今日の一曲!BUMP OF CHICKEN「ホリデイ」 | A Flood of Music

今日の一曲!BUMP OF CHICKEN「ホリデイ」

 【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:雨】の第二十一弾です。【追記ここまで】

 「今日の一曲!」はBUMP OF CHICKENの「ホリデイ」(2002)です。5thシングル『スノースマイル』のc/w曲で、アルバムとしてはB面集の『present from you』(2008)に収録されています。

 バンプも選曲に悩み、最終候補として他に「ウェザーリポート」(2010)と「虹を待つ人」(2013)が競っていたのですが、休日の更新だし「ホリデイ」にするかという単純な動機が決定打となりました。笑



 歌詞に"雨"が登場する箇所は二つあり、一度目は"外は雨降り模様"と実際の雨の描写に、二度目は"失敗しない 雨も降らない人生なんて ない"と比喩的な使われ方をしています。後者は終盤に出てくる一節で、これは冒頭の"失敗しない 後悔しない 人生がいいな"という願望が、変質してより現実的な認識となったことを示しているわけですが、本曲の魅力はまさにこの点にあると思っていて、時間の経過による考え方の変遷の描き方が非常に上手です。換言すれば、伏線回収が鮮やかな曲であるとも表現出来ます。

 "遅刻かも 起きなくちゃ/いいや、 ホリデイ 今日は起きないぞ" → "遅刻でもいいから 行こうかな"|"君に貰った花 3日と持たず 枯らしたよ" → "君に貰った花を 買って帰ろう"|"薄目で見た時計が止まってる" → "時計の電池も"|"だけど ホリデイ 僕は起きないぞ" → "あと 2回 寝返りしたら 試しに起きてみよう"などがその例ですが、夢現の状態の時に考え方が徐々に変わっていくという経験は、誰しもが持っているのではないでしょうか。半覚醒状態では実際の時間の経過と体感がずれる(長くも短くもなる)ため、思考のプロセスも覚醒時とは異なるのでしょうが、無能感と全能感の狭間で揺らぐようなあの感覚は意外と嫌いじゃありません。


 嫌いじゃないと言えるのは僕が最終的にネガに振れるタイプの性格ではないからで、要するに本曲に描かれているようなネガからポジへの移行ならばそれで結構なわけですが、反対だとちょっと心配になってしまいますね。不登校や鬱病のサインは、「朝起きられない」に潜んでいるとも聞きますし。この手の話には詳しくないため余計なことを書いているかもしれませんが、そこまで深刻でなくともふとしたきっかけで思考がダークサイドに堕ちそうな時に、本曲を聴けば明日への活力が少しは沸いて来そうな気がするので、その効能の程はまさに薬のようであるとの認識です。

 "巧くいかない 日々が繋がって/いっそ止めてみたら なおさら酷い"は、"酷い"か"なおさら酷い"かの二者択一を迫っている;つまりどんな状況でも前に進むしかない人生の過酷さを突き付けているので一見突っ撥ねているようにも思えますが、"こんな僕だって 朝を繋いでる"と続けることで、明日を迎えたことだけでも肯定しようじゃないかと優しく寄り添ってきているとわかるので、この両面性をとても気に入っています。


 音楽的にも非常に優しいつくりになっていて、サビが存在しないようなメロディ展開というか、淡々と進んでいくところがわざとらしくなくて素敵です。

 作曲事情は知らないので完全なる妄想ですが、ギターで弾き語りをしていたら急に降って来た美メロ(大抵それは儚くて再現性に乏しいもの)を、上手いこと繋ぎとめて形にしたタイプの名曲らしさが、「ホリデイ」には宿っていると思います。