今日の一曲!宇多田ヒカル「Kiss & Cry」【テーマ:即席ラーメン】
【追記:2021.1.4】 本記事は「今日の一曲!」Ver. 1.0の第四十七弾です。【追記ここまで】
袋麺なら中華三昧シリーズかサッポロ一番の塩ラーメンが好きです。カップ麺ならどん兵衛のきつねかな。
…思ったより話を広げられなかったので早速「今日の一曲!」に入りたいと思います。笑 ただし今回は楽曲自体が即席ラーメンと深い関わりがあると言えるので、引き続きラーメントークだと思ってください。
Beautiful World / Kiss & Cry/宇多田ヒカル

¥1,296
Amazon.co.jp
紹介するのは宇多田ヒカルの「Kiss & Cry」(2007)です。19thシングル曲で、両A面のうちの一曲。オリジナルアルバムでは『HEART STATION』(2008)に収録されています。
宇多田ヒカルのシングル曲とはいえ何気にもう10年も前の曲なので忘れてしまった方もいるかもしれませんが、このMVを観れば思い出すのではないでしょうか。というかこのサムネだけでも充分かな。
どうです?思い出せましたか?…ということでこの「Kiss & Cry」は日清カップヌードルのプロモーション・プロジェクトである『FREEDOM-PROJECT』に提供された楽曲のひとつでした。「This Is Love」(2006)のVer.のほうが有名かもしれませんが、このアニメを使ったCMはよく流れていましたよね。
歌詞にもダイレクトに"今日は日清CUP NOODLE"と出てくるので、【テーマ:即席ラーメン】にはぴったりだということでの選曲です。日清のカップヌードルも勿論好きですよ。若い頃は色々と目移りしましたが、何だかんだで長く食べ続けられるのはベーシックなものだと年も食ったのでわかりました。笑
話を曲に戻して、明るさと切なさと可笑しさと悲しさが綯い交ぜになったような…とでも表現したくなる表情豊かなトラックだと思います。歌詞は勿論ですがメロディ面でもサウンド面でも、コミカルな外面の裏に潜んだセンチメンタルが徐々に滲み出てくるといった構成になっていると感じます。
イントロ~Aメロまでは音数も少なくストイックで、ちょっとファンキーな雰囲気を醸しているもんだからてっきりユニーク路線の曲なのかなという予想が立ちそうなものですが、ここからナチュラルに曲の趣を変化させていくのが巧いのです。
Bメロに入ると、旋律自体はノリが良くポップでキャッチーだと言えるのですが、浮遊感のあるコーラスワークと弦っぽい音(シンセ)のシークエンスが何とも言えない切なさを付与しているので、非常に多層的なサウンドを見せ始めます。
1番Bには"とろけるようなBセクション"という自己言及的な歌詞が出てきますが、まさしくその通りで揺蕩う感じの表現が上手いパートだなと思います。"鼓膜にあたるバスドラと/心地よく突くハイハット"というのもまさにですね。
歌詞は2番Bも好きです。"お父さんのリストラと/お兄ちゃんのインターネット/お母さんはダイエット"とポップに歌い上げられていますが、なかなかに深刻な事態が想像できてしまうので残酷な羅列ですよね。
続く"みんな夜空のパイロット/孤独を癒すムーンライト/今日は日清CUP NOODLE"も、現実の非情さと束の間の美しさが混在しているような鮮やかな描写だと思います。現代日本らしい危うさと儚さがあって素晴らしい。カップ麺の温もりと悲哀とでも言いましょうか。
サビは宇多田ヒカルお得意のどこか悲しげながらも熱量を伴っているメロディだという印象です。これだけを取り立てるなら実に彼女らしい旋律だという感想に留まるのですが、ここまでの流れ(A→B→)を考慮するとある意味ここだけ浮いているようにも思えるんですよね。
それでも決して不自然ではないのが不思議なのですが、Bで曲に別の色をきちんと持たせていたことが味噌である気がします。つまりBで微かに匂わせた切なさがサビへの布石になっていたと言いたいわけですが、このいつの間にか曲の様相が変わっているというのがこの曲の魅力ではないでしょうか。
Cメロにも二面性がありますね。前半("わたしの弱虫"まで)は歌い方も含めて結構暗めだと思うのですが、以降の後半部は"弱虫"が覚悟を決める場面が描写されているからか徐々に力強い質感が加わっていくのが素敵です。同じ"I just want you to hold me"でも2回目のほうが勇気を出した歌い方になっている。
長めに取ってあるアウトロも好きです。歌詞には無い部分ですがアドリブのボーカルと重なり合うコーラスが耳に心地良い。イントロの段階では曲の終わりがこういう感じになるというのはなかなか予想しにくいのではないかな。
EXODUS/Utada

¥3,086
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さて、「Kiss & Cry」を紹介するならばUtadaの「HOTEL LOBBY」(2004)も併せて紹介した方がいいでしょう。なぜなら「Kiss & Cry」のBメロは「HOTEL LOBBY」のAメロの流用になっているからです。
この2曲に関連性を持たせたいから敢えて行ったのか、それとも特に深い意味はなくファンサービスのようなものなのかは知りませんが、ファンなら「おっ!」と思える遊び心ですよね。
Utada名義の楽曲は好きじゃないものを探す方が難しいくらいにお気に入りの楽曲が多いのですが、その中でも「HOTEL LOBBY」は個人的トップ3には入ってくる大のフェイバリット・ナンバーです。
いくつかのループするフレーズが重なって曲を成すというダンストラック的な手法で作られていると思うのですが、それゆえに非常に中毒性が高くなっていると感じます。全部英語だとこれくらいシンプルなアレンジでも映えるなと思ったので、Utada名義で世に出たのは正解と言えるでしょう。
歌詞の世界観も好きです。もしかしたら歌詞の登場人物の関係を誤解しているかもしれませんが、僕はこう解釈したんだということでこのまま続けます。
付属ブックレットにある新谷洋子との対談の中で、この曲は「第三者の視点」で描かれていることに作詞上のこだわりがある旨が書いてあるのですが、確かに歌詞上の主人公は"私(I)"なのに、描写の中心は"彼女"について(="She"から始まるセンテンスが多い)だというのは英語ならではという感じがしますね。
そんな"I"と"She"がまみえるのが"in the mirrors of the hotel lobby"であるというのが、これまた隔たりを感じさせる表現で上手だなと思います。文法の上でも内容の描写においても距離を綺麗に切り取っているのが流石。
この曲で最もツボなのはラスト付近です。音数が減り、"Catch me because I think I'm falling / I'll be waiting in the mirrors of the hotel lobby"と新しい歌詞が登場し、印象的なシンセのシークエンスがカムバックしてくる中で"lobby"がエコーしまくるという流れ、個人的にはこれ以上ない完璧でクールな締め方だと思います。
上手く説明できませんが、ここに"falling"という単語が出てくるのもとても好きなのです。"I think I'm falling"という英語ならではの回りくどい表現も相俟ってのことだと思いますが、落ちていくのは自分なのにそれを外から客観視しているようなイメージが浮かぶところが文学的に思えるからかな。
即席ラーメン、種類は何が好き?
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袋麺なら中華三昧シリーズかサッポロ一番の塩ラーメンが好きです。カップ麺ならどん兵衛のきつねかな。
…思ったより話を広げられなかったので早速「今日の一曲!」に入りたいと思います。笑 ただし今回は楽曲自体が即席ラーメンと深い関わりがあると言えるので、引き続きラーメントークだと思ってください。
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宇多田ヒカルのシングル曲とはいえ何気にもう10年も前の曲なので忘れてしまった方もいるかもしれませんが、このMVを観れば思い出すのではないでしょうか。というかこのサムネだけでも充分かな。
どうです?思い出せましたか?…ということでこの「Kiss & Cry」は日清カップヌードルのプロモーション・プロジェクトである『FREEDOM-PROJECT』に提供された楽曲のひとつでした。「This Is Love」(2006)のVer.のほうが有名かもしれませんが、このアニメを使ったCMはよく流れていましたよね。
歌詞にもダイレクトに"今日は日清CUP NOODLE"と出てくるので、【テーマ:即席ラーメン】にはぴったりだということでの選曲です。日清のカップヌードルも勿論好きですよ。若い頃は色々と目移りしましたが、何だかんだで長く食べ続けられるのはベーシックなものだと年も食ったのでわかりました。笑
話を曲に戻して、明るさと切なさと可笑しさと悲しさが綯い交ぜになったような…とでも表現したくなる表情豊かなトラックだと思います。歌詞は勿論ですがメロディ面でもサウンド面でも、コミカルな外面の裏に潜んだセンチメンタルが徐々に滲み出てくるといった構成になっていると感じます。
イントロ~Aメロまでは音数も少なくストイックで、ちょっとファンキーな雰囲気を醸しているもんだからてっきりユニーク路線の曲なのかなという予想が立ちそうなものですが、ここからナチュラルに曲の趣を変化させていくのが巧いのです。
Bメロに入ると、旋律自体はノリが良くポップでキャッチーだと言えるのですが、浮遊感のあるコーラスワークと弦っぽい音(シンセ)のシークエンスが何とも言えない切なさを付与しているので、非常に多層的なサウンドを見せ始めます。
1番Bには"とろけるようなBセクション"という自己言及的な歌詞が出てきますが、まさしくその通りで揺蕩う感じの表現が上手いパートだなと思います。"鼓膜にあたるバスドラと/心地よく突くハイハット"というのもまさにですね。
歌詞は2番Bも好きです。"お父さんのリストラと/お兄ちゃんのインターネット/お母さんはダイエット"とポップに歌い上げられていますが、なかなかに深刻な事態が想像できてしまうので残酷な羅列ですよね。
続く"みんな夜空のパイロット/孤独を癒すムーンライト/今日は日清CUP NOODLE"も、現実の非情さと束の間の美しさが混在しているような鮮やかな描写だと思います。現代日本らしい危うさと儚さがあって素晴らしい。カップ麺の温もりと悲哀とでも言いましょうか。
サビは宇多田ヒカルお得意のどこか悲しげながらも熱量を伴っているメロディだという印象です。これだけを取り立てるなら実に彼女らしい旋律だという感想に留まるのですが、ここまでの流れ(A→B→)を考慮するとある意味ここだけ浮いているようにも思えるんですよね。
それでも決して不自然ではないのが不思議なのですが、Bで曲に別の色をきちんと持たせていたことが味噌である気がします。つまりBで微かに匂わせた切なさがサビへの布石になっていたと言いたいわけですが、このいつの間にか曲の様相が変わっているというのがこの曲の魅力ではないでしょうか。
Cメロにも二面性がありますね。前半("わたしの弱虫"まで)は歌い方も含めて結構暗めだと思うのですが、以降の後半部は"弱虫"が覚悟を決める場面が描写されているからか徐々に力強い質感が加わっていくのが素敵です。同じ"I just want you to hold me"でも2回目のほうが勇気を出した歌い方になっている。
長めに取ってあるアウトロも好きです。歌詞には無い部分ですがアドリブのボーカルと重なり合うコーラスが耳に心地良い。イントロの段階では曲の終わりがこういう感じになるというのはなかなか予想しにくいのではないかな。
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さて、「Kiss & Cry」を紹介するならばUtadaの「HOTEL LOBBY」(2004)も併せて紹介した方がいいでしょう。なぜなら「Kiss & Cry」のBメロは「HOTEL LOBBY」のAメロの流用になっているからです。
この2曲に関連性を持たせたいから敢えて行ったのか、それとも特に深い意味はなくファンサービスのようなものなのかは知りませんが、ファンなら「おっ!」と思える遊び心ですよね。
Utada名義の楽曲は好きじゃないものを探す方が難しいくらいにお気に入りの楽曲が多いのですが、その中でも「HOTEL LOBBY」は個人的トップ3には入ってくる大のフェイバリット・ナンバーです。
いくつかのループするフレーズが重なって曲を成すというダンストラック的な手法で作られていると思うのですが、それゆえに非常に中毒性が高くなっていると感じます。全部英語だとこれくらいシンプルなアレンジでも映えるなと思ったので、Utada名義で世に出たのは正解と言えるでしょう。
歌詞の世界観も好きです。もしかしたら歌詞の登場人物の関係を誤解しているかもしれませんが、僕はこう解釈したんだということでこのまま続けます。
付属ブックレットにある新谷洋子との対談の中で、この曲は「第三者の視点」で描かれていることに作詞上のこだわりがある旨が書いてあるのですが、確かに歌詞上の主人公は"私(I)"なのに、描写の中心は"彼女"について(="She"から始まるセンテンスが多い)だというのは英語ならではという感じがしますね。
そんな"I"と"She"がまみえるのが"in the mirrors of the hotel lobby"であるというのが、これまた隔たりを感じさせる表現で上手だなと思います。文法の上でも内容の描写においても距離を綺麗に切り取っているのが流石。
この曲で最もツボなのはラスト付近です。音数が減り、"Catch me because I think I'm falling / I'll be waiting in the mirrors of the hotel lobby"と新しい歌詞が登場し、印象的なシンセのシークエンスがカムバックしてくる中で"lobby"がエコーしまくるという流れ、個人的にはこれ以上ない完璧でクールな締め方だと思います。
上手く説明できませんが、ここに"falling"という単語が出てくるのもとても好きなのです。"I think I'm falling"という英語ならではの回りくどい表現も相俟ってのことだと思いますが、落ちていくのは自分なのにそれを外から客観視しているようなイメージが浮かぶところが文学的に思えるからかな。