『し、失礼しま~す…』


いつも社内の来客対応は事務スタッフに全て任せており、

僕はまず間違いなく相手にしません。


しかし、その日のその瞬間は社内の全員が電話対応中で、

手が空いているのは僕だけ。その間も来訪を告げるベルは鳴り続けています。


(ウット~しいな~…。忙しい時に誰やねん…)

そんな悪態を呟きながら渋々席を立ち、軽く睨みながら乱暴にドアを開けた瞬間。


小柄で可愛い、リスなどの小動物みたいな女の子が怯えながら立ちすくんでいます。

そう。それがこのお話の主人公、ハルカとの最初の出会いでした。


(何でココに居るねん…)

(いや、めっちゃ可愛いないか…。写真とは比べ物にならん位やで…)

(いや、声が可愛い…。舌足らずでゆっくり話す甘い声…)


そんな考えが同時に頭をめぐり、

目の前の女性がハルカだとはスグに気が付きません。


『立岡さん…、いますか…』

完全に怯えているハルカの声で我にかえる。


「ア…すいません…。お約束…ですよね」

『ハィ…。スミマセン…』


ぎこちない会話で何とか間を取り繕い、

無意識に打合せスペースへ案内し、逃げるように自席へと戻りました。


これは後でハルカから聞いた話ですが、僕はちょっと仕事に厳しく、

社内外問わずいい加減な仕事をする相手にはクレームや注意を惜しみません。


その為、ちょっとばかり有名な存在で、ハルカも僕の会社へ来る際には、

僕に気を付けろと先輩から写真付きで注意を受けていたようなんです。


だからハルカ自身もドアが開いた瞬間に僕が居たので驚き、

完全にビビッてしまったよう。思えばその時は目も合わしてくれませんでした(苦笑)。


で、謎の訪問は何だったかと言うと、僕の後輩営業マン 立岡との打合せでした。

広告内容のコンセプトやクライアントの要望など、イメージのすり合せだったよう。


1時間程で終了し、スグさま立岡を呼び出す野武士。


「お前な~…、ハルカが来んねやったら何で俺に言わへんねん」

『エッ?何でですか。何かあるんですか?』

「いや何もないけどな…。どうやってん。」

『はい。クライアントが化粧品用の素材を…』

「ちゃうわ!ハルカさんの事や!!」

『ハ~?』

「彼氏居そう?」 「エエ匂いした?」 「乳…デカかった?」(←アホ)

『そんなん解らないですよ。胸も見てないし…野武士さん見てないんですか?』

「可愛すぎて目見たら頭真っ白になってもーてよぉー!!(笑)」(←子供)


そんな会話で盛り上がり、

その日から社内報に掲載されているハルカの写真を机に飾りました。


(ハァ~…。今度はいつ会えるんやろ…)

怖がられているにも関わらず、乙女チックな妄想を日々繰り返していたある日。


やっと会えるチャンスが巡ってきました。


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