
今日の一曲!電気グルーヴ「D・E・P」【平成2年の楽曲】
【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:平成の楽曲を振り返る】の第二弾です。【追記ここまで】
平成2年分の「今日の一曲!」は電気グルーヴの「D・E・P」(1990)です。インディーズでリリースされたアルバム『662 BPM BY DG』の収録曲であるため、知名度は低いかもしれません。下掲リンクに表示されている価格の高さも、そのプレミアゆえかと思います。
電気にとって今年は結成から30年の節目となり、1月にはそれを記念したアルバム『30』(2019)がリリースされたばかりです。同盤は過去曲のアップデートが中心でありながら、新曲宛らの新鮮味でもって鑑賞出来る良盤で、特に「Slow Motion (30th Mix)」「富士山 (Techno Disco Fujisan)」「WIRE WIRED, WIRELESS」はオリジナルより好みでした。イチからの新曲では「電気グルーヴ10周年の歌 2019」も繰り返し聴くうちにクセになってきて、30周年の作品なのに最も気に入ったのは同曲だというおかしさを許せてしまうのが、実に電気らしいなと安心します。このちぐはぐな曲名の由来は、歌詞ブックレット内のメロン牧場出張版をご覧ください。
そんな長きに亘って愛され続けている電気の初期衝動が感じられると言いましょうか、何でもありのトラックメイキングの面白さが随所に鏤められているのが『662~』の特徴です。テクノに傾倒する前の作品であるため、広く知られている電気のイメージには直結しにくいと思いますし、ルーツという意味では前身バンドである人生の音楽のほうに分がある気はするものの、大胆なネタ使いで新たな価値を生み出そうとする攻めの姿勢は、後世の楽曲制作に於いても実際の手法として、或いは精神性として受け継がれていると評します。
その中で今回紹介する「D・E・P」は、殊更に過激なサンプリングが放り込まれているところが魅力です。北野武の初監督作である『その男、凶暴につき』から、一般的に使用が推奨されないとある言葉を含む台詞が、これでもかというくらい連呼されます。Amebaから非表示ペナルティを受ける可能性があるので、気になる方はお手数ですが各自で調べてください。これは検索のヒントとして表示するだけですが、「どいつもこいつも○○○○だ」「兄妹揃ってお前ら○○○○か」の虫食い部分です。
この言葉を軸に11分以上も曲が続くので、浮世の全てに嫌気が差した時や、自棄になってダークサイドに堕ちそうな時に聴くと、洗脳的な魅力をより深く味わえるでしょう。トラック自体も良く言えばミニマル、悪く言えば単調であるため、仮に曲の終盤に命令調の言葉が挿入されていたとしたら、催眠下で実行してしまいそうな危うさすら覚えます。
ここまでの記述だけだと、シンプルなオケに苛烈なネタを載せただけの一発芸楽曲に映るかもしれませんが、分析的に聴いていくとサンプリングの弄り方(ピッチの上げ下げやチョップのタイミングなど)に芸の細かさが光っていることに気付け、この僅かな変化を徐々に積み重ねていくマナーこそが、実はテクノ的でお気に入りです。
僭越ながらDTMerとしての補足も付け加えると、DAWの扱いに四苦八苦しながら何とか組み上げたチープなトラックに、適当な音ネタ・声ネタを混ぜ合わせて、エフェクトを施したり波形を編集したりして粗い変化を付けていただけでも喜べていた頃の、懐かしい感覚に浸れるようなところが好ましいと言えます。勿論僕みたいな素人の習作とは比ぶべくもなく、「D・E・P」はハイセンスな仕上がりですけどね。
この観点でニッチなツボを挙げると、台詞に強いディストーションが掛かって独特のうねったリズム感を演出している箇所が好きで、タイムで表示すると3:06~3:09や5:54~5:57がこれに該当しますが、ややコミカルにも聴こえるサウンドに際立った狂気性が認められます。同じく電気の楽曲で例示すると、「ガリガリ君」(1997)の終盤に挿入される「ガリガリ大学合格」の末尾の母音[u]がハイピッチに揺らいで昇天していくセクションにも、同種の気持ち好さが宿っていると感じ、笑えるけれどちょっと怖くもある点で「狂気」と表現しました。話を「D・E・P」に戻して、2:14~2:18や4:14~4:22も当該部に近い仕上がりですが、こちらは歪みの程度が抑えられているからかそこまでツボではありません。
このような些細な違いでも好みは分かれるため、だからこそ様々な変化を試して提示してみることが、とりわけ単調になりがちな電子音楽では重要であるとの認識です。従って、この手の凝り性もまた後の電気の音楽につながるエッセンスであると解釈しています。先述した大胆なサンプリングの妙味と、テクノ的なマナーによるグラジュアルなトラックメイキングと合わせて、確かなアーティスト性が根底に潜む楽曲であると結びましょう。
平成2年分の「今日の一曲!」は電気グルーヴの「D・E・P」(1990)です。インディーズでリリースされたアルバム『662 BPM BY DG』の収録曲であるため、知名度は低いかもしれません。下掲リンクに表示されている価格の高さも、そのプレミアゆえかと思います。
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電気にとって今年は結成から30年の節目となり、1月にはそれを記念したアルバム『30』(2019)がリリースされたばかりです。同盤は過去曲のアップデートが中心でありながら、新曲宛らの新鮮味でもって鑑賞出来る良盤で、特に「Slow Motion (30th Mix)」「富士山 (Techno Disco Fujisan)」「WIRE WIRED, WIRELESS」はオリジナルより好みでした。イチからの新曲では「電気グルーヴ10周年の歌 2019」も繰り返し聴くうちにクセになってきて、30周年の作品なのに最も気に入ったのは同曲だというおかしさを許せてしまうのが、実に電気らしいなと安心します。このちぐはぐな曲名の由来は、歌詞ブックレット内のメロン牧場出張版をご覧ください。
そんな長きに亘って愛され続けている電気の初期衝動が感じられると言いましょうか、何でもありのトラックメイキングの面白さが随所に鏤められているのが『662~』の特徴です。テクノに傾倒する前の作品であるため、広く知られている電気のイメージには直結しにくいと思いますし、ルーツという意味では前身バンドである人生の音楽のほうに分がある気はするものの、大胆なネタ使いで新たな価値を生み出そうとする攻めの姿勢は、後世の楽曲制作に於いても実際の手法として、或いは精神性として受け継がれていると評します。
その中で今回紹介する「D・E・P」は、殊更に過激なサンプリングが放り込まれているところが魅力です。北野武の初監督作である『その男、凶暴につき』から、一般的に使用が推奨されないとある言葉を含む台詞が、これでもかというくらい連呼されます。Amebaから非表示ペナルティを受ける可能性があるので、気になる方はお手数ですが各自で調べてください。これは検索のヒントとして表示するだけですが、「どいつもこいつも○○○○だ」「兄妹揃ってお前ら○○○○か」の虫食い部分です。
この言葉を軸に11分以上も曲が続くので、浮世の全てに嫌気が差した時や、自棄になってダークサイドに堕ちそうな時に聴くと、洗脳的な魅力をより深く味わえるでしょう。トラック自体も良く言えばミニマル、悪く言えば単調であるため、仮に曲の終盤に命令調の言葉が挿入されていたとしたら、催眠下で実行してしまいそうな危うさすら覚えます。
ここまでの記述だけだと、シンプルなオケに苛烈なネタを載せただけの一発芸楽曲に映るかもしれませんが、分析的に聴いていくとサンプリングの弄り方(ピッチの上げ下げやチョップのタイミングなど)に芸の細かさが光っていることに気付け、この僅かな変化を徐々に積み重ねていくマナーこそが、実はテクノ的でお気に入りです。
僭越ながらDTMerとしての補足も付け加えると、DAWの扱いに四苦八苦しながら何とか組み上げたチープなトラックに、適当な音ネタ・声ネタを混ぜ合わせて、エフェクトを施したり波形を編集したりして粗い変化を付けていただけでも喜べていた頃の、懐かしい感覚に浸れるようなところが好ましいと言えます。勿論僕みたいな素人の習作とは比ぶべくもなく、「D・E・P」はハイセンスな仕上がりですけどね。
この観点でニッチなツボを挙げると、台詞に強いディストーションが掛かって独特のうねったリズム感を演出している箇所が好きで、タイムで表示すると3:06~3:09や5:54~5:57がこれに該当しますが、ややコミカルにも聴こえるサウンドに際立った狂気性が認められます。同じく電気の楽曲で例示すると、「ガリガリ君」(1997)の終盤に挿入される「ガリガリ大学合格」の末尾の母音[u]がハイピッチに揺らいで昇天していくセクションにも、同種の気持ち好さが宿っていると感じ、笑えるけれどちょっと怖くもある点で「狂気」と表現しました。話を「D・E・P」に戻して、2:14~2:18や4:14~4:22も当該部に近い仕上がりですが、こちらは歪みの程度が抑えられているからかそこまでツボではありません。
このような些細な違いでも好みは分かれるため、だからこそ様々な変化を試して提示してみることが、とりわけ単調になりがちな電子音楽では重要であるとの認識です。従って、この手の凝り性もまた後の電気の音楽につながるエッセンスであると解釈しています。先述した大胆なサンプリングの妙味と、テクノ的なマナーによるグラジュアルなトラックメイキングと合わせて、確かなアーティスト性が根底に潜む楽曲であると結びましょう。
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