ミニチュア
雪に包まれると 街はミニチュアに見える
視界は澄み渡っているのに
音を遮る何かに満ちている
駅から駅へ
乗り換えは立川駅
がらんとした青梅線の中で君は座らない
君はずっと自分の服装を気にしている
スニーカーと靴下と暖かそうなえんじ色のコート
ベージュの革手袋とふわふわの白いマフラー
たわいのない話をしても
すれ違いの繰り返し
ばれてない?
きにしすぎてると ばれちゃうよ?
駅から出ても
僕は君の肩を抱いて話し続ける
君のほうは 気が散ってばかり
気持ちは分かる だからそのまま
歩く
話す
歩く
ひとりで笑う
でも 君も笑顔を見せる
歩く
話す
歩く
景色をほめる
君も同じ意味のことを言う
そして登る
話が途切れる
またも登る
起伏を歩くときの
コートのすそを気にするしぐさが可愛い
普段はスカートがめくれてもあんまり気にしない君が
こんなに可愛くなるなんて 期待以上だよ
梅園の奥の人気のない山道
敷地内なのに整備されておらず
獣道と人の道の中間ぐらい
そろそろ良いんじゃないかな
手袋を君がはずして
マフラーを 僕がほどく
ボタンを君がはずして
コートを 僕が背中からぬきとる
それでもう 脱がすものは何もない
君の肌が光る
枯れ枝の中でひときわすべすべと
コートとマフラーを僕の鞄におさめて
1キロ四方でいちばんやわらかな丘を
こねる
そして
1キロ四方でいちばんやわらかな谷を
いらう
火照るのはあっという間だ
あたたかくふくらむような感触が伝わってくる
たてないのにしゃがめない君をささえて
いつもより熱っぽいくちびるを味わう
君の呼気に包まれると 世界がミニチュアに思える