岩窟姫
近藤史恵
2019/03/29
★ひとことまとめ★
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
人気アイドル、謎の自殺──。彼女の親友・蓮美(れみ)は呆然とするが、その死を悼む間もなく激動の渦に巻き込まれる。自殺の原因が、蓮美のいじめだと彼女のブログに残されていたのだ。まったく身に覚えがないのに、マネージャーにもファンにも信じてもらえない。全てを失った蓮美は、己の無実を証明しようと立ち上がる。友人の死の真相に辿りついた少女の目に映るものは……衝撃のミステリー。
【感想】
アミの会(仮)で自分の好みだな~と思った近藤さんの作品を読んでみました◎
芸能事務所カラメルミルクに所属する蓮美は、ある日マネージャーから同じ事務所の売れっ子であり、親友の沙霧が飛び降り自殺をしたと告げられる。
親友が亡くなった悲しみに浸る間もなく、マネージャーから沙霧が生前書いていたであろうブログに、自分にいじめられていたという内容が書いてあることを教えられる。
全く身に覚えがないにもかかわらず、世の中では自分が沙霧をいじめたことにより、彼女が自殺したという結論が出されていた。
バラエティやCM、映画に出ていた日々から一変、家から出られず引きこもる日々。蓮美は無実の罪で陥れられ、芸能界から葬られてしまった。しかし、何故沙霧は嘘をついたのか、何故彼女は自殺しなければならなかったのか。
彼女はかつての自分、蓮美を捨てて、本名"鈴木昭子"として、沙霧の自殺の謎を調べ始める…。
モンテ・クリスト伯のお話をモチーフにしたお話。
身に覚えのない罪に問われて、かつての地位も名声もすべて奪われる。ほんとに絶望だよな。もうかつての自分では生きていけないんだもんね。
沙霧の死の真相を追うにつれて、事務所の抱える闇、業界の抱える闇、沙霧が抱えていた絶望が徐々に明らかになっていく。
可愛くてお姫様のようで、みんなから愛され、可愛がられていた沙霧が実際抱えていた闇、絶望。何も気づけなかった自分。
自分たちは商品であり、コンビニの棚と同じで、どんどん新商品が並び、棚から消えた商品は思い出されることがない。
沙霧が死んでも、蓮美が消えても、空いたポストにはどんどん新しい女の子が補充されていく。
芸能界の暗い部分がよくわかる…。実際書かれている内容、芸能界にはザラにあるんだろうな。
普通の社会では、売春とかすぐに捕まるし、ニュースで名前も乗っちゃうけど、芸能界ではそんなの当たり前に横行してるんだろうな。しかも、そこにはお偉方も名を連ねるから、圧力でなかったことにされちゃうという。。。
近藤さんの書き方は、アミの会(仮)読んでいても読みやすかったけど、長編でも読みやすくてすぐに読めた。
私は一人称視点の書き方の小説のほうが読みやすくて好きなのかもしれない。マチネの終わりにとかみたいな、いくつもの視点の作品は少し読みづらいな。
ストーリーは予想してなかった終わり方だった。と同時に、そんなことできちゃうの!?とも思ったけれど、家族が隠蔽していたのならわからないか。斉木の妹ってファンの子だと思っていた。沙霧のお母さんの一言がヒントになってたんだなあと。
にしても何故沙霧はあんな内容を書いたんだろう。
ああいう書き方をすれば、蓮美が気づいてくれると思ったのかな。もしくは本当に蓮美を憎む気持ちもあったのか。
胸くそ悪い話ではあったけれど、希望のある終わり方でよかった。蓮美としての道は捨てたけれど、新しい道を進んでほしいなって思った。