80:XX - 05060708 / 80KIDZ | A Flood of Music

80:XX - 05060708 / 80KIDZ

 80KIDZによる「80(ハチ・マル)シリーズ」、その第5~8弾までを1枚にまとめたディスク『80:XX - 05060708』のレビュー・感想です。配信EPに収録されていない新曲も収録されています。

80:XX-05060708/AWDR/LR2

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 第5/6弾にあたる『80:05』および『80:06』(共に2017)に関しては、当ブログでは既にレビュー済みなのでリンク先を参照してください。よって、この記事では上記2作品に収録されている7曲については割愛します(※1曲だけ例外あり)。

 前者の記事には第4弾までをまとめた『80:XX - 01020304』(2013)についての簡単な紹介もあるので、「80シリーズとは何ぞや?」といった疑問をお持ちの方もぜひご覧ください。というわけで概要説明も同様に割愛とし、早速レビューに入りたいと思います。


01. Reversed Note

 『80:05』のレビュー記事を参照。

02. IFDB

 『80:06』のレビュー記事を参照。



 ※「割愛」と言っておいてなんなのですが、この「IFDB」は前にレビューした時よりも更に大好きになったトラックなので再レビューします。視聴動画も再度埋め込み(「IFDB」は動画2:00~です)。


 前のレビューでは「トライバル」「プリミティブ」「先祖返りダンスチューン」なんて言葉で形容しましたが、想定している以上に僕の原始的な何かを揺さぶるトラックであったのか、延々と聴いていられるような凄まじい中毒性を誇るマスターピースだと改めて高評価。

 フロアライクゆえいつも以上にシンプルさを売りにしているのが80シリーズの特徴だと思いますが、「IFDB」はその中では比較的凝っていてバランスが良いと感じるので、創作意欲を刺激されるというのも好きの理由かも。こういう部族っぽい曲、作ってみたいなと思う。


 以前は書きませんでしたが、最初に聴いた時はCAPSULEの「Dee J」(2012)っぽいなと思ったんですよね。「Dee J」も好きだけどシンプル過ぎるとも思うので、「IFDB」はその物足りなさを解消してくれた感があります。

 「部族っぽい」ダンストラックといえばThe Chemical Brothersの「It Began in Afrika」(2001)も浮かびますし、タイトルもおそらくダンスミュージックの発祥(ビート感と集団で踊る文化)に言及したものだと思っていますが、トラックメイカー的には切り離せないルーツの一つですよね。

 そういえば「It Began in Afrika」はクラブDJ向けの「Electronic Battle Weapon 5」が元だし、コンセプトは80シリーズと似たようなもかも。


03. No Wave

 『80:05』のレビュー記事を参照。


04. Adolescentes



 『80:08』(2017)収録曲。やばい、めちゃくちゃ格好良い。今作の中では「IFDB」と双璧をなす個人的大ヒット。コケティッシュな女性ボーカルのサンプリングが心地好い、小悪魔エレクトロといった趣。

 タイトルはフランス語やスペイン語に見られる表記だと思いますが、英語で言えば"adolescent"…つまり"青春期の(人)"ということでしょう。確かにトラックの攻撃性にはティーンエイジャーの、そしてボーカルのセクシーさには背伸びしたガーリー感が含まれていると感じるので納得の題&音。

 最初はコード進行が狙いすぎていてちょっと鼻につくというか、もっとコードの数を減らしたほうが格好良いんじゃないかとも思いましたが、気付けば身体を動かされているのでフロア向けとしてはこれがベストなのでしょう。ボーカルが消える3:39~のグルーヴを味わったら大正解だと思えました。


05. Pearl

 『80:07』(2017)収録曲。第7弾も先に配信EPを買っていましたがレビューはしませんでした。2曲しか入っていない上に正直どちらもパンチがないなと思っちゃったので。

 だがしかし、改めてアルバムで聴くと結構好きだぞ「Pearl」。笑 ブザーの如くにうるさいイントロで幕を開けて、ちょっとコミカルに響く太いサウンドへと移行する感じは好み。

 でも0:46~幾度か挿入されて曲のメインを担う鍵盤のパートは、(80KIDZという範囲の中において)既聴感がある気がしたのであんまし。この部分がなくてブザーとコミカルのサンドイッチだけだったらもっとツボでした。


06. Butter

 『80:05』のレビュー記事を参照。


07. Bougie

 『80:06』のレビュー記事を参照。


08. Etape02

 『80:06』のレビュー記事を参照。


09. Get Back

 『80:07』収録曲。タイトル通り"Get Back"が連呼されまくるダーティーな印象のトラック。これもよく聴くと結構作り込みがしっかりしているし、ビートには自分好みのちょうどいいアホさ加減があるし、05.「Pearl」のところで若干ディスってしまったのが不思議なぐらい。

 たぶん『80:07』収録の2曲はアルバム曲として映えるタイプだったのではと思います。単独で聴くと物足りなくても、流れの中ではいいスパイスになっている。


10. Loup

 『80:06』のレビュー記事を参照。


11. Vert

 『80:08』収録曲。途中どこかでひねってくるかと思いきや、どシンプルのまま最後まで押し通す硬派なダンストラック。

 ひとつ前の10.「Loup」に関して、前のレビュー記事では「アクションゲーのBGM」という表現を使ったのですが、続くこの「Vert」からも同じようにゲーム音楽っぽい印象を受けます。曲自体がシンプルだから、撃たれたオブジェクトがサウンドを鳴らして音楽をなすようなタイプのシューティングゲーにあいそう。


12. Exit

 『80:08』収録曲。次がボートラなので事実上のラストトラック。だからかはわかりませんが「Exit」と〆っぽいタイトル。

 収録時間7:15と80KIDZの中ではだいぶ長尺のナンバーです。7分超えはリミックスを除けば「LIFE BEGINS AT EIGHTY」(2008)以来ではなかろうか。

 イントロ(0:30まで)だけ聴くと宇宙船あるいは近未来的な飛行機のデパーチャーのようなイメージが脳内に浮かびます。その後2分間ほど焦らされて、マシンボイスを挟んで2:30~鮮やかに。

 宇宙船ならば大気圏外、飛行機ならば雲の上に突き抜けた感じがします。このように長い焦らしからの爆発という、緩急のある展開を見せるのが特徴ですね。

 80シリーズは帯の説明にもあるように「コンセプトに縛られず」というのが要のようですが、〆にきちんと〆っぽい曲を持ってこれるのは、ナンバリングのあるアルバムでも80シリーズでも変わらないなと思います。


13. Labo

 ボーナストラックは配信EP未収録の新曲。なんかタイトルに既視感があるぞ?と思ったら、前の80コンピ『80:XX - 01020304』のボートラが「I Got It! (Theme of LA BOO)」だったからだわ。笑 「LA BOO」と「Labo」でややこしい。

 美しい音遣いと空間処理が神秘的な雰囲気を醸している切な系エレクトロですね。かなり好きです。ダンスチューンでこの哀愁を出せるのが80KIDZの強みだと思いますし、ひいては日本人的だなと思います。

 あまり80シリーズっぽくはない曲だと思いますし、だからこそボートラ扱いなのかもしれませんが、普段の…というか昔の80KIDZのほうが好きだという方にもこの曲はおすすめできるのではないでしょうか。はっきりとした主旋律があるので馴染みやすいと思うから。



 以上全13曲でした。こうして並べるとなかなかバラエティ豊かだなという印象です。言い方をかえれば『80:XX - 01020304』ほどの統一感はないと感じるということでもありますが、同じようなディスクがもう1枚出来るぐらいなら進化を選んだ方が賢いと思うので、かなり満足です。

 単純なEDMだけが人を踊らせるわけではありませんからね。人間はもっと多様なダンスチューンで踊れるんだということを示してくれたようで、なかなか意義のあるアルバムだと思います。


 いちばんのお気に入りはやはり02.「IFDB」…といいたいところだけど、04.「Adolescentes」に浮気しそう。『80:08』だけはアルバムリリースも近いということで買うのを見送っていたからまだ真新しく感じているだけかもしれないけど、相当ツボだったのは間違いない。

 13.「Labo」もかなり良いですね。聴いているとなんだか涙が出てきそうになる。桜が舞う頃に外で聴いたら落涙しそう。というか「季節」自体を感じ取れるトラックな気がする。夏の夜に打上花火を観ながらでも、秋の月に思いを馳せていても、冬のネオン街を独歩していても、この主旋律が胸を締め付けてくる予感がします。この先1年かけてそういう楽しみ方をしよう。


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