デザイン的ものの見方 | "デザインってなに?"的ノート

"デザインってなに?"的ノート

デザイン的な思考やものの見方、デザインそのもののことなどを話題にします。

 

「デザイン的ものの見方」という公的な言葉があるかどうか知りませんが、デザインの仕事をやり始めてみると、「きちんとしたデザイン的なものの見方を養いたい」という欲求が出てきます。そんなわけで、「デザイン的ものの見方とは何か」をネットで調べながら自分なりに考えてみました。

 

【デザインの定義】

「デザイン的ものの見方って何?」と問われても、「すぐには答えられない」というより、「どう答えたら良いか分からない」、結局「答えられない」というのが正直なところです。明確に答えることができない理由の1つが、そもそも「デザイン」という言葉そのものが曖昧だからだと思います。

 

そこで、デザインという言葉の定義を先に述べておきます。ここでは、

≪問題の本質を深く掘り下げ、問題を解決するための設計を行い、その設計に基づいた表現を創造しながら、問題を解決に導くこと≫

という表現をとっておきます。

 

デザインには、広義のデザインと狭義のデザインがあります。広義のデザインとは、「目的を達成するために設計すること」であり、狭義のデザインは「設計したことを具体的なカタチにすること」となります。

デザインという言葉は、「作られた図案や模様そのもの」に向けて示されることが多いですが、「あるモノの機能や見栄えを良くするために形や模様を考える」というように、「何かを設計する作業や過程を指す言葉」となることもあります。また、交通標識等に使われるピクトグラムのように、「問題を解決をするための意匠」もデザインと呼ばれます。

上で示したデザインの定義は、広義のデザインや狭義のデザイン、いくつかのデザインという言葉の使われ方を全て網羅したものだと言えます。現代において「デザイン」は、単なる「設計」や「飾り」という単純な言葉では表せられない言葉として扱われるようになっています。それだけ、「デザイン」が重要な概念になりつつあるということでしょう。

 

【デザイン的ものの見方の出発点は3つある】

私は、デザイン的なものの見方をしようとするとき、次の3つの出発点があると考えています。

 

①モノやコトのデザインそのものを出発点とする見方 

②モノやコトのコンセプトや存在意義そのものを考えることを出発点とする見方 

③何らかの問題点や課題を意識して、それを解決するためにどう設計するか考えることを出発点とする見方

デザインを考えるためのモチーフは日常生活に溢れています。ここでは、「駅」を例にとってみましょう。

 

①では、例えば、電車の駅に貼られるポスターを例にとってみましょう。駅に貼られているポスターと電車内の広告では明らかな違いがあります。電車は動いていても、電車内の人は「立ち止まっている」ことと同じなので、電車内の広告は情報量が多めになっています。しかし、駅の広告は電車内の広告とは反対に、ビジュアルを強く、コピーも端的にデザインされています。距離が離れていても向かい側のホームにから視認しやすいようになっているのです。これが、駅の通路に貼られたポスターになるとまた違ってきます。そんな視点で写真や文字のデザインがどうなっているかを分析することが大事になります。

 

②の見方は、例えば、「駅」という存在そのものを深堀りしてみて、そこから理想的な駅構内のデザインを考えてみたり、人が入りそうな駅内店舗のデザインを考えてみたりすることを意味します。駅とは、辞書的な意味では「列車を停止させて、旅客の乗降、貨物の積み下ろし、列車の行き違い等を行うために設けられた場所」となりますが、人の出会いと別れが演出される場所でもあり、旅人が新鮮な気持ちで降り立つ場所でもあります。「駅」から想像される色々なイメージを膨らませ、デザインに反映させていく見方が②となります。場合によっては、一般的な「駅」にとどまるのではなく、「秋葉原駅とは?」といった感じで、個別の駅の存在についても深堀りした視点も必要となるでしょう。個別に駅の特性を深堀するこ とで、その駅に出すポスターの内容も違ってきたりします。

 

③の見方というのは2通りあって、「すでに顕在化している問題点をデザイン的に考えてみる」という見方と、「潜在的な問題点をデザイン的視点で考えてみる」という見方です。電車の路線が複雑で、慣れていない人がその駅に入ると迷ってしまうという問題が顕在化しているとき、「駅構内の案内地図をどのようにデザインしたら良いだろうか」と考えるのが前者です。後者は、例えば、「目の不自由な人にとって危険となるような駅構内の造りはないか?」という問題意識を出発点にして対象を見るという見方です。

 

なぜ、デザイナーにとってこの3点が大事だと思うのか? 個人的には、近年の流動的な変化の影響で、デザイナー職は以前よりも増して幅広い知識や経験が要求される職種になってきています。 また、需要も従来の「カッコイイ」「おしゃれ」などの絵が作れるスペシャリストから総合職に近いスキルが求められる市場にシフトしているため、柔軟な対応や幅広い知識を養うためにもこういった物事に対する見方を身につけることが重要なのではないかと考えているからです。

 

ものの見方とは? 簡単に説明すると、考え方の切り口です(問題解決やアイデアを出すための種になりうるもの)

「何を」「どのよう」に「見る」のかと言うことです。

デザイナーや企画職の人は、上記の考えに近い「5W1Hの法則」などを使ってアイデアを出したりすると思いますが、 今回は「見方」に焦点をあててみようと思います。(ちなみに、「5W1Hの法則」はアイデアに具体性を持たせるときに使います。)

「ものの見方」は、アイデアに具体性を持たせる前のヒントや発想の元になるものです。では、具体的に「ものの見方」の「見方」の部分は何か?というと….

 

「視点」「視野」「視座」

 

この3つです!!

 

1.「視点」とは… 「物事を見たり考えたりする立場」= 目の付け所(POINT)になります。美しさ重視 機能性重視 ユーザー重視

2.「視野」とは… 「物事を考えたり判断したりする範囲」= 見る範囲(SCOPE)になます。どんな世界観でコンセプトを考えるか

3.「視座」とは… 「物事を見る姿勢や立場」=立ち位置(POSITION)になります。誰の視点で何をテーマに考えるか

 

「視野」「視座」「視点」の意味と違いとは 「視野がせまい」などのように、「視野」という言葉は日常でもよく使われます。その一方で、「視座」や「視点」という言葉もたびたび目にします。これら3つの言葉はよく似ていますが、はたしてどのような点が異なるのでしょうか。その違いはなかなか分かりづらいところです。

 

そこで今回は、「視野」「視座」「視点」の意味と違い、使い分けのポイントなどについて解説していきたいと思います。

 

「視野」とは 視野

「視野」とは、「視覚の広がり」という意味の言葉です。眼球を動かさずに一点を見つめる時、その一点を中心として視覚の及ぶ範囲を言います。読み方は「しや」で、「視野が開けた」「何かが視野を遮った」のように使われます。 「視野」にはまた、「ものごとを考えたり判断したりする範囲」という意味もあります。この場合は、「視野の狭い人間にはなるな」「広い視野でものを見るべきだ」のように使われます。

「視野」の「視」の字は、「一点に視点を集中させて見る」「目で見る」の意味を持ちます。「野」の字は、この場合「区分したその1つ」を意味しています。

「視座」や「視点」との違いになる「視野」の特徴は、「どこまでを見るのか」を表す点にあります。それぞれの詳しい違いについては、以下で見ていきましょう。

 

「視座」とは 視座

「視座」とは、「ものを認識する立場」という意味の言葉です。ものごとを見る姿勢や、立場を言います。読み方は「しざ」で、「経済優先の視座による発言」「視座を高く保つことが、仕事においては大切だ」のように使われます。

「視座」の「座」は、「家」「すわる」の象形から成り、「すわる場所」「席」を意味する漢字です。

「視野」との違いは、「どこから見るか」を表す点にあります。「視野」がものごとを見る「範囲」に関する言葉なのに対し、「視座」はものごとを見る「場所(高さ)」に関係している点が特徴です。つまり、「視座」が動けばものを見る範囲にも影響するので、「視野」も変わることになります。

 

「視点」とは 視点

「視点」とは、「視線の注がれるところ」という意味の言葉です。物を見る際に、目の焦点が合う一点を言います。読み方は「してん」で、「視線が定まらない」のように使われます。 「視点」にはまた、「ものを見たり考えたりする立場」という意味もあります。この場合は、「彼は独特の視点で世の中を見ている」「視点を変えることで、言い考えが浮かぶこともある」のように使われます。

「視点」の「点」は、「小さく黒いしるし」を意味する漢字ですが、この場合は「特定の場所」といった意味になります。

「視野」や「視座」との違いは、「注目する部分」を表す点にあります。「視野」は前述のように、ものごとを見る「範囲」を指しますが、「視点」はその中で、「もっとも注意を注ぐポイント」を指します。これらの点を踏まえると、3つの使い分けをしやすくなるはずです。

日常生活ではさまざまな場面でデザインに触れる機会がありますよね。なんてことない風景でも、意識を向けてみれば計算されたデザインがそこにあることが分かります。今回は普段の生活の中で出会うことができる、デザインについてのお話をしていきたいと思います。

 

電車内の広告

電車での移動というのは、ある程度の時間「その場に立ち止まっている」ことと同じです。なので電車内の広告は、情報量が結構多めになっている傾向にあります。

ちょっと大きさが分かりにくいかと思いますが、5人分ぐらいのシート長さでどーんと貼られています。文字を主体に構成されていますが、圧倒的な存在感を持っていて思わず読んでしまいます。こういった広告で文字組みやカーニングも学べますし、言い回しの妙も感じられ、ビジュアルだけではなくライティングの重要さにも気付けるのではないでしょうか。

 

駅の広告

駅の広告は車内の広告とは反対に、ビジュアルを強く、コピーも端的にデザインされています。電車を待っているときは、みな自然と線路に向かって待っているものです。必然的に向かいのホームに視線が向くわけですが、そんな距離でも目に止まりやすいようにデザインされています。

 

駅の通路

改札から出口までの通路などにある広告やデジタルサイネージにも、強いビジュアルと端的なコピーが用いられています。足早に歩いていても目に止まり、読み切れる程度の情報量に抑えられています。これは何だろうと思わせて検索させる、スマートフォンが普及して手軽に検索ができるようになったおかげで、さまざまな手法が取れるようになってきました。

 

運転中

運転中はさまざまな色を感じることができます。視野のに飛び込んでくる標識や信号機といったシンボルには、ただ設定された色というわけではなく明確にデザインされた配色が使用されています。

 

標識・信号機

主に青は許可を表し、黄色は注意、赤は警告・禁止を表しています。これは寒色は奥側に感じ、暖色は手前に感じる錯覚を利用した配色デザインになっています。より危険なものほど早く認識できるようになっているということですね。

 

踏切

同様に踏切の配色、黄色と黒は視認性が高く、警告を表す配色になっています。暗くても眩しくても認識しやすということは、危険を表す配色としてはこれ以上無いものではないでしょうか。おかげで蜂に襲われても反射的に逃げられるようになりました。

 

スーパー

スーパーなどのお店はデザインの宝庫です。商品ひとつひとつにパッケージがデザインされ、購買意欲を高める工夫をしています。

 

お菓子

パッケージデザインで大切なのは、手に取ってもらい、選んでもらえるデザインであることだと思います。先進的・前衛的過ぎるデザインは、そもそもその商品だと気付いてもらえない可能性が高くなるため、受け入れられません。悪目立ちをしている状態ですね。

重要なのは新しさと親しみ・懐かしさが共存していることだと思います。チョコレートだと王道をいく、誰もがひと目でそれだと分かるパッケージがすでにあります。なので、それらとは一線を画しつつも、違和感の無いデザインをするということが大切になってきます。

 

本屋

本屋もスーパーと同様、装丁というデザインの宝庫です。目につく装丁と、そうではない装丁には明確に差があると思っています。

 

装丁

本のタイトルも目を引く重要な要素ですが、絵や配色・フォントの選び方も重要になってきます。世界観を表現しつつも、気にならせるには計算され尽くしたデザインがあります。いわゆるジャケ買いをしてもらったら、それはデザインの勝利といえるのではないでしょうか。

 

まとめ 

なんとなく見ているデザインでも、気にして見てみれば、なぜそのデザインなのかが見えてくるようになります。配色でターゲットを絞ったり、ライティングで心を掴んだり、ビジュアルで目を奪ったり……。

多くのデザインは理由があってそのカタチになっています。普段の生活の中でも意識して見るようにして、普段のデザインにも反映できるようにしてみるのも良いかと思います。

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人や社会の在り方を追求していく「デザイン視点」。

ビジネスの受け手とのコミュニケーションを考える中で、デザイン視点というものは事業において大切なものとなってきます。

では実際スタートアップ企業の中で、「デザイン視点」はどのように活躍していくのか。

 

デザイン視点

スタートアップに求められているもの まずはスタートアップに求められている事について話します。ここを理解できていなければ、デザイナーとのコミュニケーションが上手くいかなくなります。

協力したからこそ見える課題というものもあるため、今一度学んでみましょう。

スタートアップに求めらているものですが、正直に言うとこれをやっておけば良いという答えがありません。

スタートアップ企業というものは、フェーズが変われば求められる事も変わります。企業によって仕事の内容が大きく変わるのです。

答えがあるとすれば、どんな状況にも対応できる「対応力」のある人材を、スタートアップには求められています。

大企業では「専門性+失敗しない」、ベンチャーでは「行動力×失敗から這い上がれる力」が求められていると認識しましょう。

 

デザイン思考の必要性 

スタートアップに求められていることを理解すれば、デザイン思考の必要性にも気づいてくるでしょう。

なぜ気づくのかと思う方もいるため、デザイン思考について説明していきます。

デザイン思考とは、デザイナーがデザイン業務で使う思考を活かして、ビジネスで前例のない問題に対して解決策を取ることとなります。

「デザイン」であれば、美術などを設計するクリエイティブ(想像力)な要素のことを言いますが、デザイン思考となれば少し異なるのです。

デザイン思考はビジネスに転用することで、そのためクリエイティブなセンスは問われず、思考方法を学んで知識がついていくものとなります。

以上を学んだうえで、本題に入っていきましょう。

 

「デザイン視点」はスタートアップに何をもたらすのか? スタートアップ,デザイン視点

言葉が難しいため、未だに疑問を持たれる方もいることでしょう。今まで理解してほしいことは「デザイン視点の知識があれば、スタートアップでも活かすことができる」ということです。

なぜそう言えるのかを説明していきます。

 

1.課題が見つかる 新規事業を立ち上げていく際、当然として不確定な要素がたくさん出てきます。

普通の人であれば不確定な場面を見つけ出してから行動するはずです。

ですがデザイン視点の人がいると、何もないところから解決する力があるため見えない課題を見つけられます。

デザイン視点を持っている方は、何もないところから目標に向かって、試行錯誤しながら正解を導きます。

そうしないとデザイン視点の経験値が上がらないため、仕事として行っています。

デザイン視点の方に影響された結果、周りの人も挑戦的になることで新たな課題を見つけていけるのでしょう。

 

2.ソリューションの検証が可能となる 課題が見つかり、アイデアが浮かぶと実験に入ります。ここでスタートアップによくあることが「実験体を作ることに時間がかかる」ことです。

ですがデザイン視点の方がいれば「時間をかけることは不要」と考え、実際にユーザーの声を聞いてから検証していくスタイルとなります。

実験体は簡単にして、ユーザーの反応で検証する事ができるのである。

それもデザイン視点の価値観が、周りにも伝わることで職業という垣根を超えるからこそ起きる変化だと考えています。

なお、「【解説】デザイン思考とは?マーケティングでの活用方法を紹介」ではデザイン思考の詳細について解説しています。

まとめ デザイン視点の価値観は、スタートアップにおいて必要不可欠な要素であることは間違いありません。

初めてのことをする際に起こる「不安」「リスク」に対して守りの姿勢に入るのが普通でしょう。

しかしスタートアップにデザイン視点の人が加わることで周りを導いてくれます。

結果それが「対応力」となり様々な問題が解決できるチームが生まれるのでしょう。

「デザイン視点」を持った方がもし身近にいれば大切に扱っていかなければならないのです。

 

「デザイナー視点」のススメ

チラシや看板、店内POP、商品パッケージ、WEBに至るまで、僕らデザイナーのお仕事は、皆さんが生活する日常の身近に存在します。 そうした身近に存在するデザイン物は、新たなデザインのヒントやお手本にもなります!

デザインに悩んだ際には、作業の手を止め町を歩いて看板を見てみたり、本屋やコンビニに出かけて商品を手に取ったりすることがあります。

「この看板は良いデザインなのか、悪いデザインなのか」 「誰をターゲットにしたパッケージなのか」 「技術的に自分一人でそのデザインが作れるのか」 「どのくらい制作時間がかかりそうなのか」 「自分がデザインをするならどう作り変えるのか」

1つのデザイン物だけでもデザイナーが得られる情報は無限にあります。これを僕は「デザイナー視点」と呼んでいます。

 

「デザイナー視点」はデザイナー以外でも役に立つ!

この「デザイナー視点」は、デザイナー以外の方がクセにしてもとても役に立つものだと考えています。

・看板や商品POPの設置場所や文言 ・商品のターゲットや販促をかける時期・広報物のデザイン・レイアウト などなど……。

これらの情報を1つのデザイン物から考察して、「自分ならこうPRする」、「自分ならこうデザインする」など思考を働かせることはきっと様々な業種に活かせると思います。

 

商店街や店舗はデザインの参考書のようなもの

僕らデザイナーにとって、街に溢れる広報物やお店の商品たちは「デザインの参考書」のようなもの。 ただ日々の日常を過ごす中でもこんなことを考えてしまうクセがついています。

みなさんも町を歩いたり、お店に立ち寄った際には「デザイナー視点」で見てみると、きっと見える世界が変わるはず!ぜひお試しくださいね!

 

デザインの答えを出すために、デザイナーに必要な視点

デザインをしていると、自分ではいいものができた!と感じていても、「クライアントは良いと思うのだろうか?」と悩むことはありませんか? 私も自分が作ったデザインを目の前にして、正解が分からなくなって考え込むときがあります。

そもそもデザインに正解はなく、正解か不正解か、売れるか売れないかは、デザインの力だけで測ることはできません。 そんな中でも、リリース時点では一つの答えを出し、どのデザインを世に送り出すのか「判断」が必要になります。そして、その答えはデザイナー一人ではなく、クライアントとともに決断していく必要があります。

今回は、クライアントとともにデザインの答えを出すために、デザイナーに必要な視点は何か?について書いてみたいと思います。

実はデザインには正解がある。けど、

先ほどデザインに正解はないと書きましたが、実はデザインには表現上の正解はあると思います。

例えば、解決したい課題や表現したいキーワードに対して、デザイン案に整合性があることや説明の筋が通っていることは、デザインのひとつの正解のように思います。ただ、それだけではクライアントが判断できないことが多々あります。

また、見た目が良いこともひとつの正解であるように思います。なんか素敵!と感じさせることができるのは、デザインの持つ力だと思います。ただ、「なんか素敵!」という感覚は個人の主観が大きく、「本当にこのデザインでいいのか…」とクライアントを悩ませてしまうことがあるように思います。見た目が良いだけでは、実は何も判断できないのです。

このように、デザイナーは「デザイン表現上の正解」を出すことができます。またそれが仕事とも言えます。でも、どれだけ正解のデザインを作ってみても、クライアントが選べなければそのデザインは答えにはならず、世に出せません。

 

デザインから一歩さがって考える。

デザインだけ見つめていてもよく分からなくなる…。そんなとき、デザインの外側を見渡すことが必要になってきます。デザインを見た目だけで考えるのではなく、もっと別の視点を持ってみよう、ということです。

上の図のようにデザインを引きで見ると、クライアントと社会(エンドユーザーと彼らを取り巻く状況)があることが分かります。今回はこの「デザインの外側」に焦点を当ててお話したいと思います。

 

デザイナーに必要な視点

①クライアントのことを理解する。

まずは、一つ目の「クライアント」について考えてみます。

世に送り出すデザインを最終決定するのはクライアントです。デザインを判断する相手がどういう人物なのかを理解することは、実はとても重要なことです。

どんなに表現として魅力的なデザインでも、相手にとって選択しづらい見せ方や話し方をした時点で、それは不採択になる時があります。

デザインを決める相手が、どんな業界の人で、どんな立場の人で、何を心地よく思い、何を嫌がるのか。どのような伝え方をすれば、理解しやすく決めやすいのか。相手のことを理解してコミュニケーションを取ることは、重要です。

双方が納得感のある答えを出すために、デザイナーには相手を理解したコミュニケーションを取ることが求められるのではないかと考えます。

 

②社会に出たときのことをイメージする。

次は、もう少し外側の「社会」のことを考えてみます。

そのデザインは、世の中にとってどんな価値を生み出すのか。事業にお金をかけるからには、ある程度の根拠を求められることもあります。根拠というと堅苦しいですが、そのデザインが世に出た時に機能する姿をクライアントが想像できることが大事なのではないかと思います。

それは何も壮大なことでなくても良いと思います。例えば、ロゴはこんな形で展開してみたら、より認知を得やすいのではないかとか。こういうデザインなら、こういうお客さんに刺さるんじゃないかとか。

こういう楽しいブランドなら、こういうデザインを使ってこんなイベントをやってみたらいいんじゃないかとか。このデザインにすることでどんなブランドになっていけるのか、ユーザーや社会を絡めてイメージできるように伝える。そうすることで、クライアントにデザインの可能性を信じてもらえるのではないでしょうか。

もたらす影響までを想像させる伝え方をすることで、デザインの見え方も変わってくるのではないかと思います。

 

最適解を出すためにデザイナーができること。

答えの分からないデザインという領域の中でデザイナーに求められるのは、デザイン表現に責任を持った上で、「デザインの外側」を見つめコミュニケーションを取ることだと感じます。

何か素敵なものを作ることだけがデザイナーの仕事なのではなく、クライアントが自分たちの判断に納得し、自信を持ってデザインを世に出せるように、一緒に考えサポートしていく…。これもデザイナーの仕事なのです。 そして、それがきっとプロジェクトの最適解につながっていくのだと思います。