ごほうび
出張から帰って来て
灯りをつける前に気づいた
いつもより明るい部屋だ
灯りをつけると
気づいた以上だった
フローリングが眩しく感じる
この足触りはクイックルワイパーだけじゃない
きっと
ベランダには雑巾が干してあるに違いない
ネクタイを抜きながら見たガスコンロの上に
材料、買ってくるね という書き置き
ガスコンロも焦げ跡以外はぴかぴかだ
バスルームからあたたかい湿気があふれていて
正直 全てが完璧なタイミング
さっそく汗を流そう
すっとひらめいたので
ワイシャツの胸ポケットからペンを出す
冷蔵庫からイチゴジャムを出して文鎮がわり
掃除、超頑張ったな
ごほうびだよ
味がなくなるまで舐めてあげるから
どこでもいいから好きなところに味付けしてみ?
PS
料理は後で良いよ
後で一緒に作ろう
せっかくの床を汚さないように
床に買い置きの介護用シーツを敷く
これでOK
僕はスーツを脱いでハンガーに掛け
湯気に包まれるためにシャツと下着を脱ぐ
○
僕は髪から足の裏まで全身を完璧に洗う
軽やかなスポンジの往復
弾むシャワーのしぶき
泡が流れるごとに僕は軽くなってゆく
やがて
湯船の中に弾んだ声が届く
あ おかえり!
そして
しばらくの物音
しばらくの物音
○
湯気をバスタオルに貫通させながら
僕は脱衣所を出た
ただいま と言おうとして言いよどむ
何も着ていない君の周りには
君の服が散らばっていて
顔も胸も臍も脚も見事にジャムまみれにした君が
よつんばいでおしりにジャムを塗り込んでいた
振り向いて全力で照れながら君が叫ぶ
あー えっち!
えっちなのはどっちだ