それから1週間、あまり仕事も手に着かない程、

ハルカとの事を考え、悩み、苦しんでいました。


本命の彼女の事も大事。

でもハルカを想う気持ちが止まらなくて、純粋に悩んでいました。


≪この間はスイマセンでした。無理に何度も誘ってしまって・・・≫

≪僕の事、嫌いになったでしょ。もともとスキじゃなかったかな≫


そんな苦しさから逃れる方法は別の楽しさへ意識を向ける事。

でも残念ながら別の楽しさは、ハルカとのメール以外に思いつかない。


≪こちらこそスミマセン。全然気にしてないですよ~☆≫

≪それより何度もお願いする野武士さんが可愛かったです♪≫


そしてどこまでも無邪気なハルカのメールにまた悩まされ、

出口のない苦しみを味わう感情になりました。


≪電話、してもいいですか?≫

≪ちょっと話したい事があって・・・番号教えてもらえますか?≫


今の二人の関係や気持ちをハッキリさせたくて、

何よりも今のよく解らない苦しさが逃れたくて、直接話す事に。


すると見知らぬ番号から着信。

応答するとハルカでした。


「もしもし、何で番号知ってるんですか???」

『スミマセン。前に仕事の打合せで聞いた番号、登録してたんです・・・』


こんな対した事ない事実が、妙に嬉しく、

無償に心が温かくなりました。


「実はね、はっきりさせようと想って」

僕のクセで前置きなしに、いきなり用件を言ってしまう。


驚いて沈黙・・・と思いきや意外にもハルカは間髪あけずに応える。

『そうですよね・・・。ちゃんとした方がいいですよね』


逆に僕の方が沈黙してしまう。するとハルカからまたドキリとする言葉が出る。

『私の事、彼氏から奪ったろ~って思ってます???』


奪う。確かに婚約中なのだから、付き合うとなれば奪う事になる。

でもその響きが生々しくて、初めて現実に戻った気がしました。


「う、奪うか・・・。その答えは確実に出します」

「その前に、奪うというのはハルカさんと結婚するという意味ですか?」


一言一言、しっかりとゆっくりと口にする。

手には汗が広がる。


『そうですよね。そこまで考えてしまいますよね・・・』

『でも別にそこまでは今は思わなくていいと思います』

『でも、かなりの確立で奪えますから、将来はそうなるのかも』


“ かなりの確立で奪えますから ”

逆に言うと奪ってくれと言わんばかりのアピールなのか。


いつものあどけない子供のような可愛い声で、

ズバズバと確信を付く言葉を並べ、巧みに僕の心を握るハルカ。


( じゃー・・・奪っていいですか・・・ )

「 じゃー。じゃー・・・。・・・一回メシ・・・作ってもらえませんか」


思わず答えを出しそうになる気持ちを抑え、

何とか冷静になり、ハルカを判断する事にしました。


『エッ?ご飯・・・ですか?』

「はい。僕もそうやけど、ハルカさんももっと俺の事を知った方がいいと思う」


別に料理の仕方や味付けでハルカを判断したいわけではなく、

何気ない空間でお互いが何を感じ思うのか・・・純粋に知りたくなりました。


『お部屋で二人っきりですよね・・・』

「はい」

『う~ん、迷うな・・・。何かあったらどうするんですか・・・』

「何かって・・・何かですよね。一切手は出さないし、下心は本当にありません」


本当に純粋な気持ちで一緒に時間を過ごしたいと感じていました。

そして、ハルカの事を奪う勇気が欲しかったのかも知れません。


そんな決意も新たな僕の心を、

簡単にグラつかせる言葉をハルカは言い放つ。


『でも弱い女なんで、誘われた断れませんよ~』

『・・・ダメな女なんです私~』