〜の続き〜







いよいよサイバーナイフの時が来た。



SF感あふるるロボットアームの前で、

両手を上げたままおのれの型に収まる。



トモセラピーより、

サイバーナイフのほうが照射時間が長い。



そのせいか、室内には邦楽のFMが流れていた。

曲はLISAの『炎』。

劇場版鬼滅の刃の主題歌だ。


エモなイントロに炙り出され、


煉獄さん!


という炭治郎気分が高まった。



しかしアニメしか観てないニワカなので、

煉獄さんに対しては

『メシをうまそうに食う人』

くらいの印象しかない。



顔のかゆみと煉獄さんの眉毛に思いを馳せていたら、

ついにロボットアームが動き出した。



ロボットアームがぐるぐる回りながら、

こちらの胸骨転移箇所を狙い打つ。


実際には放射線は目に見えないので、

狙い打っているだろうということしかわからない。


ひたすらぐるぐる回るロボットアームを、

目で追うだけである。


患部追跡機能がついているので、

呼吸で動く局部のズレくらいはカバーできるし、

その誤差1ミリ以下。


じっとしながら、なるべく局部ピンポイントで当ててくるようにと、ロボットに祈ることしかできない。




ひたすら私の周りを旋回するロボットアームを見ていたら、不思議な既視感を覚えていた。



大昔のSFアニメやSFまんがに出てきた、

ロボットアームの先端から謎治療ビームを出す未来の医療機器、


あれの前に身をさらしているのである。



あの頃、SF作家が想像した未来に、

今我々は生きているのだ。



いつからかSFの医療機器は、

入ってるとなぜか治癒する謎カプセルに変わっちまったよな……。


あれもいつの日にか実現するんだろか……。

てか、高気圧酸素療法がそれに近いのか……。

つまり、もう、未来じゃん……。



特に詳しくもないSFに思いを馳せていると、

ハイテクロボットアームの動きがぴたりと止まり、

初日の治療は終わった。




あと4日。

サイバーアームはあと1日である。