今日の一曲!早見沙織「その声が地図になる」【テーマ:地図】
【追記:2021.1.4】 本記事は「今日の一曲!」Ver. 1.0の第三十五弾です。【追記ここまで】
んー、まあ読めなくはないと思う。地図を見ているのに迷うということはまずないから。一般的に女性の方が地図を読むのが苦手と言われていますが(某有名書籍のせいでしょう)、経験上これはあっていると思います。笑 フォローをした経験が多々あるゆえ。
ただこれは性差によるものではなく、社会が作り上げたイメージに(無意識に)従っているだけだという反論もあるそうですね。そう考えると僕も「自分は男だから地図が読めて当然!」と思わされているだけの可能性もあるということか。
これは自分の能力に対する認識はもちろん、他人に対して期待する能力の認識でもあるだろうから厄介だね。「実は性差なんてないんだよ」と言われたところで、全員がこの知識を共有していない限り、男である自分は地図を読めることが期待されてしまうだろうから。
今日のテーマは「今日は何の日?」的には【測量】にすべきなんでしょうけど、少し変えて【地図】でいきます。去る4月19日にずばりそのまま「地図の日」があったのですが、そのタイミングで更新し損ねたものがあるので、似たようなお題が来たのは朗報。
早見沙織 / 「Installation/その声が地図になる」 TVアニメ「赤髪の白雪姫」新オ.../ワーナー・ホーム・ビデオ

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そんな【テーマ:地図】で紹介するのは、早見沙織の2ndシングル(両A面)のうちの一曲「その声が地図になる」(2016)です。TVアニメ『赤髪の白雪姫』2ndシーズンOP曲。
なぜ4/19のタイミングで更新し損ねたのかというと、その時点ではまだアニマックスの再放送を観ている途中だったからです。笑 当然「その声が地図になる」が収録されたCDもまだ持っていなかったので、レビューには時期尚早だと判断した次第。
再放送を全話視聴後、1stシーズンのOP曲も入っているということで早見さんの1stアルバム『Live Love Laugh』(2016)に手を出しました。OPで聴いた時から好きでしたが音源で聴いてみて更に好きになったので、「その声が地図になる」はいつかレビューしたいなと思っていました。
「Live Love Laugh」<通常盤>/ワーナー・ホーム・ビデオ

¥3,024
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ならば早速レビューだ!…といきたいところですが、楽曲の前にまずは『赤髪の白雪姫』について語らせてください。主題歌及び劇伴を気に入ったのはアニメ自体がとても面白かったからというのが多分にあるので、音楽の魅力を伝えるための手段です。
…といつつ実はこっちがメインなのでここから長文です。笑 しかし上に書いたことも嘘ではないので、楽曲レビューにとっても意味のある記述にはしたつもりです。
TVアニメ『赤髪の白雪姫』はあきづき空太さんによる同名の漫画が原作の作品ですが、2006年から始まって現在も連載中という10年超えの長期連載なのに恥ずかしながら知りませんでした。月刊少女漫画誌まではカバーしていなかったもので。
つまり普段は興味の外ということですし、再放送を観ようと決めた時点でも「つまらなかったら切ろう」ぐらいの軽い気持ちでいました。
…ところがどっこい、いざ観始めるとこれが非常に面白い!全24話を一日2話連続、月~金で放送していたので3週間程で観終えましたが、その後に喪失感を覚えるぐらいには好きになっていました。
何がそこまで僕の琴線にふれたのか?以下、作品の魅力を書き連ねていきます。大別して2つの要素に絞ることが出来ました。
魅力その1:健全な内容
『赤髪の白雪姫』はとても「健全」なアニメです。小さい子が観ても何の問題もないと思うし、むしろ教育上好影響を与えるアニメだと思うのでEテレで再放送してもいいんじゃないかな。
健全といってもストーリーにはきちんと起伏があるので無味無臭という意味ではないし、完全に悪意を排した世界というわけでもないのでハラハラする展開もありますが、その着地点は概ね正しいというか、登場人物達の成長譚として過不足なく機能していると思います。
画的な派手さが無いというのも健全だと思う理由の一つです。ここでいう「派手さが無い」とは魔法やモンスター等のファンタジー存在が出てこないという意味で、要は中世が舞台のテンプレラノベアニメのような画面の煩さが無いところが評価できるということです。
基本的に王宮が舞台であるためキャラも背景もビジュアル自体は華やかだし美しいんですよ。それだけで完成しているので、余計な装飾は却ってマイナスになるということがよくわかっている。再度書きますが、あくまでも画の話です。
「健全」を換言して強引にまとめると、『赤髪の白雪姫』って凄く「普通」のアニメなんだと思います。この場合の普通とは「王道」とか「丁寧」に近い意味合いでして、久々に普通のアニメで面白いものに出会えたなというのが率直な感想です。
作画がとんでもなく良いとか動きが凄いとかストーリーが複雑だとかいったことよりも、丁寧に王道を歩むという基本を押さえたほうが強いということを再認識しました。結果的にそのほうがキャラの掘り下げも進むし、ストーリーにも深みが生まれるのだなと。
一昔前まではこれが普通だったと思うので僕は「普通」と表現したのですが、現在は王道がやりつくされて邪道に走った結果丁寧でなくなるという作品が多い気がします。
王道だろうが邪道だろうが、評価されるのは丁寧に作ってある(世界観/キャラ設定が固まっていて、描写が的確な)作品だと思うんですけどね。
魅力その2:白雪というキャラクター
これはキャラメイキング(デザイン+中身)が非常に良いという意味なので白雪に限定しなくてもいいのですが、魅力的なキャラばかりの中で彼女は更に飛び抜けていると思うので、代表して見出しに据えました。流石主人公。
唐突ですが「ヒロイン力(ひろいん・りょく)」という言葉があります。その意味するところは各人にとって区々でしょうから説明は省きますが、白雪は稀に見る圧倒的ヒロイン力を誇るキャラであると僕は主張します。笑
普通この言葉は女の子がたくさん出てくるラブコメモノ(主人公が最終的に一人を選ぶ作品)でよく使われると思いますが、『赤髪の白雪姫』はこれに該当しませんし、大筋としては白雪とゼン王子が互いに惹かれあっていくという展開なので、ヒロイン力という言葉は適さないかもしれません。
しかし白雪はゼン王子だけでなく多くの人を魅了していきます。それは恋愛感情とは限りませんし性別も関係ありませんが、神の視点で全てを知る視聴者にとっては、白雪という可憐な花を巡って誰もが水を遣りたい感情に駆られているように思えるのです。笑
「魅了していく」といっても白雪自身には特にその気はないはずです。しかし赤髪という珍しい外見から、好意や悪意を引き寄せやすいというのがまず第一段階にあります。具体的に容姿のレベルに言及した台詞があったかは忘れましたが、おそらく作中でも(赤髪は関係なく)美人という扱いだと思います。
しかしこれは外見に限った話。白雪の真の魅力はその人となりのほうにこそあり、作中のキャラが白雪を好む理由と視聴者が白雪を好む理由は、この点で一致していると思います。芯が強い、真摯、気丈、豪胆…あたりの言葉が浮かびますが、ともかく強い女性の理想像であると僕は思います。
ここでいう「強い女性」とは、きちんと隙もある…というか必要に応じて周りを頼れるところまで成熟している人をイメージしています。同じ強い女性でも「孤高の人」ではないタイプ。白雪は物語が進むにつれて良い意味で隙を作っていくのが上手い子だなと感じました。
白雪ばかりを誉めていますが、白雪の成長が見事なのにはゼンを含めた周囲の面々が同様に魅力的であるからというのが勿論あります。少女漫画だからというのが理由になるかは微妙ですが、どちらかといえば男キャラの多様性こそが白雪を更に輝かせていると思います。
ゼンはまあ当然として、オビ、リュウ、ラジとの交流も重要なファクターですよね。僕は特にオビが好きで、オビの白雪に対するスタンスがいちばんいいなと思っています。高みを目指す白雪もいいけど、自然体で歩く白雪を引き出す方が素敵だと思うから。ゼンには悪いけど。笑
リュウもなかなか巧いキャラ設定だと思います。白雪にとっては年下の上司にあたるわけですが、それによって一個人(子供)として見た場合の母性と、先輩薬剤師として見た場合の尊敬がブレンドされて、一度に多層的な表情を発露させているのが味わい深い。
ラジはとにかくその成長性ね。笑 始めこそ「なんだコイツ」という感じですが、白雪との出逢いによっていちばん成長したのは彼で間違いないでしょう。タンバルンを単に「後にした国」で終わらせていないところにも好感が持てます。
ゼンについては書ききれないので割愛しますが、ここまでの説明で白雪の持つ圧倒的ヒロイン力が少しでも伝われば幸いです。
魅力その3:アトリエシリーズ好きにはたまらない?
最後のこれは個人的な趣味が理由なので大別したうちには入れませんでしたが、ゲームのアトリエシリーズが好きだという人は、『赤髪の白雪姫』の世界観や雰囲気に共通のものを見出して気に入るのではないでしょうか。
恋愛要素を抜きにして白雪のキャリアに注目すれば、(宮廷)薬剤師奮闘記アニメとして観ることもできるので、マルチエンドのうちの一つかななんて妄想してしまうわけです。笑
以上、僕の『赤髪の白雪姫』愛でした。こういうタイプの作品をここまで好きになるというのは完全に予想外だったので、この「好き」をどこかで発散したかったのです。リアルタイムで観られなかったことが悔やまれる。
さて、ここからようやく「今日の一曲!」に入ります。忘れていませんよ。笑 ここまで白雪の魅力をこれでもかと伝えてきましたが、まだふれていないのが「声」です。つまりCVを担当している早見沙織さんの演技のことですが、これがとても素晴らしい!個人的にはいちばんのハマリ役だと思っています。
彼女の声を聞かない日は冗談抜きでないというぐらい売れっ子で主役ばかりやっているイメージですが、第二次アニヲタ期(2015年~)から知った声優さんの中ではいちばん好きです。散々言われていますが能登麻美子さんの声にそっくりですよね。
とはいえ最近は区別がつくようになってきました。能登さんの声が流石に大人びたというか、ようやく今の能登さんの声が耳に染みついてきたので、別だとわかるようになりました。それでもとても近い声質だとは思いますけどね。
1st/2ndシーズン共にOP曲は彼女が歌唱する楽曲が使われていて、今回紹介する2ndOP曲「その声が地図になる」は、矢吹香那さんという方と共作ですが作詞作曲も彼女自身によるものというマルチな才能っぷりを堪能できます。
サビ始まりで幕開け。緊張感をはらむ重厚なストリングスによる前奏は、1stOP曲「やさしい希望」からは感じられなかったような厳しい物語性を予感させます。実際2ndシーズンのほうが内容が重いですし、予感は正しかった。
Aメロは低音ボーカルも魅力的ですが、バックで鳴っている電子音?がいちばんツボです。ゲームでいったら森のステージで聴こえてきそうな、妖精とか謎の光が舞っている情景が浮かんできそうな音。
Bメロで曲に少し明るい色が加わります。Aはアレンジもそうですがメロディも暗いですから。しかしBは優雅な旋律だなといった印象で、サビへ向けての助走といった趣。徐々に力強くなっていくボーカルも見事です。
そしてサビ。とにかく疾走感のあるメロディとアレンジだと思います。先に物語性のことを書きましたが、一気に加速するストーリーと変化していくキャラの関係性を上手く表現していると思います。
特に"時も向かい風もすべて越えて"のところがいちばん好きで、一時期ここばかりリピートしていました。笑 個人的にこの部分は美メロ of 美メロだと思う。1番では繊細で流麗に歌い上げられていますが、ラスサビでは力強く歌われているという変化も素晴らしいです。
これは若干脱線しますが、"心の奥に"のあとに入るドラム、それ単体では特になんとも思わないのですが、アニメOPではこのドラムが鳴るときにラジが手首をスナップさせるから、ラジの手首がグキッと鳴った(というギャグな)のかと思ってびっくりしました。笑
そんなギャグ入れるわけがないとわかっていても、ラジに関しては一瞬あるかも?と思わされてしまいました。格好良く決めてもどこかしまらない感じの表現なのかなと。要はここのドラムだけちょっとベロシティが強いんだね。馬が駆けていくようなイメージのドラムだと思う。
タイトルの「その声が地図になる」というのも作品を綺麗に描写していて素敵ですね。少女漫画らしくというか姫と王子らしくというか、なにかと引き離されがちな白雪とゼンですが、互いの信頼が存在を導き合って何度でも巡り合えるというのがまさに王道で気持ち好いです。
2番後そのまま突入する格好良いCメロの歌詞、"絆 必ず繋がると/信じてくれたのは/君だよ"に二人の関係性が端的に表現されていると思います。
赤髪の白雪姫 Original Soundtrack 音楽:大島ミチル/大島ミチル

¥3,240
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サントラも非常に良かったです。なんてったって大島ミチルさんという安心感ですから。特に気に入った上位3曲は、26.「白雪・その真摯な姿勢」、15.「オビ」、12.「親しき側近たち」です。
特に26.はメインテーマとでもいうのかな?他にも「白雪」を冠する曲がいくつかありますが、この美しく可憐なストリングスを聴くと、作中の様々な場面が脳裏を駆け巡っていきます。
思ったよりだいぶ長文になってしまいましたが、音楽も含めて『赤髪の白雪姫』はとても素晴らしいアニメです。アニメ初心者にも勿論薦めやすいですが、昔ながらの良さがある作品だと思うので、僕みたいにブランクのあるアニヲタや今のアニメに食傷気味の人にこそ刺さるんじゃないかな。良い清涼剤となること請け合いですよ。
地図、読める?
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んー、まあ読めなくはないと思う。地図を見ているのに迷うということはまずないから。一般的に女性の方が地図を読むのが苦手と言われていますが(某有名書籍のせいでしょう)、経験上これはあっていると思います。笑 フォローをした経験が多々あるゆえ。
ただこれは性差によるものではなく、社会が作り上げたイメージに(無意識に)従っているだけだという反論もあるそうですね。そう考えると僕も「自分は男だから地図が読めて当然!」と思わされているだけの可能性もあるということか。
これは自分の能力に対する認識はもちろん、他人に対して期待する能力の認識でもあるだろうから厄介だね。「実は性差なんてないんだよ」と言われたところで、全員がこの知識を共有していない限り、男である自分は地図を読めることが期待されてしまうだろうから。
今日のテーマは「今日は何の日?」的には【測量】にすべきなんでしょうけど、少し変えて【地図】でいきます。去る4月19日にずばりそのまま「地図の日」があったのですが、そのタイミングで更新し損ねたものがあるので、似たようなお題が来たのは朗報。
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再放送を全話視聴後、1stシーズンのOP曲も入っているということで早見さんの1stアルバム『Live Love Laugh』(2016)に手を出しました。OPで聴いた時から好きでしたが音源で聴いてみて更に好きになったので、「その声が地図になる」はいつかレビューしたいなと思っていました。
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TVアニメ『赤髪の白雪姫』はあきづき空太さんによる同名の漫画が原作の作品ですが、2006年から始まって現在も連載中という10年超えの長期連載なのに恥ずかしながら知りませんでした。月刊少女漫画誌まではカバーしていなかったもので。
つまり普段は興味の外ということですし、再放送を観ようと決めた時点でも「つまらなかったら切ろう」ぐらいの軽い気持ちでいました。
…ところがどっこい、いざ観始めるとこれが非常に面白い!全24話を一日2話連続、月~金で放送していたので3週間程で観終えましたが、その後に喪失感を覚えるぐらいには好きになっていました。
何がそこまで僕の琴線にふれたのか?以下、作品の魅力を書き連ねていきます。大別して2つの要素に絞ることが出来ました。
魅力その1:健全な内容
『赤髪の白雪姫』はとても「健全」なアニメです。小さい子が観ても何の問題もないと思うし、むしろ教育上好影響を与えるアニメだと思うのでEテレで再放送してもいいんじゃないかな。
健全といってもストーリーにはきちんと起伏があるので無味無臭という意味ではないし、完全に悪意を排した世界というわけでもないのでハラハラする展開もありますが、その着地点は概ね正しいというか、登場人物達の成長譚として過不足なく機能していると思います。
画的な派手さが無いというのも健全だと思う理由の一つです。ここでいう「派手さが無い」とは魔法やモンスター等のファンタジー存在が出てこないという意味で、要は中世が舞台のテンプレラノベアニメのような画面の煩さが無いところが評価できるということです。
基本的に王宮が舞台であるためキャラも背景もビジュアル自体は華やかだし美しいんですよ。それだけで完成しているので、余計な装飾は却ってマイナスになるということがよくわかっている。再度書きますが、あくまでも画の話です。
「健全」を換言して強引にまとめると、『赤髪の白雪姫』って凄く「普通」のアニメなんだと思います。この場合の普通とは「王道」とか「丁寧」に近い意味合いでして、久々に普通のアニメで面白いものに出会えたなというのが率直な感想です。
作画がとんでもなく良いとか動きが凄いとかストーリーが複雑だとかいったことよりも、丁寧に王道を歩むという基本を押さえたほうが強いということを再認識しました。結果的にそのほうがキャラの掘り下げも進むし、ストーリーにも深みが生まれるのだなと。
一昔前まではこれが普通だったと思うので僕は「普通」と表現したのですが、現在は王道がやりつくされて邪道に走った結果丁寧でなくなるという作品が多い気がします。
王道だろうが邪道だろうが、評価されるのは丁寧に作ってある(世界観/キャラ設定が固まっていて、描写が的確な)作品だと思うんですけどね。
魅力その2:白雪というキャラクター
これはキャラメイキング(デザイン+中身)が非常に良いという意味なので白雪に限定しなくてもいいのですが、魅力的なキャラばかりの中で彼女は更に飛び抜けていると思うので、代表して見出しに据えました。流石主人公。
唐突ですが「ヒロイン力(ひろいん・りょく)」という言葉があります。その意味するところは各人にとって区々でしょうから説明は省きますが、白雪は稀に見る圧倒的ヒロイン力を誇るキャラであると僕は主張します。笑
普通この言葉は女の子がたくさん出てくるラブコメモノ(主人公が最終的に一人を選ぶ作品)でよく使われると思いますが、『赤髪の白雪姫』はこれに該当しませんし、大筋としては白雪とゼン王子が互いに惹かれあっていくという展開なので、ヒロイン力という言葉は適さないかもしれません。
しかし白雪はゼン王子だけでなく多くの人を魅了していきます。それは恋愛感情とは限りませんし性別も関係ありませんが、神の視点で全てを知る視聴者にとっては、白雪という可憐な花を巡って誰もが水を遣りたい感情に駆られているように思えるのです。笑
「魅了していく」といっても白雪自身には特にその気はないはずです。しかし赤髪という珍しい外見から、好意や悪意を引き寄せやすいというのがまず第一段階にあります。具体的に容姿のレベルに言及した台詞があったかは忘れましたが、おそらく作中でも(赤髪は関係なく)美人という扱いだと思います。
しかしこれは外見に限った話。白雪の真の魅力はその人となりのほうにこそあり、作中のキャラが白雪を好む理由と視聴者が白雪を好む理由は、この点で一致していると思います。芯が強い、真摯、気丈、豪胆…あたりの言葉が浮かびますが、ともかく強い女性の理想像であると僕は思います。
ここでいう「強い女性」とは、きちんと隙もある…というか必要に応じて周りを頼れるところまで成熟している人をイメージしています。同じ強い女性でも「孤高の人」ではないタイプ。白雪は物語が進むにつれて良い意味で隙を作っていくのが上手い子だなと感じました。
白雪ばかりを誉めていますが、白雪の成長が見事なのにはゼンを含めた周囲の面々が同様に魅力的であるからというのが勿論あります。少女漫画だからというのが理由になるかは微妙ですが、どちらかといえば男キャラの多様性こそが白雪を更に輝かせていると思います。
ゼンはまあ当然として、オビ、リュウ、ラジとの交流も重要なファクターですよね。僕は特にオビが好きで、オビの白雪に対するスタンスがいちばんいいなと思っています。高みを目指す白雪もいいけど、自然体で歩く白雪を引き出す方が素敵だと思うから。ゼンには悪いけど。笑
リュウもなかなか巧いキャラ設定だと思います。白雪にとっては年下の上司にあたるわけですが、それによって一個人(子供)として見た場合の母性と、先輩薬剤師として見た場合の尊敬がブレンドされて、一度に多層的な表情を発露させているのが味わい深い。
ラジはとにかくその成長性ね。笑 始めこそ「なんだコイツ」という感じですが、白雪との出逢いによっていちばん成長したのは彼で間違いないでしょう。タンバルンを単に「後にした国」で終わらせていないところにも好感が持てます。
ゼンについては書ききれないので割愛しますが、ここまでの説明で白雪の持つ圧倒的ヒロイン力が少しでも伝われば幸いです。
魅力その3:アトリエシリーズ好きにはたまらない?
最後のこれは個人的な趣味が理由なので大別したうちには入れませんでしたが、ゲームのアトリエシリーズが好きだという人は、『赤髪の白雪姫』の世界観や雰囲気に共通のものを見出して気に入るのではないでしょうか。
恋愛要素を抜きにして白雪のキャリアに注目すれば、(宮廷)薬剤師奮闘記アニメとして観ることもできるので、マルチエンドのうちの一つかななんて妄想してしまうわけです。笑
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さて、ここからようやく「今日の一曲!」に入ります。忘れていませんよ。笑 ここまで白雪の魅力をこれでもかと伝えてきましたが、まだふれていないのが「声」です。つまりCVを担当している早見沙織さんの演技のことですが、これがとても素晴らしい!個人的にはいちばんのハマリ役だと思っています。
彼女の声を聞かない日は冗談抜きでないというぐらい売れっ子で主役ばかりやっているイメージですが、第二次アニヲタ期(2015年~)から知った声優さんの中ではいちばん好きです。散々言われていますが能登麻美子さんの声にそっくりですよね。
とはいえ最近は区別がつくようになってきました。能登さんの声が流石に大人びたというか、ようやく今の能登さんの声が耳に染みついてきたので、別だとわかるようになりました。それでもとても近い声質だとは思いますけどね。
1st/2ndシーズン共にOP曲は彼女が歌唱する楽曲が使われていて、今回紹介する2ndOP曲「その声が地図になる」は、矢吹香那さんという方と共作ですが作詞作曲も彼女自身によるものというマルチな才能っぷりを堪能できます。
サビ始まりで幕開け。緊張感をはらむ重厚なストリングスによる前奏は、1stOP曲「やさしい希望」からは感じられなかったような厳しい物語性を予感させます。実際2ndシーズンのほうが内容が重いですし、予感は正しかった。
Aメロは低音ボーカルも魅力的ですが、バックで鳴っている電子音?がいちばんツボです。ゲームでいったら森のステージで聴こえてきそうな、妖精とか謎の光が舞っている情景が浮かんできそうな音。
Bメロで曲に少し明るい色が加わります。Aはアレンジもそうですがメロディも暗いですから。しかしBは優雅な旋律だなといった印象で、サビへ向けての助走といった趣。徐々に力強くなっていくボーカルも見事です。
そしてサビ。とにかく疾走感のあるメロディとアレンジだと思います。先に物語性のことを書きましたが、一気に加速するストーリーと変化していくキャラの関係性を上手く表現していると思います。
特に"時も向かい風もすべて越えて"のところがいちばん好きで、一時期ここばかりリピートしていました。笑 個人的にこの部分は美メロ of 美メロだと思う。1番では繊細で流麗に歌い上げられていますが、ラスサビでは力強く歌われているという変化も素晴らしいです。
これは若干脱線しますが、"心の奥に"のあとに入るドラム、それ単体では特になんとも思わないのですが、アニメOPではこのドラムが鳴るときにラジが手首をスナップさせるから、ラジの手首がグキッと鳴った(というギャグな)のかと思ってびっくりしました。笑
そんなギャグ入れるわけがないとわかっていても、ラジに関しては一瞬あるかも?と思わされてしまいました。格好良く決めてもどこかしまらない感じの表現なのかなと。要はここのドラムだけちょっとベロシティが強いんだね。馬が駆けていくようなイメージのドラムだと思う。
タイトルの「その声が地図になる」というのも作品を綺麗に描写していて素敵ですね。少女漫画らしくというか姫と王子らしくというか、なにかと引き離されがちな白雪とゼンですが、互いの信頼が存在を導き合って何度でも巡り合えるというのがまさに王道で気持ち好いです。
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特に26.はメインテーマとでもいうのかな?他にも「白雪」を冠する曲がいくつかありますが、この美しく可憐なストリングスを聴くと、作中の様々な場面が脳裏を駆け巡っていきます。
思ったよりだいぶ長文になってしまいましたが、音楽も含めて『赤髪の白雪姫』はとても素晴らしいアニメです。アニメ初心者にも勿論薦めやすいですが、昔ながらの良さがある作品だと思うので、僕みたいにブランクのあるアニヲタや今のアニメに食傷気味の人にこそ刺さるんじゃないかな。良い清涼剤となること請け合いですよ。