≪この間はご馳走様でした!楽しかったです☆≫

≪その後、彼女とはどうですか??≫


鉄板焼きのお店へ二人きりで行った翌日から、

今度は携帯メールでのやりとりを一日一回程度、行うようになりました。


≪こちらこそありがとうございました。その後は進展なしです≫

≪ハルカさんは婚約者の男性とはうまくいってますか?≫


どちらも必ず“?”を付ける為、メールが途切れる雰囲気がありません。

逆にどんどんお互いを理解し合う内容で、二人の仲は深まるばかり。


仕事でハルカの部署へ電話を掛ける用事がある時など、

タイミングよくハルカが受け、笑いをかみ殺しながら他人行儀な受け答えを行う。


≪う~ん、相変わらず彼氏の事が好きになれなくて困ってます≫

≪あーそうだ!今日電話してきましたね!野武士さんの声が渋すぎて笑けました☆≫


僕も最初jは婚約者に気遣い、考えの読めないハルカのメールに戸惑っていましたが、

メールがもう楽しくて楽しくて…(笑)。どんどんハルカに対する想いが膨らんでいきました。


≪エ~渋いかな…。タバコとお酒のやり過ぎでガラガラじゃないですか?≫

≪ハルカさんこそ声が可愛いですよね。最初、小鳥の鳴き声かと思いましたもん(笑)≫←(オッサン)


そのウチ、自分自身も含めて相手が婚約中である事など関係なく、

単なるヤルだけの女として口説き始めたハルカを本気で愛し始めていました。


≪ハハハ!面白~い!そんなけ褒められたら、早々と飽きられそうです~≫

≪ウチの彼氏も野武士さんみたいに面白かったらいいのに。そうだ!焼肉いつ行きます???≫


鉄板焼きに二人で行ってから約2週間が経ち、

次の焼肉へ行く約束が自然で、恐らくお互いに何の違和感もなく、ただ楽しみでした。


『野武士さん…』


僕の職場に近い、行きつけの焼肉屋へ行く事になり、

地下鉄の西中島南方で待ち合わせをした際、新聞を読んで待つ僕へハルカが声を掛けてくれました。


「ア~、どうも。」

『ドウモ…』


メールであんなに楽しく話していましたが、実際に会うとまだギコちなさが残る二人。

それも次第に消えて行きました。


「自宅から遠かったでしょ。店はスグそこなんで…」

『あ、ハイ。野武士さん私服なんですね。何か、イメージと違う…』


この日は休日という事もあり、ジーンズに黒のポロシャツで行きました。

ハルカは普段から私服ですが、この日もタイトなブルージーンズに白のお尻まである長いTシャツ。


「すんません。何か薄汚くて…。スーツ以外、あんまり何着たらいいか解らないんですよ」

『ウウン。そうぢゃなくて…。』


店に入り、適当に肉を焼き、ビールを呑み、話をしました。

でも緊張からか、この時の話の内容をほとんど覚えていません(笑)。


2時間ほど焼肉屋さんで話し込み、店を後にしました。

お互いに少しホロ酔いで、まだまだ一緒に居たい。カラオケに誘いました。


『エ~いいですよ(笑)。その代わり、上手に歌って下さいね』


実はこの野武士。歌が上手いんです(笑)。

若い時からスナックやラウンジで呑みながらステージで歌っていたので、相当鍛えられました。


ハルカの希望で尾崎豊の名曲を歌ったのですが、案の定…、

『キャ~、ウマーい!!何で歌手にならなかったんですか?!』


嬉しかった~(笑)。


その後も次々とハルカのリクエストをこなし、

黄色い声を独り占めにし続けながら唐突にハルカが一言。


『歌のうまい人って、エッチうまいって言いますよね』


(ん?ナニ?何て??)

「ん?ナニ?何て???」いきなりで、考えがそのまま口に出る。


『そう言われません?野武士さんはS?M?』


(え?もしかしてエッチしたいの??)

「え?もしかしてエッ…、どっちかな…」何とか言葉を飲み込む。


そこから何となく、恐らく僕だけでしょうが、

モンモンとした雰囲気になり、カラオケを後にしました。


やはりまだまだ帰したくなくて、それより自分の気持ちに押さえがきかなくて、

スグ側に居る、結婚が決っている女性を抱きしめたくて、自分のモノにしたくて。


でも結婚を辞めさせるなら、僕自身も遊びではなく責任を持つつもりで付き合う事になるし、

なら今プロポーズを受けてくれた自分の彼女はどうすればいいのか。


とりあえず近くの公園で酔いを覚まそうと缶コーヒーを二つ買い、並んで座る。

焼肉やカラオケの時とは比べ物にならない程、二人の座る距離は近く、肩が触れ合っています。


ウ~ン…。ウ~ン…。ウ~ン…。

無言でタバコ一本吸いながらこの気持ちのやり場を考え、迷います。


でも…。でも…。でも…。でも…。

もう一本のタバコに火を付け、吸い過ぎで少し苦く感じる煙を吸い、吐く。


フっとハルカが見つめている事に気づき、顔を向けると、

『大丈夫ですか…』と声を掛けてくれる。


きっと、その瞬間が可愛すぎたんだと思います。

街灯に照らされた顔は白く、頬だけが少し朱色のハルカに一言。


「僕は…あなたの事が好きです…」