お泊まり恋愛詩 -24ページ目
ふたりなら寂しい場所のほうがいい
和歌水を出ると 夜の井ノ頭公園
吹き交わす葉擦れの音の下で
池は金属の光沢を放っている
この時間はボートの姿も水鳥の姿も見えない
葦の姿は傷跡
木々の影は腐食
ひとりで歩く人を拒む夜
空いているベンチを探すためにずいぶん歩き回った
サンダル履きの君が歩く速度に合わせるために
僕は歩幅を半分に縮めていた
和歌水では中途半端に君を責めたので
君は満足しないまま
あせりに似た熱を体に蓄えている
指先を噛むキス
くちびるを噛むキス
生え際を縁取るキス
耳たぶを噛むキス
首筋を降るキス
人差し指は僕の唾液を
親指は君の欲を潤滑液として君に潜る
指同士が君の体内で圧力を交わす
葉の輪郭に切り刻まれた光の破片が
君の瞳に映っている
寂しいところがこんなに好きなのは
何かに追われるようなこの切迫が原因だ
抱きしめることの安堵と
さらなる不足感
そして
ベンチの上で座ったまま交わりながら
君は肩を縮め
両手の平を君自身の口にあてて
声を阻む
あせりに似た闇に熱が溶け込んでゆく
観光しない東北旅行の午後
期待にぬかるんだ土地を耕して
よく震える種を植えた
君は絶え間なく咲き続けている
東北の地方都市
空は低い
アパートを改装したラブホテルには
湿った空気が満ちている
ゆっくりと反ってゆく君を
噛むごとに
僕は季節に置いてゆかれた昆虫になってゆく
行きのドライブ
助手席で地図をくるくる回していた君は
あっという間に ナビをあきらめていて
しばらくすると ずり落ち気味に眠りこけていた
窓の外を並木がしばらく流れ
道幅が拡がったあたりからは
外食チェーンの大型店舗が現れては飛び去る
ひときわ大きい建物は
やはりパチンコ屋だ
遅めのチェックインのためにレンタカーを飛ばす
久しぶりのプチ旅行だ
お仕置きには理由が必要なので
その都度 知恵を絞るのがS彼としての務めなのだが
君の場合はとても簡単なんだよな
助手席で寝ちゃダメだからね
俺を独りで運転させるなよ
と言ってドライブに連れ出せばいい
君は100%爆睡するから
高速に乗る前に
夕日がまぶしくてサンバイザーを下ろす
美味しそうに照らされた君の寝顔が横目に映る
お仕置きの時の泣き顔を想像して胸が躍る
やわらかい寝息が 鼓動にガソリンを注ぐ
昼と夜との境の橋を渡るために
さらに
アクセルを踏み込んでいく

