38冊目:毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記 | 【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

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毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記

北原みのり

2019/06/23

 

★ひとことまとめ★

まさに毒婦

 

 

↓以下ネタバレ含みます↓

作品読みたい方は見ないほうがいいかも

 

 

 

【内容紹介】

男たちはなぜ、だまされたのか――

肉体と結婚をちらつかせて男たちから1億円以上もだまし取り、
3人の男を練炭で殺害したとして死刑判決を受けた木嶋佳苗被告。
100日に及んだ裁判では、彼女のファッションまでもが話題となり、
自身のセックスについて赤裸々に語ったことで、日本中が騒然となった。

「稀代の婚活詐欺師」「平成の毒婦」と呼ばれた木嶋被告とは、どんな人物なのか。
決して美人とはいえない容姿で、何人もの男を手玉に取れた理由とは。

裁判の傍聴に加え、故郷・北海道別海町や事件関係者への徹底した取材を通して
木嶋被告の内面に迫った渾身の一冊! 

「佳苗のことを考えていると、色んな風に考えが広がる。女と男のことを考える。女目線、男目線の違いを考える。私たちは、男に何を求めているのか。なぜ、男たちは佳苗に苛立つのか。ある種の女たちは佳苗に惹かれ、ある種の女たちは、佳苗を憎むのか」――本書より


目次

第1章 100日裁判スタート

やばい。私、振り回されてる
だまされた男たち
セックスをする男、しない男
整形よりベンツ、ダイエットより料理教室
佳苗が男にあげたもの
佳苗ガールズ

第2章 佳苗が語る男たち

「名器」自慢に法廷内パニック! 
本命の男たち
ふつふつと湧く耐え難い嫌悪感
光がない佳苗の瞳
女性検事VS.佳苗
ついに死刑求刑

第3章 佳苗の足跡をたずねて

初めての罪
母との葛藤
佳苗が見た東京

第4章 毒婦

判決
毒婦。

 

 

【感想】

失礼な話だけど、なぜ絶世の美女というわけでもないのに、男性たちは彼女にお金を貢ぎ、そして疑わずに殺されていったのかが疑問だったんだよね。

どうやって彼らを騙していたのかなと。

 

逮捕当時彼女は34歳で、インターネットで知り合った男性たち、計10人から総額1億円以上のお金を受け取り、そのうちの男性3人は不審死を遂げていた。(起訴対象が3人で、疑惑は6人みたいです。)

 

彼女の手口は、婚活サイトで「結婚に対して本気であり、料理が得意で、あなたの運命の人は私」というような内容のプロフィールを書き、結婚をしたいと本気で考えている男性を釣るというもの。

 

さらに驚きなのは、男性からメッセージが来ると「金銭的支援を求める」「本気なので肉体関係も可」という核心をつく内容を速攻で送るということ。徐々にコミュニケーションを取ったあとではなく、初っ端に。

こんなの初っ端から送られてきたら、結婚詐欺だなとか、怪しいなと思わないか?と私は思ってしまったけれど、自分の容姿を卑下することもなく、堂々と真面目に正面から相手の心を打つような強引さがあると、むしろ信用してしまうのか…?

 

本命の彼氏もいたようだけれど、彼に対しては名前や出生や家柄などすべて詐称し、お金持ちのお嬢様という設定で約10年間関係を続けていたらしく、その彼からは一切お金は奪わず、定期的にデートを重ねていたみたい。

けれど、本命の彼氏が結婚を匂わせてもそれにはっきり答えることはなかった、と。

それは彼がモラハラ気味だったこともあり、結婚にふさわしくないと感じていたかららしいんだけれど…自己肯定感ほんとすごいな…彼がモラハラだと言う前に、自分はどうなんだい…人殺しているのに…ガーン

 

もちろん、メッセージのやりとりで金銭的な要求がでてきた時に、「これはおかしい」と指摘したり、上司から結婚詐欺だと言われて「結婚詐欺ですか?」と指摘した方もいたみたいだけれど、その方もなぜか佳苗に謝りまた連絡をしてしまう…。

それまでの佳苗のやりとりが思いやりに満ちていて丁寧なものだったからこそ、まさか彼女に限ってそんなことはと思ってまた連絡してしまったらしいんだけれど、佳苗から返事はなかったという。警戒していたんだろうねスライム

 

みんななんとなく共通しているのは、まさかこの人が結婚詐欺などしないだろうという望みみたいなものと、いずれ結婚して家族になるんだし金銭的援助くらいしてあげよう…という部分かなあ。

会えばとても美味しいフルコース料理などを振る舞ってくれて、上品さがあって、ピアノも上手で、可愛らしい声であなたが運命の人ですと言ってくれる…(そして積極的な肉体関係滝汗)。

恋愛経験がほとんどなく、そして心から結婚したいと望んでいる男性からしたら、なんとしても手放してはいけないと思ったのかなショボーン


あとは、メッセージで不審に思っていても、実際佳苗に会うと金銭的支援をしてでも交際を続けたい!と思ってしまうところね…もちろん引っかからない人だっていたわけだけど。

そう思わせるだけの上品さとか、魅力が佳苗にはあるんだろう…。

じゃなきゃ、死刑囚で獄中にいるのに3度も結婚しないわな…ガーン

 

 

じゃあ佳苗は男性たちから得たお金で一体そのお金で何をしていたのか?

整形をしたと言われていたようだったけれど、おそらく整形はしていたとしてもわずかで、あとはベンツを買ったり高級マンションに住んだり、好きな茶器をいくつも購入したり、美味しいものを食べたり、高級料理学校に通ったりして贅の限りを尽くした生活を送っていた様子。

殺害した男性たちから得たお金で料理学校に通い、将来の夢は自分でお店を開くこと…。

すごいよね。人をだまして殺して得たお金で、自分の夢を叶えようとしちゃうところ。

自分のやっていることがいけないこと、悪いことと全く思っていないこと。どうしてやりたいこと、買いたいものを買ってはいけないの??という感じだよね。

 

 

・佳苗は決して自分の容姿を卑下することなく、常に男たちの冷静な観察者だったから、男たちに魔法をかけられたのかもしれない。男たちはただ彼女に受け入れられている、愛されているという安心感のなか、彼女が見せる虚構の世界にゆったりと使っていればよかったのだろう。

生々しく悔しがり、嫉妬し、怒る、感情的で面倒臭い美人より、自分をすべて受容する料理上手で感情を見せない不美人のほうが、男たちは夢を見やすい。(P115)

→ なるほどなと思うわ…。きゃーきゃー喚く可愛い子より、たとえ可愛くなかったとしてもどっしり構えて安心感与えてくれる子のほうが、やっぱこいつしかいないな、って思われそう。

 

 

・佳苗は、一度だって、自分を粗末に扱ってなどいないから。佳苗ほど、自分を大切にした女も珍しい。自分の体を労り、おいしいものにこだわり、きれいな茶器にこだわり、妹たちと温泉を楽しむ豊かな生活。

姪と甥には、かつて幼い頃に自分が父にしてもらったように、ともに台所に立ち一緒にケーキやクッキーを焼く日々。それは美しさと丁寧さと愛情に満ちている。(P204)

・佳苗がこれまでにいなかった”毒婦”なのだとしたら、それは佳苗が、毒婦という言葉から、男性たちが多少なりとも感じていただろう甘美さのようなものを、嘲笑うようにそぎ落とした点だろう。男たちが女に求めた幻想そのものを、佳苗は殺したのだから。(P205)

→ これは読んでてとても思ったことで、満たされない虚栄心みたいなものはあるのかもしれないけれど、基本的に佳苗はすごく自分に自信があるんだよね。

自分が一番。

ひたすらに男が求める女像を映し出して「こういうのが好きなんでしょ?」と、上から見物している感じ。

殺人をしているから擁護はできないけれど、これって結構大事なことだと思うんだよね。自分にこだわるということ。

自分がどうしたら喜ぶか、自分はどうしているときが幸せか、自分の好きなものはなにか、それをひたすらに突き詰めていくことは、人生において重要だと思ったなあ。

だからって殺人や犯罪をしていいわけではないけれど。自分の収入のできる範囲内で、人に迷惑をかけない方法で。

やっぱどうしても、周りの目とか意見とか気にしちゃうけれど、佳苗からはまるでそれが感じられない。

「別に?」「だから?」って感じで、人からの意見なんてどうでもいい感じ。自分のやりたいようにやるだけ。それが、ある意味男性たちから見たら魅力に見えたのかもね。

 

 

結構重々しい内容かと思ったけれど、北原さんの文章はとても読みやすかったし、うんうん、と思える部分も多かった。

自分が知りたかった部分にも触れられていたので、なるほどなと思えました目

もし自分だったらってことはないけれど(そんな何千万もあげられるほどお金ないし、男性を騙すこともできないし)、もし自分が本当に信頼していて結婚も決めていた人が、自分の家の火災報知器をすべて外していて、なおかつ練炭をいくつも買っていたことを知ってしまったら怖いよね。恐ろしすぎるわドクロ