ちょっとした不満
声よりも涙が先だった ビニールが熔け落ちるのを見ているようだった
あんなにもしなやかな子が こんなにも簡単に熔け落ちてゆくんだ
驚きを僕は静かに飲み込んだ わたしがどれだけがんばっているか、 ぜんぜんわかってくれてないよ、と言ったきり
あとは言葉になっていない
いつもより塩味の強い涙が 僕の胸に力一杯こすりつけられた
鋭くて必死な力だった
いつものやわらかさが思い出せないくらいの
強張った堅さ
僕は彼女がいつも
どれだけ上手に力を抜いていたのかに気づいた
束ねたロープをほどきながら これからの展望を話しているつもりで
ちょっとした不満を口にしたのは僕だった
最近 停滞している気がしたから
あせっていたのだ
言い訳をしてもいけないし なだめてもいけない
もちろん
放っておくのは一番いけない
その晩のたくらみを全部あきらめて 僕はしっかりと彼女を抱き寄せていた
朝までそうするつもりだったし
実際そうすることになった
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