結婚
井上荒野
2019/07/06
★ひとことまとめ★
結婚詐欺…ダメ絶対…
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【内容紹介】
結婚願望を捨てきれない女、現状に満足しない女に巧みに入り込む結婚詐欺師・古海。だが、彼の心にも埋められない闇があった……。父・井上光晴の同名小説にオマージュを捧げる長編小説。
【感想】
小説が読みたくなったので
これまた前情報なしで読んだので、この作品が作者のお父さんの作品のオマージュということも知らず…
お父さんの作品も読んでみようかな!
前情報なしで読んだので、なんかハッピーな結婚のお話かな?最近精神的にしんどかったし、幸せな小説を読んでハッピーな気持ちを補充しようと思い、読み進めていき、ほらやっぱり結婚する幸せなお話だ~!と思っていたのが、この文で打ちのめされました
・だって私は、頭金となるお金を鳥海に渡したのだから。今日中に金を入れておかないと、押さえておけないんだ、僕の金は今動かせないから、悪いけど貸してくれないか、あるだけでいいから、と鳥海が言ったのだから。(P23)
えっ…これはもしや…
宝石商の古海健児は、妻がいながら結婚詐欺師として場所を変え名前を変え、様々な女から金をだまし取っている。
騙された女たちと、古海、そして古海の妻・初音などのパートで話は進んでいく。
エンゲージリングといいながら、実はイミテーションの指輪を女に渡し(しかも金は女持ち!!!!)、二人の住まいのためと言い頭金も奪う…。とんでもない男です。
けれど、そんな古海も古海で、嫁の初音が不倫をするのではないかと怯えていたり、もういっそのことバレてしまえというようなあきらめも持っているように感じる。
運命の出会いのように思わされ、彼に騙され、お金を奪われていく女性たち…。彼がまさかいなくなるはずないと思いながらも、心の中ではおそらく自分は騙されたと悟る気持ちは、本当に胸がえぐられるよね…
彼のおそらくはじめての「客」であったるり子は、彼を繋ぎ止めておくために夫を捨て、親戚も捨て、彼の金のために女を調達するようになった。るり子によって、古海と運命的な出会いのように演出された出会い方をして、そして騙されていく…。
古海と結婚するために妊娠した嘘をついた初音。古海の留守中にかかってくる女(たぶんるり子?)からの電話で、古海の本性を知った。それでもなにも知らないフリをして結婚生活を続ける初音。
ハッピーな結婚のお話かな?と思っていた自分…
結婚詐欺師、金銭的なところまで行かなくても結婚する気がないのに結婚するする詐欺で女の貴重な時間を奪う男、もうそろそろかな?と思ったら「俺は結婚する気ないよ?あれ?言ってなかった?」とか言うような男、みんな撲滅してくれ!!!!
デスノートがあったら私が名前書くよ…それくらい人の気持ちを踏みにじる行為だよね。
でも、お金の話を持ち出された瞬間に「あ、これは」と思うべきでもあるよね。しかも古海の場合は出会って何年とかで金銭求めるんじゃなくて、割と早いタイミングだし。
お金の話はホント駄目だよ…友達でも縁切れちゃうことあるんだから、素性の知れない男になんてなおさらダメだ…
ここで私のグサグサ来た文を載せますね…
・鳥海という男はじつはどこにも存在しないのではないか、そもそも最初からいなかったのではないか、というばかげた考え。(P12)
→これ付き合ってる彼氏に対して、特にあまり連絡しない人とかに対して思っちゃうこと多いんだよね。この世にいないんじゃないか?夢の話だったのかもな?とか。これが進行すると、別にいなくても平気だわで別れることになります…
・今、私のそばにたまたま鳥海がいないというだけのことなのだ。(中略)鳥海が戻ってくれば、こんな気分は簡単に裏返ってしまうだろう。(P13)
→これもわかる。メンヘラかよって感じだけど、連絡とか来れば、存在しないのでは…?いなくてもいいのでは…?って気分も消えるんだよね。メンヘラ…?
・ふつうにしか生きられない人間には、ふつうなことしか起こらないから、ますますふつうになるしかない。おいしいものを食べたら「おいしい」としか言えないし、きれいな景色を見たら「きれいね」としか言えない。夏が来たら暑いと思い、冬が来たら寒いとしか思えない。(P17)
→わかる!!「なんかもっと感想ないの?」とかいう人いたけど、何を言えばいいのか???「芳醇な味わいで濃厚な○○が醸し出す…」とかか???感受性も語彙力も並しかないから、美味しい~!楽しい~!でしか表現できないんだが。。。
・この男と寝てしまったのは運命だったと女に思わせる舞台装置は、ごく丁寧に作ってやることが肝要だ。(P56)
→詐欺師側の気持ちがよくわかりますね…勉強になります
運命…?って思わせて落として金を巻き上げると…
・男と不動産は似ている。(中略)条件ではないのだ、いいところと悪いところを秤にかけて迷うのではなく、そんなこととは無関係に「これしかない」と思える物件を手に入れるべきなのだ。ただそうやって選んだつもりでも、失敗するときには失敗する。(P74)
→ほんとね…自分にとってのこれしかない!でも、相手からもこれしかない!と思われてるかはまた別だし…つら…
・あの白樺の家の主婦と私のどこが違うというのか。どうして彼女は白樺の家に住み、私は今夜もこんなところで唇を赤く塗っているのか。(P83)
→これ最近思うようになったなあ。中学の時、高校の時、さしてみんなと変わらなかったはずなのに、どうしてその中でも結婚して幸せに暮らしていう人と、かたや私みたいに結婚の予定もなく、自尊心もペラペラみたいになっちゃったのかと。
どうしてあの子はうまくいって、私は全然だめなんだろうとか。そんな意味のない比較をして惨めになってくるんだよね~
出てくる人みんな心のどこかに穴が空いているような人たちで、嘘をつき合って関係を成り立たせている感じがして、虚しくなってきてしまった…
決して話がつまらないということではなく、出てくる人みんなが虚無感を抱えている感じなのよ…依存している感じかな。
私の想像していたハッピーなお話とは対極に位置する作品でした