おわかりいただけただろうか




〜の続き〜



サイバーナイフ2日目にして最終日。





初日は異様に緊張していたが、

特に痛くもかゆくもないことがわかれば、

リラックスして施術を受けることができた。



放射線技師の今日のBGMチョイスは、

カフェで流れそうな小粋なジャズで、

突然沸き起こるエモーショナルな衝動と戦わずに済む。



あとはひたすら身動きせず、

時の流れるままに身を任せればよいだけである。




放射線治療でじっとしている、

というのは結構ヒマである。


目の前で動いている物体は、患部に放射線を照射しているロボットアームだけだ。



様々な角度で動くアームのジョイント部分は、3つのネジで止められていた。






じーっと見ているうちに、

だんだんと顔に思えてくる。



黒い点が3つあると人の顔に見える、

いわゆるシミュラクラ現象と呼ばれるやつだ。





おわかりいただけただろうか(二度目)




サイバーナイフ『イマ ナオシテ マスカラネ』



あまりヒマすぎて、

目の前のサイバーアームが語りかけてくる。



ぐるぐる動きながら、

誤差1ミリ以内の患部を狙い撃つ凄腕ロボットだ。

不安な患者を慰めるなど朝メシ前なのだろう。



サイバーナイフ『ワタシニ カカレバ アンシン デスヨ』



さすがは最先端サイバーナイフ。


妄想の産物とはいえ、

ずいぶんと頼もしいことを言ってくれる。


その調子で骨転移を駆逐してほしい。



サイバーナイフ『アッ』



どうしたサイバーナイフ。



サイバーナイフ『…………』



サイバーナイフ?

サイバー……ナイフ???



サイバーナイフ『ナンデモ アリマセン ダイジョウブ』


えっ やだ。

びっくりさせやがって、サイバーナイフったら。



………本当に、大丈……夫なの…?




放射線技師「おつかれさまでしたー」




脳内でサイバーナイフと小芝居を繰り広げていたら、

無事今日の治療も終わった。



施術中、グルグルと腕を回していたサイバーナイフは今は静かに鎮座している。

気持ち誇らしげな様子で、私を見下ろしていた。