今日の一曲!MAKO「アイスキャンディー」 | A Flood of Music

今日の一曲!MAKO「アイスキャンディー」

 【テーマ:夏】の「今日の一曲!」第五弾は、MAKOの「アイスキャンディー」(2005)です。TVアニメ『かみちゅ!』のED曲で、MAKO名義のディスコグラフィーとしては唯一の作品からのナンバーとなります。

 こう書くと一発屋のように誤解されかねないので補足しますと、MAKOさんは本作のリリース以前からBON-BON BLACNCOのメンバー(マラカス担当)としての活動歴と実績をお持ちで、同アニメの主人公・一橋ゆりえ役で初めて声優に挑戦し、その後も複数の作品に於いてキャラクター名義でCD参加をなさっている方です。



 前回の「今日の一曲!」までは「GS・サーフ風アニソンに言及する」という共通項がありましたが、今回からその連想ゲームは終わりにします。…が、またもアニソンを紹介することにしたのは意図的なので、これからも暫くはアニメ関連楽曲強化期間になるであろうことをご容赦ください。

 というのも、最近「古いアニメについて語りたい欲」が出てきているんですよね。正確には古いというか「僕にとって懐かしい作品について」です。『かみちゅ!』もそんな中のひとつで、13年前のアニメゆえに記憶がお粗末ですが、当時からジブリっぽい作風が話題となっていて、日本文化に根差したローファンタジーな内容も好みだった覚えがあるので、良作であるとの認識を持っています。鳴子ハナハルさん作画の漫画版も雰囲気が素敵で好きだったはずなのですが、この記事に書いた「☆4以下処分」の餌食となったのか本棚を探してもありませんでした…残念。


 今回は紹介しませんがOP曲もというかOP映像も素晴らしく、文字情報(スタッフクレジット)とアニメーションが相互作用を果たしているタイプは遊び心があって好みです。例はいくつか思い付きますが、第一次アニヲタ期に観ていた中では『がくえんゆーとぴあ まなびストレート!』のOPが同系統でお気に入りでした。

 OPは凝った演出が素晴らしかったのに対して、EDはシンプルな可愛さが観ていて楽しいタイプで、その魅力が楽曲の良さを底上げしていた面もあるかと思います。MAKOさんがボンブラではマラカスを担当していたことを先に書きましたが、それが意識されているのか、EDではゆりえのマラカスパフォーマンスがとりわけキュートです。

 ちなみに『ちとせげっちゅ!!』という別作品のEDにも、おそらく同様の理由で同様の演出が採用されているので、「MAKOさん=マラカス」のイメージは相当根強いと言えるでしょう。今では「マラカスを振るED」というと『ラブライブ!』を思い浮かべる方が多いと推測しますが、僕は未だに『かみちゅ!』(か若しくは『らいむいろ戦奇譚』)のイメージですね。笑


 欲望の通りにアニメ語りの前置きが長くなってしまいましたが、ここから漸く「アイスキャンディー」のレビューに入ります。これで本曲にマラカスが使われていたら;たとえばラテン音楽風の編曲であるならば流れとしてもスムーズなのですが、プレイヤー陣のクレジットを見ると【ドラムス・ベース・ギター・コーラス】となっていて、ポップスに於けるバンドサウンドであることに疑いの余地がない編成です。

 ということで本曲のアレンジは…というか本曲の魅力は、シンプルでストレートなバンドサウンドにこそあると主張します。作編曲がElements Gardenの藤田淳平さんによるものなので、上に書いたバンド隊以外の音(e.g. キーボード)も入ってはいるのですが、骨子は「懐かしさの漂うポップロック」だという趣です。

 もっと踏み込めば「生演奏でコピーしやすそうなシンプルさを宿している」とも言え、EDで中学生であるゆりえ達が演奏している体になっているのも、そういう解釈からではないかと妄想しています。なお、あくまで「しやすそう」であるだけで実際にそうだと言うつもりはなく、「シンプルに聴こえる編曲が巧みだと思う」という意味での表現だとご理解いただければ幸いです。


 そんなストレートなアレンジに対するメロディは、立てられるに相応しいだけのポップさとキャッチーさを兼ね備えていると言えます。この表現で通じるかどうか微妙ですが、終始「チアフル(cheerful)な旋律」だと感じていて、作中よろしく中学生の女の子が健気に頑張っているような趣が微笑ましいです。

 古いアイドルソング風にも聴こえ、跳ね感のあるA・Bメロは勿論のこと、サビの徐々に美メロに移行して盛り上がりを作っていく(=リズム的な旋律がメロディアスに変化していく)展開も実に王道だなと思います。明るさの裏に少しの切なさを滲ませるメロディ運びは、昔の楽曲のほうが顕著である印象なので、このエッセンスは受け継がれていってほしいですね。この類のセンチメンタルさを極端にしたのがCメロの浮遊感だという気がしますが、そこまでの展開で伏線のように切なさを潜ませていたおかげで、この毛色の異なるセクションも違和感なく馴染んでいるところに技巧性を感じます。


 Bee'さんによる歌詞の等身大さ加減も素敵で、甘酸っぱい気持ちが蘇ってくるようです。"まだまだぜんぜん終わんない! ラスト一時間の授業です/時計をチラチラ見ても 1秒が長いね"に共感を覚えたり、"チャイムの鐘 恋のシグナル 廊下の飛び出しには注意!/君のもとへいちばん先に 「いっしょに帰ろう・・・」"に小っ恥ずかしくなったりと、プラトニックというかジュブナイルな感性がいいなぁと思います。

 表題を含む"ソーダ味のアイスキャンディー"の変遷も見事で、1番では"ギラギラなお日様の下 ハンブンコ/とろけそうな あたしの青春です"、2番では"口の中はじけて広がる奇跡が/パレードして あたしを包んでゆく"、ラスサビでは"口の中冷たい風が 吹いたなら/とろけそうな すてきな「キス」しようよ"と、二人の関係の進展に沿ってマテリアルな表現の枠を逸脱していくところが堪りません。