今日の一曲!ランカ・リー「ねこ日記」【テーマ:日記】 | A Flood of Music

今日の一曲!ランカ・リー「ねこ日記」【テーマ:日記】

 【追記:2021.1.4】 本記事は「今日の一曲!」Ver. 1.0の第三十七弾です。【追記ここまで】

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 珍しく質問スタートではないのでここの前置きにはちょっとした裏話を書きますね。

 昨日の「傘の日」ではMr.Chirldrenの「傘の下の君に告ぐ」(1997)を、一昨日の「ミルクキャラメルの日」ではcapsuleの「東京喫茶」(2001)を紹介しようと思って「今日の一曲!」を途中まで書いていたのですが、当日中に最後まで書ききれずにアップを断念してしまいました…

 前者はあまりにも政治色が強くなりすぎて、後者はcapsule愛が強すぎて「今日の一曲!」に適さない文量となってしまったため、両者とも内容には割と自信があったんですが泣く泣くお蔵入りに。実は今までも結構あるんですこのケース。

 「今日の一曲!」は一応「軽めの記事」という建前で始めたのですが、それは「なるべく毎日更新」というルール上仕方のないことという意味で「軽め」としていたのです。

 しかし今は不定期更新になっているため、「どうせ書くならある程度長くしよう」という思いが沸いてしまって、今度は別の時間的な制約(=当日中にアップする)に縛られるという悪循環に陥っています。笑


 憖じ文章を長くできるようになってしまったのも遠因かな。音楽レビューブログを再開させて約1年が経ちましたが、どんどん筆が早くなっているのを実感できます。元々短期間で長文を書くことに慣れていたとはいえね。

 表現がテンプレ化してきていることや、念入りに推敲をしなくてもアップできてしまうふてぶてしさが身についてきていることなど、誉めていいんだか悪いんだか分からないようなスキルがこの1年で備わっただけ…とも言えますが。笑


 星間飛行/ランカ・リー=中島愛

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 さて、「今日の一曲!」はランカ・リー=中島愛の「ねこ日記」(2008)です。超有名曲にして名曲『星間飛行』のc/wですが、こちらも負けず劣らずの名曲ですよね。『マクロスF』では9話と12話で挿入歌、11話で特殊ED曲という使われ方でした。

 歌詞やタイトルに「日記」や「ダイアリー」を含む曲ならごまんとありますし、最近はアニソンが連続しているので出来れば避けたかったのですが、【テーマ:日記】としてはこの「ねこ日記」以上に面白い曲を知らないのでご紹介します。


 『マクロスF』の音楽といえばご存知菅野よう子さんで、「ねこ日記」も当然彼女が作編曲を手掛けた作品です。ゆえにメロディとアレンジの素晴らしさは折紙付ですし、ランカという愛らしいキャラクターがいるから…ということは重々承知の上で言いますが、「ねこ日記」で何より素晴らしいのはその歌詞です。

 それもそのはず。なぜなら作詞を手掛けているのはコピーライターとして有名な一倉宏さんだから。wikipedia…が不安ならTCCのデータベースでもいいですが、お名前を検索すれば知っているキャッチコピーのひとつやふたつすぐに見つかると思います。




 レビューの前に頭に入れておきたい情報として、この「ねこ日記」の歌詞には元ネタが存在することをご存知でしょうか?それがこの『「それぞれ」の日記たち』(2007)です。見比べてみると一目瞭然ですね。

 『Tokyo Copywriters' Street』という番組の中の一作品で、ストーリーを一倉さんが担当されています。映像作品というか朗読ありのスライドショーなのでストーリー(=原稿)となっていますが、作詩者という理解でいいはずです。

 ちなみに朗読しているのは坂本真綾さんですよ。一倉さんは真綾さんの「しっぽのうた」(2000)と「うちゅうひこうしのうた」(2003)の作詞も手掛けていらっしゃいますね。『TCS』には他にも一倉さんの詩を真綾さんが朗読したものがあるので、ファンなら抑えておきたいところです。

 「元ネタ」という言葉は一倉さんがご自身のブログの中でそう表現していらっしゃるので僕も使ったのですが、菅野さんがこの詩を気に入って曲の形にしたのが「ねこ日記」であるという旨もブログに書いてあります。


 元ネタのタイトルにある「それぞれ」がダイレクトに示している通り、「ねこ日記」には様々な"日記"が登場します。"ねこの 日記"は勿論として、他は"ブランコ"、"時計"、"宙"、"カーテン"、"ロケット"と、非生物がほとんどです。

 "ブランコの 日記には/きょうの加速度や 飛び立つ夢 書いてある"といった具合に次々と示されていくのですが、なんとも想像力豊かと言いますか、子供が持つ無垢で純真な世界を見せてもらったようであたたかな気持ちになりますね。


 しかし帰結するのは"私のくちびるの 日記"なので、子供の視点というよりは恋を覚えた少女の視点といった趣です。子供には違いないけれど、子供では片付けられないお年頃の。

 これがまた巧いです。"くちびるの 日記"だとまずどうしても"キス"を連想しますよね?もちろん最終的にはそこに落ち着くというか落ち着きたいと夢見る内容なのですが、1番の段階では"あなたのなまえ 何回呼んだか 書いてある"なんですよね。

 この発想がまず出てこなかった時点で自分は純粋じゃないなと思いました。笑 食べ物に関することすら全然浮かんでこなかったし、『「それぞれ」の日記』に何を想像するかで人間が読み解ける気がします。


 しかも直接的には"キス"という言葉を使っていないのも巧いです。歌詞中の言葉の引用なので二重引用符で囲っていますが、この"キス"は"カーテンの 日記"のくだりで出てくるものであって、ラスサビでは"あなたとのその カウントダウンを"という惚れ惚れするぐらいの婉曲表現なんですよね。

 まあ最後に英語で"kissing you"と出てきてはいるんですが、そこは照れ隠しというか…これも一種の婉曲表現でしょうから、あくまでも間接的だという主張で筋を通そうと思います。これは少女らしいというか女性らしい感性だと思うので、一倉さんの鋭さに敬服します。


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