父の遺した写真などから、少しずつ故人について紐解いていくというのは、難しい作業だなと思いました。

当事者はすでに亡くなっちゃっているので、本当の真相を知っている人はどこにもいないわけです。

周りの人の意見だって、その人の色眼鏡もあるわけで、事実かどうかはわからない。

 

光介はある証拠を元に、芹にどちらが無理心中を実行したのか伝えますが、それももしかしたら違う可能性もある。

けれど、遺族(芹や光介)が自分を納得させるには十分な証拠ではありました。

 

心中は究極の選択だけれど、娘のヌード写真が世に公開されると考えたら、母親は止めたいでしょうね…。

ちなみに気になって調べちゃったんですが、ヌード(芸術)と公然わいせつ罪(犯罪)ってどう違うのかなと。

この作品の場合だと、未成年の娘をヌードモデルにして写真を撮って、本人・家族(母親)の了承を得ずに公開しようとしていたわけですが、今だったらなんらかの犯罪になりそうだな~と考えてしまいました。

 

私の祖父も生前カメラ屋を営んでいたので、記憶の中の、まだカメラ屋として営業していた当時のお店の姿を思い出しながら読んでいました。

私が大きくなった時には看板は出していたけれどほぼ閉店状態でしたが、子供のころは現像用の機械や暗室、証明写真を撮るスペースなどがありました。商品ケースには商品も並んでいて、カメラの現像をお願いに来る近所の方がちょくちょく来ていた記憶があります。

 

たしかに、あの時あのお店は”生きてた”ように感じます。商店街も活気があって、お客さんも来るし、休みは娘息子一家(孫の私含む)で賑わう。

けれど、店主たちが年を取ったことで商店街も寂れてきて、私の祖父母も例外ではなくお店をたたみ、祖父母が入院するようになってからはお店(家)は”死に”ました。

光介の家と同じで、家にはシャッターが閉まっています。もういまは機械もショーケースもなにもありません。がらんとした物置スペースになっています。

 

話は変わりますが、祖父母について詳しく知っている人って、どのくらいいるのかな?と感じました。

父母についても、もしかしたら彼らが父母になる以前のことは知らない人が多いのかもしれない。

どこで生まれて、どんな学生時代を過ごして、どうやって父・母と出会ったのか?

祖父母はどんな人だったのか?何が好きで、どんな人生を送ってきたのか?

そういったことを聞けないまま、知らないまま、亡くなってしまってもう聞くことができないというのは寂しい感じがしますショボーン

 

かく言う私も、祖父母がどんな人生を送ってきたかなんて子供の頃は気にしていなかったです。祖父が病気で亡くなって初めて、「あ、もうおじいちゃんに直接色々聞くことはできないんだ」って気が付きました。

お葬式のときに親戚の方たちが集まって、祖父が若かった時の話をしているのを聞いて、初めて祖父がどんな人生を送ってきたのかを知りました。

社会人になってからは、よりいっそう色々話を聞いてみたかったな~と思うようになりました。

祖父母のやっていた仕事について、大変だったこと、人生における座右の銘みたいなものとか、聞いてみたかったな~。

 

もしまだ、祖父母がご存命の方は、いなくなってしまう前に色々彼らの昔のこととか聞いてみるといいんじゃないかなと思います。一番身近な、血の繋がった人生の大先輩ですしねひらめき電球