皆さんは、ロボットという言葉で、何を連想しますか。
私たちの世代では、まず「鉄腕アトム」を思い浮かべる人が多いのではないかと思います。
最近は、ホンダのASIMOのように、人間に近い形のものが話題になっています。
あるいは、ファナックに代表される産業用ロボットでしょうか。
ロボットという言葉は、チェコの作家カレル・チャペックによって作られた造語です。
チャペックは、戯曲『R・U・R(エル・ウ・エル)』(1920年)において、ロボット(robot)という言葉で人造人間を表しました。
『R・U・R』とは、「Rossum's Universal Robots」の略で、「 ロッサム万能ロボット会社」というような意味だそうです。
ただし、この作品に登場するロボットは金属製の機械ではなく、原形質を化学的合成で似せて作ったもので、現在のSF界の用語ではバイオノイドに分類されるものです。
90年以上経って、ロボットは進化してきました。
下図は、立花隆さんによる進化系統樹です。
ロボットの進化の軸として、私は次の2つを考えたいと思います。
第一は、産業用ロボットといわれる分野です。
廉価な労働力という意味では、チャッペックの意図に近いといえるでしょう。
第二は、人間の各種の活動の本質を理解しようとする試みです。
特に、コンピュータの発達により、ロボットは知能を獲得したと言われます。
ちなみに、コンピュータは中国語で、電脳といいます。
人間だけが飛躍的に発展させ得た脳の働きをシミュレーションすることにより、脳の機能にアプローチできないか、という問題意識です。
高次脳機能すなわち「認知」の問題は、社会的にも重要なテーマです。
1月16日の「事例研究発表会」でも、認知能力の衰えた利用者のことが多くの人に取り上げられていました。
逆に、赤ちゃんはどのようにして認知能力を身につけていくのでしょうか?
ロボットの知能化によって、そのようなことについても理解が深まるのではないでしょうか。
将棋の世界では、昨年、人とコンピュータが対戦する「電王戦」で、コンピュータが3勝1敗1分けという結果で勝利を収め話題になりました。
専門特化した分野では、すでにコンピュータが人間を凌駕しているともいえます。
それでは、分野を絞り込まない場合はどの程度の知力と考えられるでしょうか?
1月7日の日本経済新聞に、「人類を待つ天国と地獄-ロボットは東大の夢を見るか」という記事が載っていました。
「ロボットは東大に入れるか(Todai Robot Project)」というプロジェクトが、国立情報学研究所を中心として進められています。
1980年以降細分化された人工知能分野を再統合することで新たな地平を切り拓くことを目的としています。
具体的なベンチマークとして、2016年度までに大学入試センター試験で高得点をマークすること、また2021年度に東京大学入試を突破することが設定されています。
ちなみに、今年すでに代ゼミのセンター模試で、私立大学の学部のほぼ半数で、合格可能性80%以上のA判定を獲得したそうです。
研究所の新井紀子教授は、「来年は箱根駅伝に出ている(名門私立)大学のA判定がほしい」とのことです。
東京オリンピックが開催される2020年、ロボットが東京大学入試を突破する確率はかなり高いと思われます。
介護の仕事は、きわめて人間的な仕事と考えられますが、人間とロボットの役割分担はどうなるでしょうか?
2045年には、コンピュータの能力が人類を超えるという説もあります。
ロボット進化は人類の未来をどう変えるのでしょうか?
楽しみでもあり、不安でもあります。
(T)