今日のハチミツ、あしたの私
寺地はるな
2018/02/09読了
★ひとことまとめ★
はちみつを食べてほっと一息したくなる本
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
恋人の故郷である朝埜市で、蜂蜜園の手伝いを始めることになった碧。蜜蜂たちの暮らしの奥深さを知る日々のなか、十六年前に自分の人生を助けてくれた不思議なできごとを思い出す―。草木がゆたかに花を咲かせる小さな町。不器用な家族の愛が心にしみる、書き下ろし長篇。
【感想】
リアルプリンセスを読んだときに、寺地さんのお話がおもしろかったから、寺地さんの本を読もうと思って読んだー!
結果。よかった。
話が良かったのもあるけど、書き方というのかな?自然なんだよね。
たぶん、主人公の目線で書かれているからかな。感情移入しやすい。
碧は私とも年が近いし、恋愛・結婚の悩みとかも、読んでいてずっしりとくるものがあった。
あとは、学生時代、碧が女の人(あえてこう書く)と出会ったところ。
・あなた自身が、あなたを大事にしてないから。あなたがあなたを嫌っているから。だから周りの人はみんな、ますますあなたを大事にしないし、嫌いになる。こいつはそういうふうに扱ってもいいんだって思われてしまう。(中略)だからわたしも、わたしを粗末に扱ってもいいやって思ったの?(P7)
ほんと、これね。
自分が自分を低く見積もるから、周りもそう見てくる。
自分を大切に出来てなければ、周りからも大切にされない。
し、自分を大切に出来てなければ、人も大切にできないと、思う。
あとは、安西に対する気持ちの部分。
安西に何か言われるたび、心の中で反論をしているところ。
言いたいのとはあるけど、言ったら波風たつのが目に見えてわかる。だから、言わない。
これも、ほんとわかるわ。
でも、それだとうまくいかないんだよね。だって、本音が言えてないんだもん。安西と、碧もそうだけど。
あと、碧の正しさというか、それもわかる。
真百合が言った、
・ずるくないから、ただしいからそうする、じゃないと思う。碧がどうしたいかだと思う。碧がどこへ行きたいかが大事。(P40)
結局、人からどう思われるかで物事を考えているんだよね。自分がどうなのかではなくてさ。
碧は、仕事もやめて、安西との未来のために安西の地元についていって。安西の父親に反対されて。それでも、帰る場所がないから、しがみついて、蜂蜜園で働くことになって。
私だったら、反対されたら絶望して東京に帰りそう!というか、適齢期に長年付き合った彼氏と別れたら、気が狂いそう。
長年でもないのに彼氏に振られて現在心乱された私としては、碧みたいに勇気を持てない気がする。
初めはよそ者扱いの人たちも、碧の頑張りを見て少しずつ心開いていって。
彼氏とはうまく行かなかったけれど、自分が自分のために頑張っているのを否定する人とは、うまくいくわけないよね。
蜂蜜を使ったレシピとか、蜂蜜の表現の仕方とか、本当に蜂蜜が食べたくなってくる。
あとは、蜜蜂の生態についてもちょこちょこでてくるけれど、それもなんだかジーンときちゃう。
・蜜蜂は一度刺せば死ぬと聞く。碧を刺したあの蜂は、群れを守ろうとしたのだ、(中略)どうしてそんなことができるのだろうと思う。身を挺して誰かを守るということは、簡単なことではないはずなのに、蜜蜂はためらいなくそれをおこなう。(P99)
・ふいに鼻の奥が痛くなる。蜜蜂が一生かかって集められる蜜の量が匙一杯分だと言うことを思い出す。今私が口にしたのは、蜜蜂の一生だ。(P131)
いつもなにげなくとろっとかけてる蜂蜜は、蜂が一生をかけて集めてきた蜜なんだなあと思うと、蜂蜜にたいしての気持ちも少し変わった。
黒江の過去や、碧の出会った女の人のこと、安西とのこと、どれもいいまとまりかただったと思う。
もんもんともしないし、読んでいて元気が出た。
蜂の生態なんて、なかなか自分から調べないし、こうやって小説を読むことで知識が増えたり価値観が少し変わることは、ほんと読書の醍醐味だなあと思う。
読んでよかった。蜂蜜買いたい。ハニーマスタードチキンつくりたい。