ぞぞのむこ
井上宮
2020/09/02
★ひとことまとめ★
もしも本当にこんな町があったらぞっとします…
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
電車を乗り間違え、見知らぬ町に降り立った島本。部下の矢崎は「すぐに離れたほうがいいですよ。ここは漠市です」と訳のわからぬことを言う。しかし先を急ぐ島本は、漠市を通り抜けてしまい……。謎の町・漠市にまつわる5つの不条理ホラー。【感想】
もうすぐ夏も終わりますが、まだまだホラーが読みたくて



架空の町、”漠市”に関わった人々が、ことごとく不幸になっていく話が5話収録されています。どのお話もタイトルがひらがなでつけられていて、一見意味の分からない単語なんですが、読んでいくとその単語の意味も「なるほどな!」とわかるようになります。
・ぞぞのむこ
部下の矢崎と取引先に謝罪に向かう途中、”漠市”に通りがかってしまった島本。矢崎いわく、「漠市はよくない地域」だという。
そんな話をしていると、彼らの前に唐突に女の子が飛び出してきて、転んだ。島本は女の子を抱き上げて助けると、彼女は礼も言わず走り去ってしまった。
たったそれだけのことなのに、矢崎にしつこく「家に帰る前に手を洗え」「石鹸で洗え」と忠告される。
矢崎からの忠告をすっかり忘れ、自宅に帰ってから手を洗った島本。すると翌日から不思議なことに偶然や幸運が立て続けに起こる!!
なんと、家の前に別れた元カノ・のぞみまで待っているではないか!!のぞみと一晩を過ごす島本。
翌日、のぞみを家に残し出社するも、外で偶然のぞみに再会する。昨日のことを思い出しつつのぞみに声をかけるも「二年ぶりかな?」と言われてしまう。それでは、昨日家にあげた女は誰だったのか…?
ぞぞ の 婿 ってことですね。幸せだったのはぞぞのおかげだったのかな?束の間の幸せから、不幸に急落させて、ストレスをためさせて暴力性を増すようにすると…。殴られれば殴られるほどぞぞは増殖するわけで、そうやって増えていくのかな???
ぞぞの狙いはなんなんだろう?繁殖だったのかな~
・じょっぷに
大学生の蕗子は大学の準ミスで交友関係も広く、はたから見れば順風満帆にしかみえない。しかし彼女は定期的に万引きをしないと心の平穏が保てなかった。ある時、彼女は知り合いに会わないよう、大学からも遠い漠市に万引きに出かける。そこで彼女は2軒の文房具屋を見つけ、繁盛している方の店に入り、ハサミを万引きする。
しかし、同じ大学の矢崎に万引きを見られてしまい、素知らぬ顔でハサミを戻す蕗子。矢崎が止める声を無視し、仕方なくもう1軒の文房具屋に入るが、そこには誰もいない。客も店員すらもいない。並んでいる商品はすべてハサミ!そしてそれらはすべて、先ほどの店で蕗子が万引きしたものと全く同じものだった。
気づくと蕗子は1つのハサミを持って店を出ており、返すよう忠告する矢崎の声を無視して帰宅する。
それから蕗子はじょっぷにという不思議な音を聞くようになる。不気味に思った蕗子はハサミを返しに再度漠市に行くも、そこには文房具屋は1軒のみ。蕗子がハサミを持って帰ってきた文房具屋はどこにもなく、代わりに小鳥屋があるのみだった。
とうとう気味が悪くなった蕗子はハサミを捨てるが、何度捨ててもハサミはカバンの中に戻ってきてしまう…
はさみってジャッキンとかジョキジョキじゃない??って思っちゃった笑
切りたくて切りたくて仕方ないハサミって感じ。人間を操ってでも切らせようという。。。
夜道、ハサミジャキジャキしてぶつぶつ言ってる女の人が立ってたら本当に怖いだろうね。絶対に見つからないようにしないとと思っちゃう。。。
全然関係ないけど、本文の中に私のお客様の社名(ブランド名)が出てきて偶然を感じました

・だあめんかべる
田村の働く介護施設ではカリスマ介護士と呼ばれる彩野がいる。彼女がいるユニットではトラブルもなく、夜勤でもまったく問題が起こらない。彩野のユニットでは、緑色の毛の生えた小さな謎の玉を愛でていた。矢崎はそれをトーロプだと言う。そして、彩野は漠市の人間だとも。
彩野のカリスマ性に疑問を感じた田村は、こっそりと夜の施設に忍び込む。そこで目にしたのは、あのトーロプを愛でる入居者たちの姿だった。あるものは好きな相手の名を呼び、またあるものは亡くなった娘の名を呼ぶ。
異変に気が付き駆け付けた彩野にバレた田村は、トーロプについて彩野に問い詰める。トーロプは漠市で伝わる、認知症などの症状が出た際に持たせるものだという。そうすることで、不思議と落ち着きを取り戻すという。ただ、トーロプは注意して扱わないといけなくて…という彩野の注意に耳も傾けず、田村は彩野を脅し、翌日からどうどうと入居者にトーロプを使わせるようになる。
彩野の代わりに田村がカリスマと思われるようになったころ、ふと気が付くと入居者に与えたトーロプがスイカほどのサイズに大きくなっていた。そして、緑の毛も抜けてきて…。
いや~恐ろしいね。なにが恐ろしいって、脳は認知症の症状が出たままなのに、体は若返ってしまうってこと。私は介護した経験がないので、認知症の祖母のお見舞いの時のことくらいしか思い出せないけれど、高齢だとしてもぶたれたりつかまれたりすると結構な力なのに、体が若返って認知症って、、、、。
田村の場合もそうだけど、日々の介護に疲れが出て、何とかおとなしく過ごしてくれないかって思ってトーロプを与えるわけで。にもかかわらず、どんどん体は元気になっていってしまうという。元気になるのはうれしくても、脳はそのままなのが本当にきつい。。
・くれのに
矢崎の友人・三池は、同じく友人の吉岡との帰り道、漠市に設置されてあった賽銭箱に誤ってお金を入れてしまった。漠市ではお金を払ってはいけないと言われているのに…。と考えているうちに、祠からクレとノニと書かれた白黒の人フィギュアが飛び出してきた。驚きながらも祠にフィギュアを戻す二人。
吉岡と別れ一人になった三池は、家に帰る前に手を洗おうと帰り道の途中の水道に立ち寄る。石鹸で洗えと言われていたが、見渡す限り石鹸はどこにもない。冗談のつもりで”石鹸を出してくれ”と思ったところ、急に石鹸が空から何個も降ってきた。道に散らばった石鹸に驚いていると、やってきた酔っ払いの中年男性に石鹸泥棒と勘違いされ絡まれてしまう。”痛い目にあえばいいのに”
そう願った後の記憶はなく、気が付くとどうやら部屋で寝ていたようだ。面接だったことを思い出し、慌てて支度をするも、乗るべき電車が間もなく出発してしまう。”電車、待ってくれ”と願ったところ、運よく電車の発車が遅れていたためなんとか面接に間に合う。
面接では2人の面接官からは好印象を持たれるも、1人の面接官から悪い印象を持たれてしまい、失敗に終わってしまう。”あのおっさん、いなくなればいいのに”
そう考えたあとの記憶はやはりなく、気が付くと三池は自室にいた。ファスナーが開いているバッグを見てみると、そこには血の付いたスパナが…。そしてテレビでは、あの面接官が襲われたというニュースが流れていた…。
〇〇だったらいいのに~、〇〇してくれ(なかなか”くれ”って言わないけど)を意識して考えないようにするって難しいよね。希望が一つ叶えば、その代わりに呪いをかけなければいけない。。。ちょっといらいらしたときに、どっかいってよ!とかが願いとして(呪いとして)叶えられちゃうのは困るなあ。。。人に呪いをかけるのが嫌だから、自分に呪いをかけるせいでどんどん体が欠損していくのも…。。
クレノニとお別れする方法はないのだろうか…。。。
・ざむざのいえ
娘の亜美が突如行方不明になってしまい、捜索し始める貴子。
調べているうちにどうやら娘はいじめられていたらしいということを知り、いじめの主犯格らに会いにいく。彼女らに娘の行方を尋ねると、漠市にある”ざむざの家”に一緒にいき、亜美だけがざむざの家に入ったという。亜美がいつまでたっても出てこないため亜美を置いて帰ってきたと言われ、貴子はざむざの家に向かう。
ざむざの家に向かう途中、若い男性に「ざむざの家には近寄らないほうがいい」「娘さんのことは諦めたほうがいい」と忠告されるも、無視。
ざむざの家は塀で囲まれており、入れるような場所は見当たらない。塀に穴が開いていることに気が付き、中を覗いてみるも中には特に家のようなものもなく、ただの空き地のようだ。覗いていると、娘の持っていたマスコットが目に入り思わず手を伸ばす貴子。すると何者かから急に腕をつかまれ引きずり込まれそうになるも、途中で出会った若い男性に助けられる。結局亜美を見つけることはできなかったが、男性から渡された漠市でしか買えないという殺虫剤を持ち、急いで迎えを待つ息子の元に向かう。
家に入る前に手を洗うよう忠告されたが、すっかり忘れて家で手を洗っているときに顔を上げると、横にはいなくなったはずの亜美が立っていた。声をかけるも、いつもの亜美とはどこか様子がおかしい…
ざむざという意味はよくわからないままだったので調べました~。どうやら、フランツ・カフカの「変身」という小説からきているのかな?主人公のグレゴール・ザムザは、ある日朝起きると巨大な毒虫になってしまうというお話。
ざむざの家も、行っただけで虫に食いつくされて中身が虫にされてしまうわけだけど、不条理すぎるよなあ…。虫になってからいじめっ子たちに復讐はするけど、亜美は人間に戻るわけでもなく虫のままだし…。皮膚の内側で虫が蠢く想像をするだけで気持ち悪くなる

行っただけで、触れただけで不幸になるって本当に恐ろしい街だな~。日本のどこかにも実際そういうところってあるのかな~怖くて行く気はしないけれど。
そんで、そんなところに住んでも全然平気な矢崎は何者なんだ…。漠市のアタサワでさえ避けて通る男…。