7月31日の話だったのですが、バタバタしてて書き損ねておりました。
このニュースを聞いた時、正直言って最初の感想は「え?まだ生きてたの!?」でした。とっくの昔に亡くなっていたと勝手に思い込んでいたものですから(恥)。享年99歳。私がそう思ったのも無理はなんかも知れません。
主に50~60年代にかけて、音楽プロデューサーの傍ら、自身の名を付けた合唱団の指揮者として活躍。テレビの冠番組『ミッチと歌おう』は日本でも放送され、大人気だったようです(うちの母親あたりも欠かさず見ていたそうな)。
彼の合唱団の特徴は、ほとんど男声コーラスですが独特の温かみのある歌唱だったこと、そして間奏部分なんどで口笛を大きく取り入れていること。この2つが親しみやすさを生み、結構幅広い層の人気を得た原因かも知れません。
ということで、基本的にはポピュラー・ミュージックの人なのですが、映画音楽との関わりも深い人でした。
まずは、映画主題歌のカバー。『いとしのクレメンタイン』(『荒野の決闘』)、『オーラ・リー』(『長い灰色の線』、プレスリーの『ラブ・ミー・テンダー』の原曲)、そして『黄色いリボン』などのジョン・フォード作品が印象的ですが、これらはご存知のように、既製曲を効果的に使用していたフォード作品の代表格であり、映画主題歌というよりトラディショナル・ソングとしてレコーディングしたというのが正解でしょう。あと、女性の登場人物がまったく出てこない映画本体とは裏腹に、いろんな女性の名前をゾロゾロ出して「あの娘が一番、この娘が最高」とあれこれ悩むというトンチンカンな歌詞(もちろん本編とは無関係な内容)を付けた『大脱走マーチ』は、ある意味珍品かも知れません。
カバーだけでなく、映画の正規のサントラ盤にも多数参加しています。『戦場にかける橋』や『ナバロンの要塞』など、彼らが所属していたコロンビア(現在はソニー・グループ)レーベルから発売された戦争映画などのサントラには、彼らの歌うバージョンの主題歌がよく収録されていました。実は、これらの映画の多くでは、本編中に彼らの歌声が流れたものは少なく、そういう意味ではこれらの主題歌も厳密には一種のカバーだと言えるのですが、サントラ盤に収録されているというだけで「オリジナル版」扱いされるという不思議な状況が起こっています。
ちなみに、『戦場にかける橋』の『クワイ河マーチ』は、大半が口笛で中盤部分に「♪ダダダ~」みたいなスキャット(?)が流れ、歌詞のある部分はまったくない、彼らの歌曲としては異色の存在です。ちなみにこのバージョン、最近は松たか子と原田芳雄が出ているビールのCMに使われています。
もちろん、彼らの歌声がしっかり本編中に流れた映画もあります。まずは、私の心の師匠、サム・ペキンパー初期の作品『ダンディ少佐』。メインタイトルに流れる主題歌の歌唱を担当。サントラ盤にはミラー自身がプロデューサーとして参加、本編未使用の歌1曲(近年発売されたCDには、未発表だった歌がさらに1曲追加)もしっかり収録されています。
そして、戦争映画の金字塔『史上最大の作戦』でも、エンディングに流れる主題歌を歌唱。エンドタイトルの前半は口笛+スキャットの『クワイ河マーチ』スタイル、そして後半は歌詞付きバージョンがフルコーラスで流れます。この映画、本編中の劇伴(打楽器のみの地味目なものですが)作曲を『アラビアのロレンス』でブレイクしたばかりのモーリス・ジャール、主題歌の作詞作曲を当時大人気だった歌手のポール・アンカ、そして主題歌アレンジをミラーと、それぞれ違うフィールドの音楽家3人が担当しているという豪華版です。
ミラーさんのご冥福をお祈りします。
<『STAR BOX』 ミッチ・ミラー合唱団>
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