アンソロジー 嘘と約束
アミの会(仮)
大崎梢・近藤史恵・福田和代
松尾由美・松村比呂美・矢崎存美
2020/02/10
★ひとことまとめ★
嘘に絶望し、約束に救われます。
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
破られない約束はない。ばれなければ嘘ではない──。これは、人生のスパイス。様々なアレンジで、お目に掛けます。実力派女性作家集団による書下ろしテーマ・アンソロジー。毒が含まれています。少しずつ、お読みください。【感想】
久しぶりのアミの会(仮)
・自転車坂(松村比呂美)
サラリーマンの圭一は、住宅街の細い坂道を自動車で下っている際に自転車に乗った学生と接触事故を起こす。学生が自分の不注意が原因だと言ったため、警察には届け出なかった圭一。念の為社名と名前を告げ別れたが、出社後会社に来た警察官から「ぶつかった相手から被害届けが出ている」ということを聞かされる…。
圭一、ぶつかった学生、ぶつかった学生の友人のそれぞれの視点のお話になっています。どんなに見かけ上相手に怪我がなかったとしても、絶対警察に報告しないとだめですね…
・パスタ君(松尾由美)
転校生の蓮田君は、小柄でいかにも勉強ができそうな感じなまじめな見た目の男子。しかし、自己紹介の際にパスタが好きだと言ってからわかりやすい嘘をつくようになる。パスタが好きすぎて名字を蓮田に変えただったり、家の蛇口からはトマトソースがでるなど…。彼はなぜそんなわかりやすい嘘をつくのか？
子どもの想像力は豊かだけれど、こんなふうにお父さんと推理を繰り広げる小学生っているのだろうか…？
・ホテル・カイザリン(近藤史恵)
近藤さんのお話は美しい感じで好きです
静謐なホテル・カイザリン。ここに滞在している間だけがわたしが自分らしくいられる時間だった。外界から隔てられた、さほど広くない部屋で、わたしはようやく自分を取り戻すことができた。わたしはいつだってひとりだった。夫といるときも、他の誰かといるときも。ホテル・カイザリンにいる間だけは、少しだけ
息がつけた。
けれど、わたしはホテルに火を付けた。ホテルがなくなればいいと思ったから…
なぜわたしは、唯一の落ち着ける場所であったホテル・カイザリンを燃やさねばならなかったのか？というお話しです。
自分の人生を自分で選べないというのは辛いよね。罪は罪だけれど、自分の人生を自分で初めて選択できたことは、良かったのかもしれない…。
・青は赤、金は緑(矢崎存美)
猫嫌いの渚の交際相手には猫好きな連れ子・雪穂がいる。ある日雪穂にだされた「青は赤、金は緑」というなぞなぞが解けず、猫を飼っている友人の深里に相談するも、自分の不在の間猫の面倒を見てもらえないかと逆に相談を持ちかけられる。
猫嫌いであることは深里にはずっと隠していたため、いまさら言い出すこともできず、渚は深里が不在の間猫の面倒をみることになった。
まあ猫に関するナゾナゾってことだったわけです。けどなんだかなあ…死にそうな病気とかお話に絡めると急に気持ちが萎えて来てしまうのはなぜなんだ…
・効き目の遅い薬(福田和代)
このお話が今回のアンソロジーのなかで一番好きでした！
大学の頃の友人・もっさんに頼まれ、惚れ薬を作ってあげた私。もちろん偽物であったが、意中の人と付き合えたことで、惚れ薬は本物であると信じ込まれてしまう。
一度きりだと約束したにも関わらず、もっさんはなにかあるたびに惚れ薬をまた作って欲しいと頼むようになってしまう。
皮肉な話なんだよな～これは読んでほしい。あとミスリードするように構成されてるから、始めはまんまと間違えました
最後まできちんと読めば、タイトルの意味もわかるという…
・いつかのみらい(大崎梢)
編集プロダクションで働く晴美。勤務中、身辺調査などを行うリサーチ会社の菜々子から声をかけられ、晴美が子どもの頃近所の女性にあげたはずの絵が行方不明の女性の家で発見されたことを告げられる。
晴美は行方不明の女性とは面識がなく、菜々子とともになぜ自分の絵が彼女の家で発見されたのかについて調べ始める。
ほんとうにこんな、替え玉・なりすましみたいな話があるんだろうか？自分が過去親しくしていた人が実は全くの偽物だったというのはかなりショックだなあ…。しかも気づかなかったけれど押し入れには遺体がありましたとか嫌だ…。
どのお話もどうしてもあらすじだけだと嘘しか書けない～
作品を最後まで読めば約束もわかるようになっているので、気になる方は読んでみてください
特に「効き目のお遅い薬」は皮肉も効いていてストーリーも面白くておすすめです
