長生き競争
★ひとことまとめ★
星新一らしい一冊◎
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
“ちょっと長め”がうれしい!星新一ショートショート。新鮮なアイディア、完全なプロット、意外な結末―三要素そろったショートショートの傑作。…“たっぷり”面白い。
【感想】
・若葉の季節
ある小さな駅にふらっと降り立った女性。近くのホテルに泊まることに。この町には古くより不幸から逃れるため、町の外の女を生贄に捧げる儀式があった。ホテルで働く青年は、女性と一緒にいることで女性に同情心が生まれる。なんとか画策し、女性と主に町の外に逃げ出すが…。
星新一にある、バッド・エンドというか、ループのようなお話。
・現実
現実的な夢をよく見る青年。むしろ、夢が現実になってしまう。現実に退屈することで、また新しい夢を見て、それが現実になる…。最後の一行がなんとも言えない。
・あの男この病気
あのリアル鬼ごっことはとうてい違うけれど、よくショートショートでここまでのお話ができるなあと。追うものは病原菌の注射を受け、ターゲットを追う。ターゲットを無事捕まえることができれば、抗体を得る。もし捕まえることができなければ…。そして、ターゲットを捕まえることができたものは、今度は追われる側になる。もしそれが成し遂げられれば…
ショートショートなのに、ちょっと肉付けすれば1本の映画も作れそう。最近のお話ではないはずなのに、今読んでも違和感がないところがすごい。
・長生き競争
広告代理店のエヌ氏が思いついた新番組は、5匹1チーム、合計55チームのモルモットに保健薬、栄養剤を与え、どの薬をあたえたチームが一番長生きするかという、長生き競争だった。このお話はどうしてもラストが自分の中でもやもやしてしまって、調べたんだけどはっきりした答えはでていなくて。勝ったチームの薬は、言ったとおりになる薬なのかな…?
モルモットでやったら、動物愛護法でうだうだ言われそうだけれど、発想は面白いよね。
・爆発
このお話は最後なんとも悲しい気持ちになるお話だったなあ…。人口爆発と、核爆発のダブルミーニングらしいとのこと。夢オチって星新一ではよくあるけれど、すごく悲しい夢オチ。。。
・変な客
結局変な客はなんだったんだろうか?本当に泥棒だったんだよね…?そして救急車を呼ぼうっていうところはなにか意味があったのかなあ?
・半人前
半人前の死神に憑かれて、いろんな怪我病気はするけれど、その死神がついている間は死なないっていうのと、健康だけれどいつ一人前の死神に憑かれて死ぬかわからない生活って、どちらがいいんだろうね。要は半殺しってことだよね。私は健康な方がいいなあ~!
・自身に満ちた生活
このお話おもしろい!おごそかで、さもいろいろな計算などをもとに「そうすべき」「そうすべきではない」を打ち出してくれると思っていた装置が、実はコインの表裏でその答えを決めていたというお話。人間の思い込みって、薬のプラシーボ効果もそうだけれど、時には勘違い・思い込みが薬にもなるんだよね。それと同じで、きっとこんな厳かな装置がうんうん悩んで出した答えなんだから、きっとその答えに従えばうまくいくと思ってしまうよね。人間の心理をよく表現している話だなあと思った。
・味ラジオ
こんな放送があったらいいなあ~その放送を聞いていることで、無味なガムでさえも味を感じる。フルーツの味の放送ならばフルーツの味を感じる。無味なパンを食べていても、ステーキな味ならばステーキを感じる。でも、これだけじゃないのが星新一だよね。この放送が止まってしまった時、人はどうなるのか。それが表現されていて、自分がもしそうだったら…と考えた。味ラジオだけではなく、いまの文明に置き換えて考えてみた時、たとえば一日インターネットが繋がらなくなったら。パソコンが全部使えなくなったら。電気の供給が止まったらなどいろいろ考えてしまった。
・はじめての例
このお話もちょっとわからなかったな~。老人の悪魔に対する3つめの願い。「なし。」この意味がいまいちわからなくて。とくに最後の一行。「それ以来、老人はずっと死なずにいる。理由はいろいろ考えられるが。」この文がいまいちわからない。私の想像力が足りないか…?
星新一はやっぱりいいよねえ。何年も前の作品にもかかわらず、今読んでも時代錯誤な感じがないところが。