今日の一曲!school food punishment「goodblue」
乱数メーカーの結果:597
上記に基づく「今日の一曲!」は、school food punishmentのセクション(595~599)から「goodblue」です。詳しい選曲プロセスが知りたい方は、こちらの説明記事をご覧ください。
収録先:『amp-reflection』(2010)
sfpを当ブログで取り上げるのは本記事で二度目です。過去の記事では他バンドおよび音楽シーンと絡めたアーティスト評を行い、インディーズ時代のナンバーにフォーカスしていました。一方で今回紹介する「goodblue」はメジャーデビュー以降の楽曲で、バンド初のフルアルバム『amp-reflection』の収録曲です。同盤では『東のエデン』とのタイアップ楽曲を(一部はアルバムバージョンながら)全て聴くことが出来ます。
歌詞(作詞:内村友美)
表題の「goodblue」はサビに"触れるgood blueとfly"の形で登場し、続くフレーズはいずれもポジティブ;正確にはそう予感させる類のものです。"薄まる過去のcry"、"揺れるtake-offの合図"、"変わるための未来"、"駆け出すまでのcry"と、明日への希望が窺えます。
書き出しは"深く沈んだ海の底 暗いだけの何もない世界"なので、そこから浮上していく過程でまず海の"ブルー"を知り、海面に近付くにつれその青を作り出しているのが"光"であると理解し、海上に顔を出せば頭上には更なる空の"ブルー"が広がっていて、飛びたい衝動に突き動かされるというのが本曲の情景的なアウトラインとの理解です。結びの"全部飲み込んだ後の世界を見てみたいの/まだ知らないブルーも/芽吹いてる good blue good fly"は、これを総括する言辞でしょう。
上記はあくまで視覚的な立脚地からの読み解きで、本曲の主軸は"少女"と"君"の物語です。"不安がってた少女"へと向けた"君"のアクションは歌詞の通り、"君が少女に教えた 世界に溢れる無限の色/パレットの中の絵の具では作れないほどあると"で、これは海底に沈み"誰の声もしない場所で 何色にも染まらずいれた"彼女にとって衝撃だったと思います。"もう試さなくていいの?君を信じちゃっていいの?"と、おそるおそるなのも納得です。
"もう自由になっていいの?明日を変えてしまっていいの?/ブルーになっていいの?"に、"「もう怖がらないでいいよ」 君の手 掴んでいいの?"と疑問符は尽きないけれど、どの質問に対しても答えはイエスであることを"good blue"に触れた彼女なら理解出来ると信じられます。
メロディ(作曲:school food punishment|江口亮)
個人的に最も気に入っているのはAメロです。比較的スピーディーでキャッチーなメロだけれどもそれだけで片付かず、緩急の付け方が巧いというか譜割りの妙で上下または左右に振られるような独特のフロウを有しています。歌詞に照らしてこれを海流の表現だと解すれば、主体性なく翻弄される我が身の哀れが伝って来るようです。
Bメロの仄暗い旋律からサビのグリッターなラインへの以降は実にsfpらしい鮮やかな反転攻勢で、ネガティブな想いを暴発させるのではなく昇華させて美しさを捨てない音運びに好感が持てます。近年はサビでがなり立てる或いは金切り声を上げるために拵えたかの如き乱雑なメロディを、とりわけ鬱屈した人物が主役に据えられた楽曲で顕著に耳にする印象なので、本曲のように立ち上がりの時点ではグルーミーでも後向きなままで終わらず未来志向の姿勢を見せるものは、作詞のみならず作曲の面でも高く評価したいです。
アレンジ(編曲:江口亮)
sfpの音楽を好む層は電子音とバンドサウンドの融合に強く惹かれているとの受け止めで僕もご多分に洩れずそうなのですが、この視座を持つ人間は2番Aメロのアレンジが須くツボだろうと断言に近い推測をします。融合そのものは1番サビまでで充分に披露されているため、2番Aは言わば引き算の美学ですよね。
生楽器という括りではバスドラだけが残り、用語をキックに改めたいダンスチューン的な振る舞いをし、足元で一気にエレクトロニカ色が強まります。細かくパンするシーケンスフレーズが左右の空間を埋め、中央には内村さんのクリアなボーカルが据えられ、間隙を縫うようにシンセがクレッシェンドに存在感を増してくる1:45~1:58の編曲は論功行賞モノです。
ここのサウンドはおそらく歌詞内容を反映させたもので、シーケンスフレーズは"突き刺すような光の中"から散乱の模様を、シンセは"交差する人の群れに 掻き消されそうで逃げた"から雑踏の様子を、それぞれ音に起こしているのだと捉えました。他にも1:59からのドラムパターンは"目を伏せてただ走った"の足音を、同時に鳴り出す逆再生系の音は"足がすくんで動けなくなった"の不安感を、同様に歌詞から導き出したと聴き解けます。
備考:特になし
今回は取り立てて補足したいことはありません。